巻

表紙 前文 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

巻３　聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)愛(がな)し　おもろ御(おん)さうし

８８

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

天(てん)の良(よ)き日(ひ)　選(えら)ばれて　　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　降(お)りられて

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　君(きみ)に　添(そ)うて　　　　　　　　　　　

神(かみ)の世(よ)を　差(さ)し上(あ)げよ

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

神(かみ)の良(よ)き日(ひ)　選(えら)ばれて

真玉(まだま)モリ　降(お)りられて

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　君(きみ)に　添(そ)うて

神(かみ)の世(よ)を　差(さ)し上(あ)げよ

愛(あい)する高(たか)き人(ひと)、

石揚(いしあげ)　ここに　あり

徒(あだ)大主(おそい)に　依(よ)り降(お)りて　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　君(きみ)に　添(そ)うて

神(かみ)の世(よ)を　差(さ)し上(あ)げよ

清(きよ)きおとこ等(ら)、

石造(いしづくり)　正(まさ)に　あり

空(から)大主(おそい)に　憑(つ)き降(お)りて　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　君(きみ)に　添(そ)うて

神(かみ)の世(よ)を　差(さ)し上(あ)げよ

年(とし)　三年(みとせ)　急(いそ)がせ、　　　　　　　　　　　　　　　　　

十声(とこえ)　間近(まぢか)さ　　　　　　　　　　　　　　　

生(い)ける君(きみ)　降(お)ろして

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　君(きみ)に　添(そ)うて

神(かみ)の世(よ)を　差(さ)し上(あ)げよ

良(よ)き日(ひ)　四年(よとせ)　願(ねが)いする、　　　　　　　　　　

御言(みこと)　真(ま)早(はや)さ　　　　　　　　　　　　　　　

憑(つ)き人(びと)神(がみ)　降(お)ろして　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　君(きみ)に　添(そ)うて

神(かみ)の世(よ)を　差(さ)し上(あ)げよ

火(ひ)の神(かみ)が　依(よ)り憑(つ)き、

按司(あんじ)大主(おそい)の　お言葉(ことば)

足(た)満国(りろ)に　願(ねが)いする　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　君(きみ)に　添(そ)うて

神(かみ)の世(よ)を　差(さ)し上(あ)げよ

８９

首里(しゅり)大君(おおきみ)が、

この良(よ)き日(ひ)　依(よ)り降(お)りて　　　　　　　　　　　　　　　　　

行(ゆ)く末(すえ)まで

真(ま)強(づよ)く　あります

鳴(と)響(よ)む国(くに)大主(おそい)が、　　　　　　　　　　　　　　　

この良(よ)き日(ひ)　憑(つ)き降(お)りて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

行(ゆ)く末(すえ)まで

按司(あんじ)大主(おそい)こそ、　　　　　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)　栄(は)えて　遊(あそ)び

行(ゆ)く末(すえ)まで

真(ま)強(づよ)く

貴(たか)き人(ひと)は、　　　　　　　　　　　　　　　　

心(こころ)　栄(は)えて　遊(あそ)び

行(ゆ)く末(すえ)まで

見物旗(みものはた)　なびかせて、　　　　　　　　　　

神(かみ)の嶽(たけ)　行(ゆ)き

行(ゆ)く末(すえ)まで

栄(は)える旗(はた)　押(お)し立(た)て、

神(かみ)のモリ　響(ひび)かせ

行(ゆ)く末(すえ)まで

大君(おおきみ)に　知(し)らせ、

太陽(てる)神(かわ)に　申(もう)され　　　　　　　　　　　　　

行(ゆ)く末(すえ)まで

真(ま)強(づよ)く　あります

９０

聞(きこ)え精(せの)君(きみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

末(すえ)　尋(たず)ね　降(お)りられて

今(いま)からは

降(お)り変(か)わり　遊(あそ)ぶ

鳴(と)響(よ)む国鳴(くにと)響(よ)み、

真(ま)末(すえ)　願(ねが)い　降(お)りられて

今(いま)からは

首里(しゅり)モリ　います、

英祖王末(えぞにやすえ)按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　　　

今(いま)からは

真玉(まだま)モリ　います、

太陽(てだ)が末(すえ)浮雲(うきぐも)　　　　　　　　　　　　　　　

今(いま)からは

年(とし)　七年(ななとせ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の嶽(たけ)　置(お)き止(と)め

今(いま)からは

良(よ)き日(ひ)　八年(やとせ)、　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　間遠(まどお)さ

今(いま)からは

太陽(てるか)神(わ)の　仰(おお)せ、　　　　　　　　　　　　　

憑(つ)き女(め)　降(お)り変(か)わり　　　　　　　　　　　　

今(いま)からは

降(お)り変(か)わり　遊(あそ)ぶ

９１

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

清(きよ)き兄弟(きょうだい)按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

吾(わ)が愛(あい)する貴(たか)き人(ひと)

君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

おとこ等(ら)のため、

群(む)れ合(あ)う人(ひと)のために

君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

珍(めずら)しき傘(かさ)　煽(あお)がせて、　　　　　　　　　　　　　　

清(きよ)らかな笠(かさ)　押(お)し立(た)て　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

弱(なよ)笠(かさ)の親(おや)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　　　　　

君(きみ)君(ぎみ)こそ

真壁(まかべ)モリ親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　

御宣人(みぜりきよ)の親(おや)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　　　　

北(にし)モリの親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　

鈴鳴(すずなり)の親(おや)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　　　　　

平良(たいら)モリ親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　

御宣人(みぜりきよ)の親(おや)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　　　　　

御世(みよ)千代(ちよ)の神女(のろ)様(さま)、　　　　　　　　　　　　　　

神女(のろ)様(さま)の袖(そで)清(きよら)　　　　　　　　　　　　　　　　　

君(きみ)君(ぎみ)こそ

京(きょう)の内(うち)モリグスク、

聖域(いべ)の祈(いの)り　なされて　　　　　　　　　　　　　　　　

石垣(いしがき)は　織(お)り上(あ)げて、

城門(じょうもん)　造(つく)られて　　　　　　　　　　　　　　

園比屋(そのひや)武(ぶ)は　金比屋(かなひや)武(ぶ)は、　　　　　　　　　　　

司祈(つかさいの)り　なされて　　　　　　　　　　　　　　

石垣(いしがき)は　積(つ)み上(あ)げて、

金門(かなもん)　立(た)て直(なお)して　　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の地(ち)より　帰(かえ)り、

京(きょう)の内(うち)に　戻(もど)り

君(きみ)君(ぎみ)こそ

太陽(てる)神(かわ)は　照(て)ります、　　　　　　　　　　　　

照(てる)日(し)神(の)は　押(お)します　　　　　　　　　　　　　

君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

９２

聞(きこ)え君(きみ)加那(がな)志(し)、　　　　　　　　　　　　　　　　　

男子(おとこ)島(しま)　依(よ)り降(お)りて　　　　　　　　　　　

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

眼(まなこ)　寄(よ)り交(か)わして　　　　　　　　　　　　

愛(いと)しくて　立(た)ちます

鳴(と)響(よ)む君加那(きみがな)志(し)、

この御島(みしま)　憑(つ)き降(お)りて　　　　　　　　　　　　　　　　　　

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　

御肝内(おぎもうち)に　守(まも)られ、　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)に　従(したが)う

肝(きも)の内(うち)に　覚(おぼ)えて、

精(せ)高子(だかこ)に　従(したが)う

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)

おとこ達(たち)　見守(みまも)り、

神(かみ)の地(ち)より　帰(かえ)り　

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)

群(む)れ合(あ)う男(おとこ)等(ら)　贖(あがな)い、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の地(ち)より　帰(かえ)り

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)

太陽(てるか)神(わ)が　照(てる)日(し)神(の)が、　　　　　　　　　　　　

照(て)ります様(よう)に

御肝(おぎも)　生(う)まれまして

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)

眼(まなこ)　寄(よ)り交(か)わして

愛(いと)しくて　立(た)ちます　

９３

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　守(まも)れ

戦(いくさ)日和(びより)　取(と)られて、　　　　　　　　　　　　　　　　

世(よ)を守(まも)る日(ひ)　取(と)られて

精軍(せいいくさ)魂(たま)　降(お)ろして、　　　　　　　　　　　　

百(ひゃく)の精(せじ)　降(お)ろして、

清(きよ)き大(おお)おとこ、

愛(あい)すべきおとこ

按司(あんじ)大主(おそい)

肝(きも)の内(うち)は　真(ま)強(づよ)く　あれ、

心(こころ)　強(つよ)く　まこと　あれ

君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ、

主(ぬし)主(ぬし)こそ　守(まも)れ

大和島(やまとしま)おとこ、

丁髷(ちょんまげ)の兵(へい)等(ら)　　　　　　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)の内(うち)は迷(まよ)わせて、

心内(こころうち)は迷(まよ)わせて

両手(もろて)　寄(よ)り倒(たお)して、　　　　　　　　　　　

二手(ふたて)　寄(よ)り倒(たお)して　　　　　　　　　　　　

沖(おき)膾(なます)　させて、　　　　　　　　　　　　　

岸(きし)膾(なます)　させて　　　　　　　　　　　　　　

大和島(やまとしま)までも、　　　　　　　　　　　　　

山城(やしろ)国(くに)までも　　　　　　　　　　　　　　　

糸(いと)　渡(わた)して　掛(か)けなさい、

縄(なわ)　渡(わた)して　掛(か)けなさい

首里(しゅり)モリ　適(かな)い　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

真玉(まだま)モリ　適(かな)い　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

おとこ　祈(いの)られて、

兵(へい)等(ら)　誇(ほこ)られて

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

太陽(てる)神(かわ)に　知(し)られて　　　　　　　　　　　

９４

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

珍(めずら)しさ　このように　あり

憑(つ)き女(め)　降(お)り栄(は)えて、　　　　　　　　　　

降(お)り女(め)　降(お)り直(なお)して、　　　　　　　　　　　

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)

吾(わ)が愛(あい)する貴(たか)き人(ひと)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

精軍(せいくさ)　発(た)ちなさいと、　　　　　　　　　

百(ひゃく)精(せじ)　発(た)ちなさいと

大君(おおきみ)は　申(もう)して、

精(せ)高子(だかこ)は　祈(いの)り

天(てん)の愛(いと)しき方(かた)に、

天(てん)の愛(あい)する御方(おかた)に

ためにと　降(お)りられ、

ためにと　降(お)りられ

眼(まなこ)　合(あ)わせて　珍(めずら)しく、

御顔(おかお)　合(あ)わせて　珍(めずら)しく　　　　　　　　　　

どのような　首里(しゅり)モリが、

どのような　真玉(まだま)モリが

君(きみ)に　愛(あい)されて、

主(ぬし)に　好(この)まれて

按司(あんじ)大主(おそい)が　掛(か)け成(な)し、

貴(たか)き人(ひと)が　持(も)て成(な)し　　　　　　　　　　　

神(かみ)の国(くに)と　思(おも)い、　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の地(ち)と　思(おも)い　　　　　　　　　　　　　

赤口(あかぐち)が　依(よ)り憑(つ)き、　　　　　　　　　　　　

火(ひ)の神(かみ)が　依(よ)り憑(つ)き

９５

おもろには重複して採録された歌が３０５首あります。重複部分は、以後すべて省略します。番号が飛ぶ場合は、重複部分です。岩波文庫の外間守善著「校訂：おもろさうし」を参考にしてください。

９６

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

大和(やまと)　頼(たよ)りとして

おとこ　嘆(なげ)かすな

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

山城(やしろ)　友(とも)となして

吾(わ)が愛(あい)する按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

精軍(せいくさ)　立(た)てられて　　　　　　　　　　　　

吾(わ)が守(まも)る　貴(たか)き人(ひと)、　　　　　　　　　　　　　　　　　

精百(せじひゃく)　立(た)てられて　　　　　　　　　　　　

いにしえから　沖縄(おきなわ)、

嶽(たけ)だとは　思(おも)わず　　　　　　　　　　　

過(す)ぎし世(よ)から　御島(みしま)、

モリだとは　思(おも)わず

寄(よ)り上(あ)げモリ　居(お)られ、

肝(きも)弱(よわ)さ　このように

金(かな)モリ　居(お)られ、　　　　　　　　　　　　

心弱(こころよわ)さ　はねて　　　　　　　　　　　　　　　　　　

兵(へい)等(ら)　引(ひ)き立(た)てて、

慌(あわ)て　ふためかせて

魔術師(まじゅつし)を　推(お)し上(あ)げて、　　　　　　　　

まじないを　させて

赤(あか)き精(せじ)　降(お)ろして、　　　　　　　　　　　　

丁髷(ちょんまげ)を　迷(まよ)わせて　　　　　　　　　　　　　

冴(さ)える精(せじ)　降(お)ろして、　　　　　　　　　

憎(にく)き敵(かたき)を　汚(けが)して　　　　　　　　　　　　　　

風(かぜ)の音(ね)も　凪(な)ぎ直(なお)して、　　　　　　　　　　　　　　　

久米(くめ)の島(しま)　押(お)し合(あ)わせて　　　　　　　　

荒(あら)の音(ね)も　直(なお)して、　　　　　　　　　　

金(かね)の島(しま)　引(ひ)き合(あ)わせて　　　　　　　　　

久米(くめ)の君(きみ)南風(はえ)に、　　　　　　　　　　　

御言(みこと)　遣(つか)わされ　　　　　　　　　　　

金(かね)の島(しま)　神(の)女神女(ろのろ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　

火(ひ)の神(かみ)は　祈(いの)り

太陽(てる)神(かわ)は　押(お)し合(あ)わせ、　　　　　　　　　　　

照(て)日(る)神(しの)は　持(も)て成(な)して　　　　　　　　　

９７

地天(ちてん)　鳴(と)響(よ)む大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　　　　

海果(にるや)国(や)精(せじ)　知(し)られる　　　　　　　　　　

精(せじ)は　遣(や)り　　　　　　　　　　　　　　

大和島(やまとしま)　治(おさ)め

大島(おおしま)　鳴(と)響(よ)む若(わか)主(ぬし)、　　　　　　　　　　

彼方(かな)国(や)精(せじ)　知(し)られる　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　います、

英祖王末(えいそおうすえ)按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　　

真玉(まだま)モリ　います、

太陽(てだ)が末按(すえあん)司(じ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　

精軍(せいくさ)　立(た)てるたび、　　　　　　　　　　

撃(う)ち遣(や)り　鳴(と)響(よ)め

百(ひゃく)精(せい)　立(た)てるたび、　　　　　　　　　　　

島踊(しまおど)り　勝(まさ)りなさい

清(きよ)きおとこ等(ら)、

塵(ちり)錆(さび)も　付(つ)けるな、　　　　　　　　　　

粉(こな)錆(さび)も　付(つ)けるな　　　　　　　　　　　

兵(へい)等(ら)　押(お)し立(た)て、

那覇(なは)口(ぐち)に　停(と)めて

魔術師(まじゅつし)を　選(えら)び上(あ)げて、　　　　　　　

荒波(あらなみ)も　裂(さ)き

気(き)有(あ)る世寄(よよせ)丸(まる)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

押(お)し浮(う)くたび　見守(みまも)れ

精(せい)有(あ)る　沖(おき)珍(めずら)丸(まる)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

刳(く)り浮(う)くたび　見守(みまも)れ　　　　　　　　　

大和(やまと)丁髷(ちょんまげ)の、　　　　　　　　　　　　　

弱(よわ)き心(こころ)のおとこ　　　　　　　　　　　　　　

山城(やしろ)丁髷(ちょんまげ)の、

弱(よわ)き肝(きも)の憎(にく)き敵(かたき)　　　　　　　　　　　　　　

精軍(せいくさ)もって　発(た)てば、　　　　　　　　　　　

干(ひ)瀬(せ)と　合(あ)わせて　追(お)いやれ　　　　　　　　

御船(みふね)もって　発(た)てば、　　　　　　　　　　

深海(ふかうみ)に　追(お)いやれ　　　　　　　　　　　

肝(きも)が内(うち)に　思(おも)わば、

肝(きも)垂(だ)れに　させよ　　　　　　　　　　　

心(こころ)が内(うち)に　思(おも)えば、

大地(だいち)に　落(お)として　捨(す)てよ

天(てん)が下(した)　国(くに)ごと、　　　　　　　　　　　　　

大主(おおぬし)は　世(よ)を治(おさ)めます

９８

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

大国(おおくに)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　　　　　　

太陽(てるか)神(わ)は　守(まも)る　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

世寄(よよせ)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　　　　

（四行混入）省略

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)、

大国(おおくに)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ

愛(あい)する貴(たか)き人(ひと)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

世寄(よよせ)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ

天(てん)までも　鳴(と)響(よ)み、

大国(おおくに)丸(まる)　寄(よ)せて

９９

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

降(お)り直(なお)して　慈(いつく)しむ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

父(ちち)なる方按司(かたあんじ)大主(おそい)、

吾(わ)が愛(あい)する貴(たか)き人(ひと)

首里(しゅり)神女(のろ)親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　

弱(なよ)笠(かさ)の親(おや)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　　　　　

金(かね)のモリ親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　

御宣人(みぜりきよ)の親(おや)神女(のろ)

北(にし)モリの親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　

十百(ともも)末(すえ)の親(おや)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　　　　

むらむらの　神(の)女神女(ろのろ)、　　　　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)　揃(そろ)え　祈(いの)り

明(あ)ける年(とし)　向(む)けば、

うるわしさを　掛(か)け添(そ)え

向(む)かう良(よ)き日(ひ)　押(お)し開(あ)けて、　　　　　　　　　　　　　　

思(おも)う様(よう)に　添(そ)えて

この良(よ)き日(ひ)　依(よ)り降(お)りて、

いつよりも　いとしく

この良(よ)き日(ひ)　憑(つ)き降(お)りて、

いつよりも　新(あたら)しく

いにしえ　初(はじ)めて、

御肝内(おぎもうち)は　生(う)まれて

過(す)ぎし日(ひ)　申(もう)して、

肝(きも)の根(ね)が　勝(すぐ)れて

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)は、

御島(みしま)世(よ)は　守(まも)る　　　　　　　　　　　　

１００

海果国(にるや)鳴(と)響(よ)む大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　

御国鳴(みくにと)響(よ)む若(わか)主(ぬし)

按司(あんじ)大主(おそい)こそ

精(せじ)　勝(まさ)り　下(くだ)さい　　　　　　　　　　

赤(あか)き嶽(たけ)　鳴(と)響(よ)む、

真(ま)の君(きみ)　清(きよ)き大主(おおぬし)　　　　　　　　　　　

雲子(くもこ)嶽(だけ)　鳴(と)響(よ)む、　　　　　　　　　　　

島(しま)初(はじ)め大主(おおぬし)

天(あま)仁子(にこ)はうらやみ、　　　　　　　　　　

先仁子(けさにこ)はよろこび　　　　　　　　　　　

太陽(てる)神(かわ)と行(い)き合(あ)い、　　　　　　　　　　

御言(みこと)　合(あ)わせまして　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　うち歩(あゆ)み、

真玉(まだま)モリ　うち歩(あゆ)み

英祖末按司(えぞにやすえあんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　

精(せ)高末(だかすえ)王様(おうさま)　　　　　　　　　　　　　　　

雲子(くもこ)嶽(だけ)　織(お)り上(あ)げて、　　　　　　　　　

煽端(あおりやはな)嶽(だけ)　積(つ)み上(あ)げて　　　　　　　　　　

綾子(あやこ)浜(はま)　現(あらわ)れ、　　　　　　　　　　　　　

雪(ゆき)の嶽(たけ)　現(あらわ)れ

御肝内(おぎもうち)の　生(う)まれて、

心内(こころうち)の　勝(すぐ)れて

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　行(い)き合(あ)い、

眼(まなこ)　合(あ)わせて　喜(よろこ)び

海果(にる)国(や)精(せじ)　有(あ)る限(かぎ)り、　　　　　　　　　

君(きみ)が精(せじ)　有(あ)る限(かぎ)り

天(てん)が下(した)　守(まも)り、　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　栄(さか)えて

１０１

聞(きこ)え按司(あんじ)大主(おそい)が、　　　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)は　祈(いの)り　　　　　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　造(つく)り

神(かみ)の国(くに)の　世(よ)を持(も)つ鍵(かぎ)　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

鳴(と)響(よ)む王様(おうさま)が、

精(せ)高子(だかこ)は　祈(いの)り

聖域(いべ)の祈(いの)り　なされて、　　　　　　　　　　　　　

国中(くになか)のモリに　　　　　　　　　　　　　　　　

世(よ)の後(うし)ろ盾(だて)　

煽(あおりや)嶽(だけ)　織(お)り上(あ)げて　　　　　　　　　　　　　　　

司祈(つかさいの)り　なされて、　　　　　　　　　　　　

揚(あ)がる嶽(だけ)　見上(みあ)げる嶽(たけ)

世津(よつ)嶽(だけ)　積(つ)み上(あ)げて　　　　　　　　　　　　

精(せじ)継(つ)ぎが、　　　　　　　　　　　　　　　　

清(きよ)き城門(じょうもん)　造(つく)り　　　　　　　　　　　　　　　　

君(きみ)が鍵(かぎ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

世(よ)を守(まも)る鍵(かぎ)　鎖(さ)されて　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)は、

今(いま)からは

天(てん)が下(した)　　　　　　　　　　　　　　　　　　

糸(いと)を　掛(か)けて　下(くだ)さい

１０２

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

過(す)ぎし世(よ)の　神(かみ)の魂(たま)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の魂(たま)は　　　　　　　　　　　　　　　　　　

祈(いの)りこそ　世(よ)を守(まも)る

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

１０３

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

大平(おおひら)の戦(いくさ)　　　　　　　　　　　　　　　　　

京(きょう)　見上(みあ)げさせ

百人(ももひと)　斬(き)り伏(ふ)せて

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

１０４

大君(おおきみ)　鳴(と)響(よ)む国(くに)守(もり)は、　　　　　　　　　　　　　　　　

袖(そで)　垂(た)れて　寄(よ)り添(そ)い

島(しま)の主(ぬし)　世(よ)の主(ぬし)　成(な)りなさい

首里(しゅり)モリ　吾(わ)が愛(あい)する貴(たか)き人(ひと)、

中北(なかにし)の鳴(と)響(よ)む年寄(としより)、　　　　　　　　　　　　　

袖(そで)　垂(た)れて

島中(しまなか)の村々(むらむら)の年寄(としより)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

１０５

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　

愛(あい)し育(はぐく)む　隼(はやぶさ)丸(まる)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)ませて　降(お)ろさせて

国(くに)守(もり)が、

愛(あい)して

与那覇(よなは)浜(はま)　寄(よ)り上(あ)げ浜(はま)　降(お)ろさせて、　　　　　　　　

生(う)まれ出(で)る　巣立(すだ)ちゆく　船場(ふなば)より、　　

１０７

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

天(あま)御人(みきよ)の良(よ)き日(ひ)　取(と)られて　　　　　　　　　　

父(ちち)なる方(かた)は

国(くに)　鳴(と)響(よ)み　下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

去(し)行人(ねりや)の良(よ)き日(ひ)　取(と)られて　　　　　　　　　　

憑(つ)き女(め)　五人(ごにん)に、　　　　　　　　　　　　　　　

願(ねが)われて　依(よ)り降(お)りて

降(お)り女(め)　七人(ななにん)に、　　　　　　　　　　　　　　　

考(かんが)えられて　憑(つ)き降(お)りて

（三行混入）

按司(あんじ)大主(おそい)