巻

表紙 前文 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

巻１６　勝連(かつれん)、具志川(ぐしかわ)、おもろの御(おん)さうし

１１２８

おもろ詠(うた)う人(ひと)よ、　　　　　　　　　　　　　

精(せじ)の口(くち)の正(ただ)しさ

勝連(かつれん)　選(え)らび遣(や)り　ください　　　　　

祝詞(せるむ)謡(うた)う人(ひと)よ、　　　　　　　　　　　　

聞(きこ)え阿(あ)麻和(まわ)利(り)は、　　　　　　　　　　　　

国(くに)の弟(おとうと)　成(な)されて　　　　　　　　　　　

１１２９

勝連(かつれん)の阿(あ)麻和(まわ)利(り)、　　　　　　　　　　

十百(とひゃく)歳(さい)　います　　　　　　　　　　

肝(きも)高(たか)き阿(あ)麻和(まわ)利(り)、

勝連(かつれん)と　かない、　　　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)高(だか)と　かない、　　　　　　　　　　　　　　　

１１３０

聞(きこ)え植(おわ)守(もり)が、　　　　　　　　　　　　

降(お)りて　遊(あそ)びなされば

上下(かみしも)の　喜(よろこ)び合(あ)う　見物(みもの)

鳴(と)響(よ)む植(おわ)守(もり)が、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

１１３１

精高(せだか)植(おわ)守(もり)が、　　　　　　　　　

降(お)りて　群(む)れ舞(ま)えば

島(しま)　通(かよ)い　来(く)る様(よう)に

君(きみ)の植(おわ)守(もり)が、

真物寄(まものよせ)　来(き)まして、　　　　　　

伊計(いけい)島(じま)　来(き)まして　　　　　　

城郭(しろくるわ)　来(き)まして、　　　　　　　

浜(はま)比嘉(ひが)　平安座(へんざ)　見遣(みや)れば　　　

１１３２

揚(あ)がる望月(もちづき)が、　　　　　　　　　　　　

君(きみ)の望月(もちづき)が

清(きよ)き家(いえ)の玉(たま)の御(み)内(うち)　見(み)たる　　　　　　　　　　

高江(たかえ)洲(す)のおとこ、　　　　　　　　　　　

迎(むか)えたる　誇(ほこ)らしさ

吾(わ)が成(な)せる方(かた)の子(こ)が、

１１３３

勝連(かつれん)は　太陽(てだ)　向(む)かい、　　　　　　　

門(もん)　開(あ)けて　　　　　　　　　　　　　

真玉(まだま)　金(こがね)　寄(よ)り合(あ)う

玉(たま)の御内(みうち)　　　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)高(だか)の　月(つき)　向(む)かい、

勝連(かつれん)は、

昔(むかし)も　今(いま)も

按司(あんじ)　選(えら)ぶ

１１３４

勝連(かつれん)の阿(あ)麻和(まわ)利(り)、　　　　　　　　　　

玉(たま)御酌(みしゃく)　有(あ)ります　　　　　　　　　　　

京(きょう)　鎌倉(かまくら)

これこそ　言(い)いて　鳴(と)響(よ)め

肝(きも)高(だか)の阿(あ)麻和(まわ)利(り)、

島(しま)統(す)べる生(う)まれの按司(あんじ)、　　　　　　　　

国(くに)統(す)べる生(う)まれの按司(あんじ)、　　　　　　　　

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)こそ、

玉(たま)御酌(みしゃく)　有(あ)ります

１１３５

勝連(かつれん)の貴(たか)き人(ひと)、　　　　　　　　　　　

真物寄(まものよせ)　見遣(みや)りて　　　　　　　　　　

肝(きも)高(だか)の貴(たか)き人(ひと)、

手持(ても)ち玉(だま)　佩(は)きまして、　　　　　　　　

１１３６

勝(すぐ)れ人(びと)こそ　寄(よ)ります、　　　　　　　

見(み)る眼(め)の　愛(いと)しさよ

真(ま)民(たみ)は　寄(よ)ります

勝連(かつれん)の按司(あんじ)、　　　　　　　　　　　　

１１３７

望月(もちづき)が、　　　　　　　　　　　

神女(かみ)様(さま)が　降(お)り立(た)ち　　　　　　

島(しま)の浦(うら)に　鳴(と)響(よ)ませよ

勝連(かつれん)の貴(たか)き人(ひと)、

知(し)られて

肝(きも)高(だか)の貴(たか)き人(ひと)、

浜川(はまがわ)の、　　　　　　　　　　　

波打(なみう)ち口(ぐち)　降(お)りられて

１１３８

清(きよ)き根茎(ねくき)様(さま)、　　　　　　　　　　　　　

良(よ)き根茎(ねくき)様(さま)　　　　　　　　　　　　　　

「エケ」　人(ひと)　添(そ)いて　見(み)なさい

馬(うま)愛(がな)し　召(め)しまして、　　　　　　　　　

赤(あか)き傘(かさ)　差(さ)しまして、

１１３９

望月(もちづき)は、

昔(むかし)からの　主君(ぬしぎみ)

遊(あそ)び遊(あそ)べ　妻女(やちよこ)等(ら)　　　　　　　　　　　　　

望月(もちづき)は、

望月(もちづき)は

浜川(はまがわ)に　降(お)りられて

望月(もちづき)が、

波打(なみう)ち口(ぐち)　降(お)りられて

望月(もちづき)、

夜(よ)夜(よ)は　嵐(あらし)にも　祈(いの)りする

夜(よ)なべ　して、

火(ひ)の神(かみ)に　見(み)られるな

１１４０

勝連(かつれん)の鳴(と)響(よ)み按(あん)司(じ)、　　　　　　　　　

百(もも)浦(うら)の鳴(と)響(よ)み按(あん)司(じ)

肝(きも)高(だか)の鳴(と)響(よ)み按(あん)司(じ)、

勝連(かつれん)の板(いた)口(ぐち)、　　　　　　　　　　　　

肝(きも)高(だか)の金口(かなぐち)、　　　　　　　　　　　

上(かみ)からは　照(て)る真(ま)浜(はま)、

下(しも)からは　浜川(はまがわ)に、

１１４１

勝連(かつれん)の阿(あ)麻和(まわ)利(り)、

聞(きこ)え阿(あ)麻和(まわ)利(り)

大国(おおくに)の鳴(と)響(よ)み

肝(きも)高(だか)の阿(あ)麻和(まわ)利(り)、

１１４２

精高(せだか)植(おわ)守(もり)、　　　　　　　　

君(きみ)の植(おわ)守(もり)は

精高按司(せだかあんじ)大主(おそい)

親(おや)と　撓(しな)います

勝連(かつれん)を　造(つく)り、

清(きよ)き愛(かな)君(しけ)が　　　　　　　　　　

肝(きも)高(たか)を　造(つく)り、

１１４３

妹(いもうと)君(ぎみ)　君(きみ)勝(まさり)、　　　　　　　

按司(あんじ)の頭(かしら)

弟(おと)君(ぎみ)より　勝(まさ)り　　　　　

妹(いも)君(ぎみ)　君撓(きみしない)、　　　　　　　

１１４４

勝連(かつれん)は　何(なに)に　譬(たと)える、

大和(やまと)の　鎌倉(かまくら)に　譬(たと)える

肝(きも)高(だか)は　何(なに)に、

１１４５

勝連(かつれん)為(し)良(よさ)子(く)愛(かな)し様(さま)、　　　　　

姉妹(しまい)　兄弟(きょうだい)　来(き)まして　　　　

愛(かな)しさ　　　　　　　　　　　

肝(きも)高(だか)の為(し)良(よさ)、　　　　　　　　　　　

１１４６

東(ひがし)の大主(おおぬし)が　前(まえ)から、　　　　　

金(こがね)　持(も)ちまして　　　　　　　　　

肝(きも)　揃(そろ)え　祝(いわ)い事(ごと)　差(さ)し上(あ)げよ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

１１４７

勝連(かつれん)は　如何(いか)なる勝連(かつれん)が、

島(しま)の浦(うら)に　鳴(と)響(よ)ませよ

肝(きも)高(たか)は　如何(いか)なる肝(きも)高(だか)が、

１１４８

平安(へん)座(ざ)金(かな)モリに、　　　　　　　　

意地(いじ)気(き)神(がみ)　知(し)られる

設(しつらい)こそ　　　　　　　　　　　　　

事(こと)直(なお)す神(かみ)です　

根立(ねだ)て金(かな)モリに、

１１４９

丈(たけ)清(きよ)らかな親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　

東(ひがし)に　通(かよ)い

世(よ)の貢(みつぎ)

尚(おぎ)真(やか)王(もい)に　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　

清(けさ)殿(どの)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　　

１１５０

伊計(いけい)グスク親(おや)神女(のろ)、　　　　　　

綾子(あやこ)橋(ばし)　架(か)けまして　　　　　　　

島(しま)　治(おさ)めて

尚(おぎ)真(やか)王(もい)に　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　

真顔(まちら)主(す)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　

１１５１

聞(きこ)え宮城(みやぐすく)、　　　　　　　　　　　　

選(えら)び出(だ)す真金(まかね)　　　　　　　　　　　　

島(しま)舞(ま)いは　勝(まさ)り

鳴(と)響(よ)む宮城(みやぐすく)、

１１５２

宮城(みやぐすく)モリに、　　　　　　　　　　

まこと　見物(みもの)　降(お)りたる

神(かみ)遊(あそ)びが

強(つよ)き踊(おど)り　しまして

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

１１５３

聞(きこ)え宮城(みやぐすく)、　　　　　　　　　　　　　

設(しつらい)の神女(のろ)の　　　　　　　　　　　

強(つよ)き踊(おど)り　しますれば

兵士(へいし)等(ら)　しまして　誇(ほこ)り

鳴(と)響(よ)む宮城(みやぐすく)、

１１５４

平安(へん)座(ざ)濯(ゆす)ぎ川(がわ)、　　　　　　　　　

手持(ても)ち玉(だま)　濯(すす)ぎ出(だ)して

国(くに)手持(ても)ち玉(だま)

尚(おぎ)真(やか)王(もい)に　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　

１１５５

具志川(ぐしかわ)の門口(かどぐち)、　　　　　　　　　

荒(あら)南風(はえ)こそ　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)み　聞(き)き遣(や)ります

親(おや)国(ぐに)の門口(かどぐち)、

吾(わ)が弟(おとうと)　住(す)むかも、　　　　　　　

良(よし)樽(だる)こそ　住(す)むかも、　　　　　　　

１１５６

精(せじ)有る国清(くにきよら)が、　　　　　　　　

具志川(ぐしかわ)に　歩(あゆ)み　　　　　　

濡(ぬ)らしまして

清(きよ)き国清(くにきよら)が、

１１５７

太郎(たら)様(さま)は、　　　　　　　　　　

嬉(うれ)しさは

喜(よろこ)びましょう　誇(ほこ)りましょう　　　　

吾(わ)が鼓(つづみ)、　

大黒(おおくろ)鷲(わし)　　　　　　　　　　　　

誰(だれ)が　取(と)りましょう、

誰(だれ)が　取(と)りましょう

百度踏揚(ももとふみあがり)が　遊(あそ)び　　　　　　　

１１５８

聞(きこ)え荒(あら)南風(はえ)は、　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む荒(あら)南風(はえ)は　　　　　　　　　　　

余(あま)る命(いのち)

敷(しち)焼人(やちや)　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　

月(つき)こそ　余(あま)りなさい、

月(つき)こそ　余(あま)りなさい

１１６０

江(え)洲(す)のモリグスク、　　　　　　　

高倉(たかくら)が寄(よ)り立(た)ち

上下(かみしも)　見物(みもの)する　寄(よ)り立(た)ち　　　

江(え)洲頂(すいただき)きグスク、　　　　　　　　

貴(あて)なる潟(かた)原(ばる)、　　　　　　　　　

１１６１

江(え)洲(す)のモリグスク、　　　　　　　

江(え)洲(す)の頂(いただ)きグスク　　　　　　　　　　　

江(え)洲(す)は　果報(かほう)国(ぐに)

江(え)洲(す)神女(のろ)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に

御酒(みき)モリに　参(まい)り　　　　　　　　　

１１６２

江(え)洲(す)神女(のろ)の、　　　　　　　　　　

宣人(せりきよ)金(かな)神女(のろ)の　　　　　　　　　　

足(あし)　鈍(にぶ)さ　畏(おそ)れて

首里(しゅり)モリ　金(こがね)　積(つ)み　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　

今日の良き日に、

宣人(せりきよ)金(かね)神女(のろ)　　　　　　　　　

１１６３

江(え)洲(す)の平(たい)ら村(むら)、

江(え)洲(す)の親(おや)国(ぐに)

肝(きも)高(だか)モリ

弟(おとうと)　見(み)たる

これこそ　勝連(かつれん)、

これこそ　肝(きも)高(だか)、

１１６４

天(てん)願(がん)神女(のろ)の、　　　　　　　　　

国(くに)手持(ても)ち御内(みうち)に

勝連(かつれん)こそ　国(くに)手持(ても)ちグスク

笑人(わらいきよ)神女(のろ)の、　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)が　為(ため)に、

勝連(かつれん)に　降(お)りて

１１６５

天(てん)願(がん)の太郎子(たうし)、　　　　　　　　

太郎子(たらし)　きらめかせて　　　　　

見(み)つめる按司(あんじ)　　　　　　　　　　　　　

あくまで　喜(よろこ)び　　　　　　　　　　　　

天(てん)願(がん)の庭(みや)に、

東(ひがし)の庭(みや)に

若按司(わかあんじ)を　使(つか)い、　　　　　　　

世(よ)の主(ぬし)を　使(つか)い

１１６６

具志川(ぐしかわ)の、

我(わ)が親(おや)国(ぐに)　清(きよ)らさ

この生(い)ける鷲(わし)は

真顔(まちら)主(す)の神女(のろ)様(さま)、　　　　　　　

金(こがね)御殿(ごてん)　　　　　　　　　　　　

銀(しろがね)御殿(ごてん)　清(きよ)らか　　　　　　　　　　　

１１６８

安慶名(あげな)のモリに、　　　　　　　　

島(しま)鎮(しず)める鼓(つづみ)

島(しま)鎮(しず)める按(あん)司(じ)大主(おそい)　差(さ)し上(あ)げよ

安慶名(あげな)のモリに、

国(くに)鎮(しず)める鼓(つづみ)

１１７１

精(せい)有(あ)る国清(くにきよら)が、　　　　　　　　　　　　　

成(な)せる清(きよ)き神(かみ)　掛(か)けて

成(な)せる人(ひと)　鳴(と)響(よ)ませ

貴(たか)き国清(くにきよら)が、

吾(わ)が父(ちち)の　為(ため)に、

群(む)れ合(あ)う子(こ)の　為(ため)に、

１１７３

具志川(ぐしかわ)の親御(おやみ)船(ふね)、

浮(う)かべよう　棚(たな)　鳴(と)響(よ)み

浮(う)かべれば

大国鳴(おおくにと)響(よ)み御船(みふね)

親(おや)国(ぐに)の御船(みふね)、

１１７４

天(てん)願(がん)の神女(のろ)の、　　　　　　　　　　　　

太郎子(たらし)　綺羅(きら)めかしさ　見(み)て　　　　　

良(よ)き降(お)りに

東(ひがし)の庭(みや)に、

太郎子(たらし)　綺羅(きら)めかしさ