巻

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巻１　首里(しゅり)王府(おうふ)の御(おん)さうし

１　　

一　聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が　　　　　　　　　　　　　　　

降(お)りて　遊(あそ)ばれると

天(てん)の下(した)

平(たい)らげて　下(くだ)さい

又　鳴(と)響(よ)む精(せ)高(だか)子(こ)が　　　　　　　　　　　　　

又　首里(しゅり)モリグスク　　　　　　　　　　　　　　

又　真玉(まだま)モリグスク　　　　　　　　　　　　　

おもろさうしは必ず一という記号で始まり、何行か後に又という記号が現れます。おもろは繰り返しと決まり文句の多い歌です。おもろの筆記者は繰り返しの部分を省略して書く工夫をしました。それが又記号（またきごう）です。一と又記号の間の行を又記号のある行の次に繰り返し朗唱します。冒頭の歌は以下のように朗唱します。

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が

降(お)りて　遊(あそ)ばれると

天(てん)の下(した)

平(たい)らげて　下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

降(お)りて　遊(あそ)ばれると

天(てん)の下(した)

平(たい)らげて　下(くだ)さい

首里(しゅり)モリグスク

降(お)りて　遊(あそ)ばれると

天(てん)の下(した)

平(たい)らげて　下(くだ)さい

真玉(まだま)モリグスク

降(お)りて　遊ばれると

天(てん)の下(した)　

平(たい)らげて　下さい

本書は、一記号と又記号のかわりに「、」を使用することにしました。頭の方に記号があるとわずらわしさがありますので、一記号、又記号の行の最後に「、」を打つことにしました。

したがって、以後すべての一記号、又記号を省略いたします。

２

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

降(お)りて　遊(あそ)ばれると

神(かみ)太陽(てだ)の　　　　　　　　　　　　　　　　　

守(まも)られる按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

３

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　

世(よ)を守(まも)る精(せじ)　差(さ)し上(あ)げれば　　　　　　　　　　　　　　　　

千万(せんまん)　世(よ)に　添(そ)えて　下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

聞(きこ)え按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

大君(おおきみ)こそ　守(まも)ります、　　　　　　　　　　　　

４

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　

天(てん)の祈(いの)り　なされば

太陽(てる)神(かわ)も　誇(ほこ)り　　　　　　　　　　　　　　　

尚(おぎ)真(やか)王(もい)に　　　　　　　　　　　　　　　　　

笠利(かさり)　討(う)って　下(くだ)さい　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む　精(せ)高子(だかこ)が、

５

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　

赤(あか)の鎧(よろい)　召(め)されて　　　　　　　　　　　　

刀(かたな)佩(は)いて　　　　　　　　　　　　　　　　　　

大国(おおくに)　鳴(と)響(よ)み下(くだ)さい　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

時(とき)知(し)りを　従(したが)え、

物知(ものし)りを　従(したが)え、

６

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

神(かみ)の日(ひ)を　取(と)られて

按司(あんじ)大主(おそい)は　　　　　　　　　　　　　　　

末永(すえなが)く　居(い)て下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

太陽(てるか)神(わ)と　行(い)き合(あ)い、　　　　　　　　　　

照(てる)日(し)神(の)と　行(い)き合(あ)い、　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリグスク、

降(お)りて　降(お)り栄(さか)え下(くだ)さい

真玉(まだま)モリグスク、

（２行混入）省略

首里(しゅり)モリグスク、

世(よ)に高(たか)い按(あん)司(じ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

真玉(まだま)モリグスク、

世(よ)を守(まも)る按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

聞(きこ)え按司(あんじ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の座(ざ)まで　鳴(と)響(よ)み　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

神(かみ)の国(くに)まで　鳴(と)響(よ)み　　　　　　　　　　　　　

７

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、

十(と)嶽(たけ)　勝(まさ)られて　　　　　　　　　　　　　　

見(み)ても飽(あ)きない首里(しゅり)親(おや)国(ぐに)　　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

８

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、

強(つよ)い精(せじ)　差(さ)し上(あ)げれば　　　　　　　　　　　　　　

島(しま)　丸(まる)く

御声(みこえ)差(さ)し上(あ)げ　守(まも)れ　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、　

９

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　　

降(お)りて　降(お)り栄(さか)え下(くだ)さり

世(よ)は　揃(そろ)えて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

尚(おぎ)真(やか)王(もい)に　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

１０

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　

戦(いくさ)精(せじ)　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　　　　　　　

１１

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、

十百(ともも)　数(かず)かぞえ　下(くだ)さい　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

１２

聞(きこ)え当山(とうやま)に、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)の　気(き)を　差(さ)し上(あ)げよ

鳴(と)響(よ)む当山(とうやま)に、

知(せる)真志(まし)の　冠(かんむり)に、　　　　　　　　　　　　　　　

島尻(しまじり)の　藺(い)草(ぐさ)に、　　　　　　　　　　　　　　　

１３

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

守(まも)ります貴(たか)い人(ひと)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

幸(さち)寄(よ)る見上(みあ)げるモリ　居(い)て下(くだ)さい　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリ　います、

真玉(まだま)モリ　います、

１４

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、

祈(いの)り下(くだ)されば　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

万万(まんまん)　限(かぎ)りなく　居(い)て下(くだ)さい　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

１５

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、

精(せじ)高(たか)く　打(う)ち揚(あ)がり　下(くだ)さい　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

１６

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、

首里(しゅり)モリ　降(お)りられて

尚(おぎ)真(やか)王(もい)は　　　　　　　　　　　　　　　　　　

君(きみ)こそ　守(まも)り下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

真玉(まだま)モリ　降(お)りられて

憑(つ)き女(め)　照(てる)雲(くも)に、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

降(お)り直(なお)してからは

憑(つ)き女(め)　照(てる)妃(きしやけ)、　　　　　　　　　　　　　　　　

降(お)り栄(は)えてからは

太陽(てるか)神(わ)と　十声(とこえ)　遣(や)り交(か)わして、　　　　　　　　　

照(てる)日(し)神(の)と　言葉(ことば)　遣(や)り交(か)わして、　　　　　　　　

太陽(てる)神(かわ)も　誇(ほこ)り、　　　　　　　　　　　　　　　

１７

聞(き)得(こえ)大君(おおきみ)が、

精(せじ)鳴(と)響(よ)む精(せ)軍(いくさ)　　　　　　　　　　　　　　　　　

島(しま)討(う)ちの　鳴(と)響(よ)み

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

精(せじ)鳴(と)響(よ)む精(せ)軍(いくさ)　

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)が、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

精鳴(せじと)響(よ)む戦(いくさ)

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)が、

精鳴(せじと)響(よ)む軍(いくさ)

兵(へい)の船(ふね)　通(かよ)う限(かぎ)り、　　　　　　　　　　　　　　　

精(せじ)　遣(や)り遣(や)り　添(そ)うて

御船(みふね)　通(かよ)う限(かぎ)り、　　　　　　　　　　　　　　　

精(せじ)　遣(や)り遣(や)り　添(そ)うて

精軍(せいくさ)　押(お)し発(た)てば、　　　　　　　　　　　　　　

気(き)を　遣(や)り遣(や)り　守(まも)れ

精百(せひゃく)　押(お)し発(た)てば、　　　　　　　　　　　　　　

気(き)を　遣(や)り遣(や)り　守(まも)れ

聖(せい)なる木(き)　打(う)ち杭(くい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

気(き)を張(は)り　廻(まわ)らせよ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

１８

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

首里(しゅり)モリ　降(お)りられて

百歳(ひゃくさい)まで

尚(おぎ)真(やか)王(もい)こそ　居(い)て下(くだ)さい　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

真玉(まだま)モリ　降(お)りられて

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　　　　　　

１９

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

今日(きょう)　降(ふ)らす　雨(あめ)は

京(きょう)の　内庭(うちみや)に　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

金(こがね)　降(ふ)り満(み)たして　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

２０

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

聖(せい)なる場(ば)　美(うつく)しく　遊(あそ)ばされ　　　　　　　　　　　

清(きよ)き花(はな)の

うらうらと

鳴(と)響(よ)み　見物(みもの)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む　精(せ)高子(だかこ)が、

２１

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

島討(しまうち)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の地(ち)　天降(ており)丸(まる)は　このように　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

２２

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

愛(いと)しき按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　

うらうらと

同(おな)じ座敷(ざしき)　居(い)て下(くだ)さい　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

２３

大君(おおきみ)が、

祈(いの)る場(ば)に　変(か)わられて

君(きみ)は　従(したが)い　踊(おど)れ　　　　　　　　　　　　　　　　

精(せ)高子(だかこ)が、

真玉(まだま)場(ば)に　変(か)わられて　　　　　　　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

２４

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

降(お)りて　降(お)り変(か)わられて

按司(あんじ)大主(おそい)に　　　　　　　　　　　　　　　

世(よ)の幸(さち)　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

２５

聞得大君が、

初め軍(いくさ)　立たたれて　　　　　　　　　　　　　　

戦い　行き合い

敵(かたき)　治められて　　　　　　　　　　　　　

鳴響む精高子が、

２６

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

世(よ)を守(まも)る精(せじ)　降(お)ろして　　　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　　　　　　　　　　　　　　　　　

末(すえ)　勝(まさ)り　下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

２７

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

喜(よろこ)ばれてからは

父(ちち)なる方(かた)に

島(しま)の命(いのち)　差(さ)し上(あ)げよ

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

２８

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

幸(さち)あるモリに

島(しま)の世(よ)　添(そ)えられて

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

佐(さ)敷金(しきかな)モリに、　　　　　　　　　　　　　　　

世(よ)の幸(さち)

聞(きこ)え吾(わ)が幸(さち)ある人(ひと)に、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

２９

与那覇(よなは)浜(はま)　聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)、　　　　　　　　　　　

八千代(やちよ)　掛(か)けて　鳴(と)響(よ)み下(くだ)さい

上(あ)がり口(ぐち)　鳴(と)響(よ)む大君(おおきみ)、

八千代(やちよ)

馬天(ばてん)浜(はま)　聞(きこ)え照(てる)君(きみ)、　　　　　　　　　　　　

八千代(やちよ)

赤(あか)き傘(かさ)　百度踏揚(ももとふみあがり)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

八千代(やちよ)

３０

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

雨(あめ)漏(も)らぬモリに

末広(すえひろ)がりこそ

世(よ)は　在(あ)って下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

佐(さ)敷(しき)金(かな)モリは、　　　　　　　　　　　　　　　　　

３１

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、　

太陽(てるか)神(わ)を　祈(いの)り立(た)て　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　　　　　　　　　　　　　　　

天(てん)の下(した)　守(まも)り　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

照(てる)日(し)神(の)を　祈(いの)り　　　　　　　　　　　　　

兄弟(きょうだい)の按(あん)司(じ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　

肝内(きもうち)は　嘆(なげ)くな　　　　　　　　　　　　　

兄弟(きょうだい)の貴(たか)き人(ひと)

心内(こころうち)は　嘆(なげ)くな

精軍(せじいくさ)　押(お)し出(だ)せば、　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)こそ　守(まも)れ

精百(せじひゃく)　押(お)し出(だ)せば、　　　　　　　　　　　

精(せ)高子(だかこ)こそ　守(まも)れ

国(くに)守(まも)るつわもの、

天上(おぼつ)の庭(みや)　世(よ)　揃(そろ)えて　　　　　　　　　　　　

浦寄斑(うらよせまだら)丸(まる)、　　　　　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)の庭(みや)　世(よ)　添(そ)え

国(くに)守(まも)る　兵(へい)達(たち)、

島(しま)を　平(たい)らげて

浦(うら)治斑(おさめまだら)丸(まる)、　　　　　　　　　　　　　　　

国(くに)　広(ひろ)く　添(そ)えて

火(ひ)の神(かみ)が　依(よ)り憑(つ)き、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

精軍(せいくさ)を　はねて　　　　　　　　　　　　　

３２

聞(きこ)え君(きみ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

降(お)りて　遊(あそ)ばされると

天(てん)より下(した)の

精(せじ)の幸(さち)を　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　　　　　

精(せ)高(だか)君(きみ)大主(おそい)が、　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリグスク、

真玉(まだま)モリグスク、

３３

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

大国(おおくに)は　世(よ)を　添(そ)えて

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　鳴(と)響(よ)め　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

勝(すぐ)れた兄弟按(きょうだいあん)司(じ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　

勝(すぐ)れた兄弟(きょうだい)貴(たか)き人(ひと)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

精軍(せいくさ)は勝(まさ)り、　　　　　　　　　　　　　　　

精(せ)百(ひゃく)は勝(まさ)り、　　　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　男(おとこ)たち、

御島(みしま)の　男(おとこ)たち、　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)　強(つよ)く　あって　下(くだ)さい、　　　　　　　　　　

心(こころ)　強(つよ)く　あって　下(くだ)さい、　　　　　　　　　　

気(き)　有(あ)る　精遣(せいやり)丸(まる)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

気(き)　有(あ)る　天降(ており)丸(まる)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

八重山(やえやま)島(じま)おとこ、　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)を迷(まよ)わせて

果(は)ての島(しま)おとこ、　　　　　　　　　　　　　　　

心を迷わせて　　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ兵(へい)は、

土(つち)斬(ぎ)りに　斬(き)らせ

真玉(まだま)モリつわもの、

土(つち)斬(ぎ)りに　斬(き)らせ

浦浦(うらうら)の　神(かみ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

相手(あいて)となり　守(まも)れ　

３４

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

斎場(せーふぁ)嶽(だけ)　降(お)りられて　　　　　　　　　　　

うらうらと

心(こころ)のまま　居(い)て下(くだ)さい

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

寄(より)満嶽(みちだけ)に　降(お)りられて　　　　　　　　　　　　

勝(まさ)れる兄弟按(きょうだいあん)司(じ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

守(まも)り愛(め)で　依(よ)り降(お)りて

勝(すぐ)れる兄弟(きょうだい)貴(たか)き人(ひと)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

見守(みまも)り　依(よ)り降(お)りて

心内(こころうち)に　思(おも)い、

あかつきに　たとえて

肝(きも)の内(うち)に　思(おも)うには、

明(あ)け方(がた)に　たとえて

戦(いくさ)日和(びより)　取(と)られて、　　　　　　　　　　　

島討(しまう)ち精(せじ)　うるわしく　

心(こころ)日和(びより)　取(と)られて、　　　　　　　　　　　　

国討(くにう)ち精(せじ)　うるわしく　　　　　　　　　　　　　　　　　　

聖(せい)なる祈(いの)り　なされて、　　　　　　　　　　　　

浦浦(うらうら)は　寄(よ)せて

司(つかさ)祈(いの)り　なされて、　　　　　　　　　　　　

浜(はま)浜(はま)は　寄(よ)せて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

幸(さち)の数(かず)　良(よ)き日数(ひかず)　祈(いの)り、　　　　　　　　

うらうらと　　

３５

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

押(お)し遣(や)った精(せ)軍(いくさ)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　世(よ)　守(まも)れ　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

押(お)し遣(や)った精(せ)軍(いくさ)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ああ愛(いと)しき君(きみ)南風(はえ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

島討(しまう)ち　してこそ　戻(もど)られよ

ああ愛(いと)しき君(きみ)南風(はえ)、　　　　　　　　

国討(くにう)ち　してこそ　戻(もど)られよ

群(む)れあう子(こ)等(ら)　大国(おおくに)　なれば、　　　　　　　　　　　　　　　　

島(しま)討(う)ちしてこそ　戻(もど)られよ

男(おとこ)たち　大国(おおくに)　なれば、

国討(くにう)ち　してこそ　戻(もど)られよ

大(おお)きい船(ふね)　男(おとこ)たち、　　　　　　　　　　　　　　　

島討(しまう)ち　してこそ　戻(もど)られよ

多(おお)い船(ふね)　男(おとこ)たち、

討(う)ち合(あ)い　戻(もど)られよ

天(てん)までも　鳴(と)響(よ)み、

討(う)ち合(あ)い　戻(もど)られよ

　　

３６

按司(あんじ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　　　　

城(しろ)の内(うち)に　居(い)て下(くだ)さい　　　　　　　　　　　　

世(よ)の思(おも)い　して下(くだ)さい

大君(おおきみ)は　気(き)を　やって下(くだ)さい

按司(あんじ)大主(おそい)は、

京(きょう)の内(うち)に　居(い)て

世(よ)の思(おも)い　して下(くだ)さい

精(せ)高子(だかこ)は　気(き)を　やって下(くだ)さい

按司(あんじ)大主(おそい)は、

御肝内(おきもうち)は　嘆(なげ)くな　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)は　気(き)を　やって下(くだ)さい

貴(たか)き人(ひと)は、

肝(きも)の内(うち)は　嘆(なげ)くな

首里(しゅり)モリ年寄(としよ)りは、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

島(しま)　広(ひろ)く　添(そ)えて

按司(あんじ)大主(おそい)に

世(よ)　添(そ)えて　差(さ)し上(あ)げよ

島内(しまうち)の男(おとこ)たち、

国(くに)　広(ひろ)く　添(そ)えて

君(きみ)南風(はえ)が、　　　　　　　　　　　　　　　

宮古(みやこ)島(じま)　走(はし)られて　　　　　　　　　　　　　　　　

島(しま)　広(ひろ)く　添(そ)えて

強(つよ)き主(ぬし)が、　　　　　　　　　　　　　　　　　

八重山(やえやま)島(じま)　走(はし)られて　　　　　　　　　　

国(くに)　広(ひろ)く　添(そ)えて

八重山(やえやま)島(じま)おとこ、

敵(かたき)を　倒(たお)したら　　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)は　世(よ)を治(おさ)めます

果(は)ての島(しま)おとこ、　　　　　　　　　　　　　

仇(かたき)を　倒(たお)したら　　　　　　　　　　　　　

精(せ)高子(だかこ)は　世(よ)を治(おさ)めます

敵(かたき)を　倒(たお)したら、

沖(おき)膾(なます)　捧(ささ)げよ　　　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)は　世(よ)を治(おさ)めます

３７

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

鳴(と)響(よ)ませて　差(さ)し上(あ)げよ

父(ちち)なる人(ひと)按司(あんじ)大主(おそい)、

吾(わ)が愛(あい)する按司(あんじ)大主(おそい)

京(きょう)の内(うち)にきらめき、

御城内(おしろうち)にきらめき

清(きよ)き旗(はた)を　なびかせて、　　　　　　　　　　　　　

珍(めずら)しき傘(かさ)を　なびかせて　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む鼓(つづみ)　打(う)ち揚(あ)げて、　　　　　　　　　　　

清(きよ)き鼓(つづみ)　打(う)ち揚(あ)げて　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)を　招(まね)いて、

君(きみ)君(ぎみ)を　招(まね)いて

気(き)の踊(おど)り　降(お)りられて、

きらめかせて　遊(あそ)べば

清(きよ)き男(おとこ)たち、

数(かず)知(し)らぬ男(おとこ)ら

肝(きも)　揃(そろ)え　喜(よろこ)び、　　　　　　　　　　　　　　　

心(こころ)　揃(そろ)え　喜(よろこ)び　　　　　　　　　　　　　　　　

おとこ　この御島(みしま)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

おとこ　この御国(みくに)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

守(まも)り育(そだ)て　降(お)りられて、

養(やしな)いて　降(お)りられて

３８

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

御島(みしま)　祈(いの)り

首里(しゅり)モリ　います、

真玉(まだま)モリ　います

父(ちち)なる方(かた)按司(あんじ)大主(おそい)、

吾(わ)が愛(あい)する按司(あんじ)大主(おそい)

大君(おおきみ)が　招(まね)いて、

精(せ)高子(だかこ)が　手(て)　摩(す)り

大船(おおふね)の名(な)を　乞(こ)われて、

御船(みふね)の名(な)を　乞(こ)われて

天(てん)の誇(ほこ)る人(ひと)、

天(てん)の愛(あい)する人(ひと)

世引(よひき)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　　　　　　

精(せじ)新(あら)丸(まる)　刳(く)り浮(う)かべ　　　　　　　　　　　　　　

世付(よつき)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　　　　　

雲子(くもこ)丸(まる)　刳(く)り浮(う)かべ　　　　　　　　　　　　　　　　　　

舞遣(まやい)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

押(おし)明(あけ)丸(まる)　刳(く)り浮(う)かべ　　　　　　　　　　　　　　

嶽(たけ)嶽(だけ)に　祈(いの)り、　　　　　　　　　　　　　　　

モリモリに　祈(いの)り

御傘(みかさ)を　取(と)って下(くだ)さい、

扇子(せんす)を　取(と)って下(くだ)さい

多(おお)い船(ふね)　付(つ)けて下(くだ)さい、

大(おお)きい船(ふね)　付(つ)けて下(くだ)さい　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

荒波(あらなみ)　和(なご)ませて、

青波(あおなみ)をも　とどまらせ

押(お)し浮(う)くたび　見守(みまも)れ、

刳(く)り浮(う)くたび　見守(みまも)れ　　　　　　　　　　　　　

君(きみ)君(ぎみ)こそ　世(よ)を治めます、

主(ぬし)主(ぬし)こそ　世(よ)を治(おさ)めます

３９

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が

首里(しゅり)に　鳴(と)響(よ)み　　　　　　　　　　　　　　　

天(てん)の世(よ)の気高(けだか)さ、

神(かみ)の世(よ)の気高(けだか)さ

神(かみ)の　揺(ゆ)り動(うご)かし、

天(てん)の　揺(ゆ)り動(うご)かし

与那覇(よなは)浜(はま)　依(よ)り降(お)りて、　　　　　　　　　　　

雪(ゆき)の浜(はま)　依(よ)り降(お)りて

京(きょう)の内(うち)　神(の)女(ろ)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

御城内(おしろうち)の　神(の)女神女(ろのろ)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

御世(みよ)に立(た)つ人(ひと)　選(えら)び上(あ)げて、　　　　　　　　　　　

世(よ)に立(た)つ人(ひと)　押(お)し上(あ)げて　　　　　　　　　　　

どのような　心内(こころうち)か、

どのような　肝内(きもうち)か

君(きみ)をかがやかせて、

主(ぬし)をかがやかせて

肝(きも)　立(た)って居(い)ても、

心(こころ)　立(た)って居(い)ても

首里(しゅり)モリ　います、

真玉(まだま)モリ　います

父(ちち)なる方(かた)按司(あんじ)大主(おそい)、

吾(わ)が愛(あい)する按司(あんじ)大主(おそい)

明(あ)けの露(つゆ)　濡(ぬ)れていて、

霜(しも)の露(つゆ)　濡(ぬ)れていて

首里(しゅり)を　揃(そろ)えて　　　　　　　　　　　　　　　

この御島(みしま)　揃(そろ)えて、

君(きみ)　田降(たお)り　なされて、

貢物(みつぎもの)　取(と)られて

おとこの命(いのち)　継(つ)がれて、

兵士(へいし)の命(いのち)　継(つ)がれて

誇(ほこ)り誇(ほこ)り　知(し)らせよ、

騒(さわ)ぎ騒(さわ)ぎ　知(し)らせよ

太陽(てるか)神(わ)の　仰(おお)せ、　　　　　　　　　　　　　　

照(てる)日(し)神(の)の　仰(おお)せ　　　　　　　　　　　　　　　

４０

海果国(にるや)鳴(と)響(よ)む大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　　　

彼方国(かなや)鳴(と)響(よ)む若(わか)主(ぬし)　　　　　　　　　　　　　　

海果(にる)国(や)精(せじ)　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　　　　　　

大島(おおしま)　守(まも)る　按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

この世(よ)を　守(まも)る　按司(あんじ)大主(おそい)

寄(より)満家(みちや)を　造(つく)り、　　　　　　　　　　　　　　

精寄(せじよせ)を　造(つく)り　　　　　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)を　招(まね)いて、

精(せ)高子(だかこ)は　手(て)　摩(す)り

京(きょう)の内(うち)の　きらめき、

御城内(おしろうち)の　きらめき

誇(ほこ)るといって　このように、

騒(さわ)ぐといって　あのように

赤口(あかぐち)が　はねて、　　　　　　　　　　　　　　　　

火(ひ)の神(かみ)が　はねて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

海果(にる)国(や)までも　通(とお)して、　　　　　　　　　　　

彼方(かな)国(や)までも　通(とお)して　　　　　　　　　　　　

天(あま)仁子(にこ)が　響(ひび)いて、　　　　　　　　　　　　　

先人子(けさにこ)が　感(かん)じて　　　　　　　　　　　　　　　　

海果(にる)国(や)の日(ひ)　取(と)られて、　　　　　　　　　　　　

彼方(かな)国(や)の日(ひ)　取(と)られて　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　踏(ふ)みしめて、

真玉(まだま)モリ　踏(ふ)みしめて

金(かね)のお城(しろ)　真庭(まみわ)に、　　　　　　　　　　　　　

雲(くも)のお城(しろ)　真庭(まみわ)に　　　　　　　　　　　　　　

綾子(あやこ)浜(はま)　現(あらわ)れ、　　　　　　　　　　　　　　　

引来(しつこ)浜(はま)　現(あらわ)れ　　　　　　　　　　　　　　　　　

三庫裡(さんこおり)　祈(いの)りして、　　　　　　　　　　　　　　

三庭(さんみ)脚上(あしあげ)　祈(いの)りして　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)の内(うち)の　生(う)まれて、

心内(こころうち)の　勝(すぐ)れて　　　　　　　　　　　　　　

英(えい)祖(そ)の末(すえ)按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　

太陽(てだ)の末(すえ)按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　　　　　　　

海果(にる)国(や)精(せじ)　あるかぎり、　　　　　　　　　　　

彼方(かな)国(や)精(せじ)　あるかぎり　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　栄(さか)え、

真玉(まだま)モリ　栄(さか)え

大主(おおぬし)は　守(まも)る、

若(わか)主(ぬし)は　守(まも)る

４１

清(きよ)き降(おり)笠(かさ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)に　願(ねが)い

憑(つ)き女(め)　選(えら)び　降(お)ろして　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)　末永(すえなが)く　居(い)て下(くだ)さい　　　　　　　　　　　

（六行混入）省略

揚(あ)がる降(おり)笠(かさ)が　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

群合(もりあい)君(ぎみ)　愛(いと)し子(ご)　　　　　　　　　　　　　　　　

持(も)て成(な)したる　生(い)き生(い)きしさ

雪(ゆき)明(あかり)が　愛(いと)し子(ご)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

持(も)て成(な)したる　生(い)き生(い)きしさ

揚(あ)がる降(おり)笠(かさ)が

持(も)て成(な)したる　生(い)き生(い)きしさ

君(きみ)君(ぎみ)が　愛(いと)し子(ご)、

持(も)て成(な)したる　生(い)き生(い)きしさ

（７行混入）省略