巻

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巻１１　久米(くめ)島(じま)のおもろ（内容は巻２１とほぼ同じ）

５５６

東(ひがし)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　

大主(おおぬし)が　思(おも)う子(こ)

太陽(てだ)の形(かた)　きらめかせて　　　　　　

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

５５７

東(ひがし)に　咲(さ)く花(はな)、

天(てん)　鳴(と)響(よ)み　咲(さ)く花(はな)

大祖父(おおおじ)が　いますか、　　　　　　　

美(うつく)しい造(づく)り　在(あ)りたい

汲(く)む清水(しみず)でさえも、

見(み)て　行(ゆ)きて　息(いき)　伸(の)ばしたい

踏(ふ)んだ頂(いただ)きさえも、

見(み)て　行(ゆ)きて　肝(きも)　伸(の)ばしたい

５５８　　　　　　　　　　　　

御本(おもと)嶽(だけ)司子(つかさご)、　　　　　　　　　　

久米(くめ)の島(しま)　来(こ)られて

世直(よなお)しに　来(こ)られて

来迎(きちゃら)嶽司子(だけつかさご)、　　　　　　　　　　

父(ちち)の前(まえ)　いまして

首里(しゅり)モリ按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　

末永(すえなが)く

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　います

真玉(まだま)モリ按司(あんじ)大主(おそい)、

末永(すえなが)く

按司(あんじ)大主(おそい)こそ

八重山(やえやま)島(しま)までも、　　　　　　　　

果(は)ての島(しま)までも　　　　　　　　　

末永(すえなが)く

按司(あんじ)大主(おそい)こそ

与那国(よなぐに)までも、　　　　　　　　　

波(は)照間(てるま)までも

末永(すえなが)く

按司(あんじ)大主(おそい)こそ

縄(なわ)　渡(わた)して、

糸(いと)　渡(わた)して

末永(すえなが)く

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　います

５５９

天上(おぼつ)　居(い)て　見(み)れば、　　　　　　　

天(てん)より地(ち)を　見(み)れば

綾庭(あやみや)の　珍(めずら)しさ　　　　　　　　　　

中地(なかち)綾庭(あやみや)に、　　　　　　　　　　　

美(うつく)しい造(つく)り　在(あ)り

中地(なかち)珍(めずら)しき庭(みや)に、　　　　　　　　　　

清(きよ)き造(つく)り　在(あ)り

名(な)高(だか)きが　使(つか)いこそ

久米(くめ)の島(しま)　来(き)まして

吾(わ)が人(ひと)が　使(つか)いこそ、

父(ちち)の島(しま)　来(き)まして

大祖父(おおおじ)が世(よ)なれば、　　　　　　　　

百(もも)甕(かめ)も　据(す)えたい　　　　　　　　　

綾庭(あやみや)の　おとこ等(ら)、

眼(まなこ)　合(あ)わせて　戻(もど)り

綾庭(あやみや)の　おとこ等(ら)、

御顔(みかお)　合(あ)わせて　戻(もど)り　　　　　　

５６０

新垣(あらかき)の大祖父(おおおじ)がモリに、　　　　　　　

吾(わ)が先祖(せんぞ)

御幸(みさち)　勝(まさ)りなさい　　　　　　　　　　

大里(おおざと)の鳴(と)響(よ)みモリ　降(お)りられて、　　　　

吾(わ)が先祖(せんぞ)

大里(おおざと)の根立(ねだ)てモリ　降(お)りられて、

吾(わ)が先祖(せんぞ)

新垣(あらかき)の稲嶺(いなみね)　降(お)りられて、　　　　　　

吾(わ)が先祖(せんぞ)

十(と)尋(ひろ)　斎場(あしあげ)、　　　　　　　　　　　

八尋(やひろ)　斎場(あしあげ)　好(この)み　　　　　　　　　

吾(わ)が先祖(せんぞ)　御幸(みさち)　　　　　　　　　　　　　　

百(もも)甕(かめ)は、　　　　　　　　　　　　　　

八十(やそ)甕(かめ)は　据(す)えて　　　　　　　　　

吾(わ)が先祖(せんぞ)

思(おも)い君(ぎみ)、

清(きよ)き君(きみ)　手(て)　摩(す)り

吾(わ)が先祖(せんぞ)

５６２

与那嶺(よなみね)割(わり)金(がね)は、　　　　　　　　　　

鈴(すず)の割(わり)金(がね)は

国(くに)の浮雲(うきぐも)と、　　　　　　　　　　　　　

国(くに)の貴(たか)き人(ひと)と　　　　　　　　　　　　　

５６３

仲地(なかち)綾庭(あやみや)に、　　　　　　　　　　　

綾(あや)金(こがね)　　　　　　　　　　　　　　　

押(お)し合(あ)いしなさい

中地(なかち)稀(まれ)の庭(みや)に、　　　　　　　　　　

５６４

天(あま)御国(みや)君(きみ)南風(はえ)は、　　　　　　　　　

京(きょう)の君(きみ)南風(はえ)は

百度(ももと)　手(て)　摩(す)られて　　　　　　　　

具志川(ぐしかわ)の使(つか)い、　　　　　　　　　　

金(かな)福(ふく)の使(つか)い　　　　　　　　　　　　

板(いた)門口(もんぐち)　上道(うえみち)、　　　　　　　　　　

金(かな)門口(もんぐち)　上道(うえみち)　　　　　　　　　　　

名高(なだか)き人(ひと)を　従(したが)えて、

吾(わ)がおとこ　従(したが)えて

綾庭(あやみや)のおとこ等(ら)、

立(た)ちます　居(い)ます　待(ま)ちます　　　　　　　　　

５６５

新垣(あらかき)のモリに、　　　　　　　　　　

黄昏(たり)国人(るこ)の　海果(みる)国(や)に　使(つか)い　　　

大祖父(おおおじ)がモリに、　　　　　　　　　

御庭(おみや)　造(つく)られて、　　　　　　　　

真庭(まみや)　造(つく)られて、　　　　　　　　

５６６

勝(すぐ)れ　名高(なだか)き人(ひと)、

百按司(ももあんじ)ならばでさえも　「エ　ヤレ」

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)

良(よ)き名高(なだか)き人(ひと)、

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

５６７

勝(すぐ)れ名高(なだか)き人(ひと)、

良(よ)き名高(なだか)き人(ひと)

思(おも)う君(きみ)　清(きよ)き君(きみ)

清(きよ)き美(うつく)しき家(いえ)を

造(つく)り　います

誰(だれ)が　為(ため)に　賜(たま)う、

誰(だれ)が　為(ため)に　頂(いただ)く

思(おも)う子(こ)の　為(ため)こそ、

君(きみ)良(よし)が　為(ため)こそ　　　　　　　　　　

５６８

福地(ふくち)儀間(ぎま)の主(ぬし)よ、　　　　　　　　

良(よ)き儀間(ぎま)の主(ぬし)よ　　　　　　　　　　　　

思(おも)い　乞(こ)い　造(つく)り

宇根(うね)グスク　造(つく)り、　　　　　　　

大(おお)グスク　造(つく)り

翳(かざ)す若(わか)王(おう)よ、　　　　　　　　　　

真物(まもの)若(わか)王(おう)よ　

石門(いしもん)を　建(た)てて、　　　　　　　　

金門(かなもん)を　建(た)てて　　　　　　　　　

５６９

福地(ふくち)儀間(ぎま)の主(ぬし)よ、　　　　　　　　

按司(あんじ)を　見(み)て　勝(まさ)り　　　　　　

良(よ)き儀間(ぎま)の主(ぬし)よ、　　　　　　　　　　　

翳(かざ)す若(わか)王(おう)よ、　　　　　　　　　　

５７０

勝(すぐ)れ名高(なだか)き人(ひと)、

愛(いと)しき名高(なだか)き人(ひと)　　　　　　　　　　

親(おや)より　好(この)み

翳(かざ)す若(わか)王(おう)よ、　　　　　　　　　　

真物(まもの)若(わか)王(おう)よ　　　　　　　　　　　

午(うま)の年(とし)　来(き)たれば、

生(う)まれ年(どし)　来(き)たれば、

５７１

勝(すぐ)れて名高(なだか)き人(ひと)、　　　　　　　　　　

愛(いと)しき名高(なだか)き人(ひと)　　　　　　　　　　

心(うら)切(ぎ)れるほど　見(み)たい　　　　　　

離(はな)れ　居(い)る　吾(われ)は、

遠(とお)く　居(い)る　吾(われ)は

川(かわ)の崖(がけ)　降(お)り遣(や)り、

九(ここの)崖(がけ)　見(み)れば　　　　　　　　　　

翳(かざ)す若(わか)王(おう)の、　　　　　　　　　　

真物(まもの)若(わか)王(おう)の　　　　　　　　　　　

打(う)ち歩(あゆ)むが　見物(みもの)、

群(む)れ舞(ま)うが　見物(みもの)

前(まえ)へと　寄(よ)り来(こ)よ、

側(そば)へと　寄(よ)り来(こ)よ

５７２

君(きみ)良(よし)が、　　　　　　　　　　　　

憑(つ)き女(め)照(てる)雲(くも)は　　　　　　　　　　　　

どのような　清水(しみず)　在(あ)ってか

雲子(くもこ)より　出(で)たる

真玉(まだま)より　出(で)たる

嶽(たけ)が　真中(まなか)に、　　　　　　　　　　　　

モリが　真中(まなか)に　　　　　　　　　　　　　

５７３

君(きみ)良(よし)君(ぎみ)の、　　　　　　　　　　

君(きみ)を　誇(ほこ)られて

按司(あんじ)大主(おそい)は　　　　　　　　　　

永遠(とわ)の世(よ)こそ　います　　　　　

君(きみ)大主(おそい)君(ぎみ)の、　　　　　　　　　

君(きみ)を　誇(ほこ)られて

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)が、　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)が、

真(ま)平良(たいら)の按(あん)司(じ)に、　　　　　　　

弟(おとうと)の愛(いと)し子(こ)、　　　　　　　　

後(のち)良(よ)き愛(いと)し子(ご)、　　　　　　　

５７４

聞(きこ)え精(せん)君(ぎみ)が、　　　　　　　　　　　　　

真(ま)聖域(しけ)こそ　まことに造(つく)られて　　　

鳴(と)響(よ)む精(せん)君(ぎみ)が、　　　　　　　　　　

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

米(こめ)の数(かず)　崇(あが)めよ、　　　　　　　　　　　　

５７５

名高(なだか)き按(あん)司(じ)様(さま)は、

いざ　吾(わ)が　御肝(おぎも)　栄(は)えよ

同胞(はたみ)戦子(いくさご)、　　　　　　　　　　　

中城(なかぐすく)の御(お)方(かた)、　　　　　　　　　　

肝(きも)高(だか)の御(お)方(かた)、　　　　　　　　　　

５７６

煽(あおり)八重(やえ)君(ぎみ)の、　　　　　　　　　

造(つく)り　見物(みもの)

君(きみ)大主(おそい)君(ぎみ)の、　　　　　　　　　

まこと　御言(みこと)　宣(の)べる、

まさに　御言(みこと)　宣(の)べる、

赤口(あかぐち)に　依(よ)り憑(つ)きて、　　　　　

火(ひ)の神(かみ)に　依(よ)り憑(つ)きて、

精(せ)高子(だかこ)が　御前(みまえ)、　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)が　御前(みまえ)、

百(もも)甕(かめ)を　据(す)えて、　　　　　　　

八十(やそ)甕(かめ)を　据(す)えて、　　　　　　

君使(きみつか)い　黄昏(たり)国(る)、　　　　　　　　　　　　　

主使(ぬしつか)い　黄昏(たり)国(る)、　　　　　　　　　　　　　

５７７

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、　　　　　　　　

百(もも)末(すえ)　鳴(と)響(よ)む　　　　　　　　　

名高(なだか)きモリ

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、　　　　　　　　　

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)が、　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)が、

５７８

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

「エ　ケ」　三乃(みの)鼓(かわ)　　　　　　　　　

打(う)って　鳴(と)響(よ)み

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

５７９

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

世寄(よよ)せ飽(あ)かぬ御殿(おどの)　　　　　　　　　　　　　　　　

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)、

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)が、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)が、

５８０

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が

精(せじ)高(たか)く

鳴(と)響(よ)まれる貴(たか)さ

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)が、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)が

具志川(ぐしかわ)のモリに、　　　　　　　　　　

金(かな)福(ふく)のモリに　　　　　　　　　　　　

５８１

精(せ)高子(だかこ)は、

まこと　御言(みこと)　述(の)べる

声(こい)忍(しの)こそ

きらめいて　差(さ)し上(あ)げよ

按司(あんじ)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　　

まことに　御言(みこと)　述(の)べる

声(こい)忍(しの)が

赤口(あかぐち)が　照(て)る窯(かま)、　　　　　　　　　　　　　　　　　

火(ひ)の神(かみ)が　照(て)る窯(かま)、

憑(つ)き女(め)は　おもろを　語(かた)る、　　　　

降(お)り女(め)は　祝詞(せるむ)を　申(もう)す、　　　　　

５８２

具志川(ぐしかわ)の　真玉内(まだまうち)を、　　　　　　　　

造(つく)り

良(よ)く　造(つく)り

勝(まさ)ります精(せ)高子(だかこ)

金(かな)福(ふく)の真玉内(まだまうち)を、　　　　　　　　　　

造(つく)り

唐(とう)の船(ふね)　銭(ぜに)　金(こがね)、

持(も)ち寄(よ)せるグスク

良(よ)く　造(つく)り

大和(やまと)船(ふね)　銭(ぜに)　金(こがね)、

持(も)ち寄(よ)せるグスク

５８３

鬼(おに)の君(きみ)南風(はえ)が、　　　　　　　　　　　　　　

見(み)揚(あ)げ欲(ほ)しく　あります　　　

金内(こがねうち)の　　　　　　　　　　　　　　　

世(よ)守(まも)る精(せじ)　差(さ)し上(あ)げよ

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

見(み)揚(あ)げ欲(ほ)しく　あります

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

斑(もどろ)の着物(きもの)　召(め)されて、　　　　　　　　　　

選(えら)び出(だ)す簪(かんざし)　挿(さ)されて　　　　　　　　　　　　　

雪(ゆき)の速(はや)御馬(みうま)に、　　　　　　　　　　　　　

金(こがね)鞍(ぐら)　掛(か)けて　　　　　　　　　　　　

雪(ゆき)の俊敏(そよめ)馬(き)に、　　　　　　　　　　　　　

銀(しろがね)鞍(ぐら)　掛(か)けて　　　　　　　　　　　　

５８４

鬼(おに)の君(きみ)南風(はえ)は、　　　　　　　　　　　　

妻女(やちよこ)　ますます　　　　　　　　　　　

添(そ)うて　下(くだ)さい

大主(おそい)君(きみ)南風(はえ)は、　　　　　　　　　

鬼(おに)こそ　出(で)て　人(ひと)　威(おど)し、　　　　　　　　　　　　

人(ひと)の　出(で)て来(き)て　鬼(おに)　威(おど)して、　　

５８５

鬼(おに)の君(きみ)南風(はえ)は、

成(な)せる人(ひと)に

和(なご)み　鳴(と)響(よ)め

大主君(おそいきみ)南風(はえ)は、　　　　　　　　　

良(よ)き弟(おとうと)　おとこ、　　　　　　　　　

後(のち)良(よ)きおとこ、　　　　　　　　

５８６

鬼(おに)の君(きみ)南風(はえ)は、

百(もも)浦(うら)の　鳴(と)響(よ)み

大主君(おそいきみ)南風(はえ)は、　　　　　　　　　　

具志川(ぐしかわ)に　います、

金(かな)福(ふく)に　います、

成(な)せる浮雲(うきぐも)が、　　　　　　　　　　　　　

沖縄(おきなわ)に　鳴(と)響(よ)む、

大国(おおくに)に　鳴(と)響(よ)む

金(こがね)の　御酌(みしゃく)、　　　　　　　　　　　

真玉(まだま)の　御酌(みしゃく)、

差(さ)し上(あ)げよ　御酌(みしゃく)、

捧(ささ)げよ　御酌(みしゃく)、

５８７

具志川(ぐしかわ)のモリに、

稲(いね)米(こめ)　寄(よ)り満(み)たして

金(かな)福(ふく)のモリに、

精持(せじも)ち水稲(みずいな)田(だ)、　　　　　　　　

若(わか)き按(あん)司(じ)様(さま)が　稲田(いなだ)、

按司(あんじ)大主(おそい)が　稲田(いなだ)、

　　　　　　

５８８

兼(かね)城(ぐすく)モリに、　　　　　　　　　

貢(みつぎ)　寄(よ)せて　　　　　　　　　

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、　　　　　　　　

祖先(なさ)が建(た)てる庭(みや)に　　　　　　

５８９

兼(かね)城(ぐすく)モリに、　　　

百(もも)浦(うら)真顔子(まちらす)　　　　　　　　　

立(た)たれて　栄(は)えあれ

本(もと)なる金(かな)モリに、　　　　　　　　　　

祖先(なさ)が建(た)てる庭(みや)に、　　　　　

５９０

新垣(あらかき)に　います、　　　　　　

まこと世(よ)の主(ぬし)の真物(まもの)

初(はつ)の子(こ)は　生(な)されて、　　　

新(あら)の子(こ)は　生(な)されて　　　　

十百人(とももそ)の戦(いくさ)、　　　　　　　　

八百人(やももそ)の戦(いくさ)　　　　　　　　　

５９１

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

百(もも)浦(うら)の声(こい)忍(しの)が

精声(せじごえ)　聞(き)きたいと　　　　　　

国鳴(くにと)響(よ)み

綾(あや)嶺(みね)に　在(あ)る、　　　　　　

大祖父(おおおや)が　植木(うえき)　　　　　　　

綾(あや)嶺(みね)に　在(あ)る、　　　　　　

大祖母(おおおや)が　植木(うえき)　　　　　　　

宇根(うね)に　居(い)て　打(う)てば、　　　

大里(おおざと)に　鳴(と)響(よ)み　　　　　　　

大里(おおざと)に　打(う)てば、

大国(おおくに)に　鳴(と)響(よ)み

５９２

堂(どう)の子(し)が　使(つか)い、　　　　　　　　

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は　　　　　　　　　　

百度(ももと)　世(よ)こそ　います　　　　　

堂(どう)の大親(おおや)が　使(つか)い、　　　　　　

堂(どう)川(かわ)に　在(あ)りなさい、　　　　　　

湧(わ)く清(し)水(みず)　在(あ)りなさい、

５９３

久米(くめ)の世寄(よよせ)君(ぎみ)、　　　　　　　　　

生(い)き生(い)きしく　栄(は)え

思(おも)う世寄(よよせ)君(ぎみ)、

御庭(おみや)　立(た)つ　おとこ、　　　　　

真庭(まみや)　立(た)つ　おとこ、　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

按司(あんじ)大主(おそい)が　御前(みまえ)、　　　　　　

貴(たか)き人(ひと)が　御前(みまえ)、　　　　　　　

百(もも)甕(かめ)を　据(す)えて、　　　　　　　

八十(やそ)甕(かめ)を　据(す)えて、　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)を　栄(は)えさせ、　　　　　　　　　　　　

貴(たか)き人(ひと)を　栄(は)えさせ、

５９４

聞(きこ)え精(せの)君(きみ)が、　　　　　　　　　　　　

若君(わかぎみ)丸(まる)　造(つく)り　使(つか)い

鳴(と)響(よ)む精(せの)君(きみ)が、

赤(あか)き綾(あや)鋼(はがね)、　　　　　　　　　　　　　　

赤(あか)き稀(まれ)の鋼(はがね)、　　　　　　　　　　　　　

誰(だれ)が　差(さ)して　似合(にあ)う、

いずれが　差(さ)して　似合(にあ)う、

拵(こしらい)こそ　ふさわしい、　　　　　　　　　　　

神女(かみ)様(さま)こそ　ふさわしい、　　　　　　　　

５９６

真夜中(まよなか)時(どき)　神(かみ)の時(とき)、

知(し)られる　勝(すぐ)れ人(びと)　おとこ

綾(あや)の筵(むしろ)　打(う)ち差(さ)し上(あ)げ　　　　　　　　　　　　　

神(かみ)を　待(ま)ちたい

夜(よ)明(あ)けぬ前(まえ)　神(かみ)の時(とき)、

今日(きょう)の良(よ)き時(とき)は　神(かみ)の時(とき)、

今(いま)の良(よ)き時(とき)は　神(かみ)の時(とき)、

５９７

福地(ふくち)儀間(ぎま)の主(ぬし)、　　　　　　　　　　　　

人(ひと)の浦(うら)の貢(みつぎ)

掻(か)き寄(よ)せて

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

翳(かざ)す若(わか)王(おう)に、　　　　　　　　　　　　　

人(ひと)の浦(うら)の貢(みつぎ)

真物(まもの)若(わか)王(おう)に、　　　　　　　　　　　　　

５９８

聞(きこ)え差(さす)笠(かさ)は、　　　　　　　　　　　　　　　

妹(いもうと)君(ぎみ)なれども　　　　　　　　　　　　　

降(お)りる数(かず)

君(きみ)　栄(は)える　御声(みこえ)　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む差(さす)笠(かさ)は、

具志川(ぐしかわ)のモリに、　　　　　　　　　　　　　

金(かな)福(ふく)のモリに、　　　　　　　　　　　　　　

５９９

新垣(あらかき)のモリに、　　　　　　　　　　

打(う)ち揚(あ)がる拍子(ひょうし)

吾(わ)が父母(ふぼ)のモリに、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

按司(あんじ)大主(おそい)が御前(みまえ)、

精(せ)高子(だかこ)が御前(みまえ)、

６００

兼(かね)城(ぐすく)大親(おおや)、　　　　　　　　

おもろする大親(おおや)

世(よ)守(まも)る拍子(ひょうし)

打(う)って　差(さ)し上(あ)げよ

国(くに)の根(ね)の大親(おおや)、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

按司(あんじ)大主(おそい)が御前(みまえ)、　　　　　　　　　　

精(せ)高子(だかこ)が御前(みまえ)、

６０１

兼(かね)城(ぐすく)根立(ねだ)てモリグスク、

世(よ)勝(まさ)る島討(しまう)ち拍子(ひょうし)　差(さ)し上(あ)げよ

国(くに)の根(ね)の根立(ねだ)てグスク、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

按司(あんじ)大主(おそい)が御前(みまえ)、

精(せ)高子(だかこ)が御前(みまえ)、

６０２

思(おも)う弱倉(なよくら)が、　　　　　　　　　　　　　　　

湧(わ)き清(し)水(みず)　在(あ)ると

「エケ」　勝(まさ)り　聞(き)く　羨(うらや)み

中地(なかち)貴(たか)き人(ひと)、　　　　　　　　　　　　

６０３

仲地(なかち)貴(たか)き人(ひと)が、　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)み居(い)る　使(つか)い

貴(たか)き人(ひと)が　造(つく)り

徳寄(とくよせ)が　下(した)に、　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)み居(い)る　使(つか)い

腰当(こしあて)丸(まる)は　造(つく)り、　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)み居(い)る　使(つか)い

６０４

妹(いもうと)　君(きみ)勝(まさり)、　　　　　　　　　　　　　

父(ちち)が思(おも)う君(きみ)

忘(わす)れるな

成(な)せる子(こ)が

御顔(みかお)の　見(み)たくて

走(はし)り戸(ど)を、

突(つ)き開(あ)けられて　来(こ)られて

玉遣(たまや)り戸(ど)、　　　　　　　　　　

突(つ)き開(あ)けられて　来(こ)られて

玉(たま)簾(すだれ)、　　　　　　　　　　　　

巻(ま)き上(あ)げられて

糸(いと)簾(すだれ)、　　　　　　　　　　　　

巻(ま)き上(あ)げられて　来(こ)られて

６０６

翳(かざ)す按(あん)司(じ)は、　　　　　　　　　

まことに　鳴(と)響(よ)め

見(み)れば　水(みず)　廻(まわ)り

真物按司(まものあんじ)は、　　　　　　　　　

名護(なご)の浜(はま)に、　　　　　　　　　

名護(なご)の汀(みぎわ)に、　　　　　　　　　　　　

大和(やまと)まで、

まことに　鳴(と)響(よ)め

６０７

翳(かざ)す若按(わかあん)司(じ)の、　　　　　　　　　　　　　

「デ」　吾(わ)が　御肝(おぎも)に　撓(しな)おう　　　　　　　　　　　　　　　　

真物若按司(まものわかあんじ)、

６０８

翳(かざ)す若按(わかあん)司(じ)に、

御神酒(おみき)　差(さ)し上(あ)げよ

真物若按司(まものわかあんじ)に、

奥(お)武(う)の浜崎(はまさき)に、　　　　　　　　　

奥(お)武(う)の岸崎(きしざき)に、　　　　　　　　　

弟松(おとうとまつ)鳴(と)響(よ)みたる、　　　　　　　　

兄(あに)の大役人(おやおもい)、　　　　　　　　　　　　

６０９

聞(きこ)え国(くに)大主(おそい)が、　　　　　　　　　　　

国(くに)手持倉(てもち)　造(つく)り　　　　　　　　　　

果報(かほう)精(せじ)

前(まえ)　寄(よ)せて　います

鳴(と)響(よ)む　国(くに)大主(おそい)が、　　　　　　　　　　　

具志川(ぐしかわ)のモリに、　　　　　　　　　

金(かな)福(ふく)のモリに、　　　　　　　　　　

６１０

国(くに)大主(おそい)国(くに)守(もり)が、　　　　　　　　

遊(あそ)ばれれば

精(せ)高子(だかこ)が　使(つか)い

嘉(か)手川(でがわ)の中(なか)モリに、　　　　　　　　

遊(あそ)ばれれば

御役人(おきて)　遣(や)りなさい、　　　　　　　

使(つか)い　遣(や)りなさい

来(く)ると言(い)えば、

歩(あゆ)むと言(い)えば

６１１