巻

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巻１０　舟歌(ふなうた)のおもろ御(おん)さうし

５１１

大主(おおぬし)が　天(あめ)轟(とど)ろ　する様(よう)に、　　　　　　

「エケ」　精(せじ)　勝(まさ)り　いまして

大主(おおぬし)が　天(あめ)轟(とどろ)ろ　する様(よう)に、

大主(おおぬし)が　綾子(あやこ)浜(はま)　する様(よう)に、　　　　　　　　　　　　

大主(おおぬし)が　引来(しつこ)浜(はま)　する様(よう)に、　　　　　　　　　　　　

大主(おおぬし)が　真(ま)南(は)風(え)穴(あな)に　いまして、　　　　　　　　　　

大主(おおぬし)が　鳥(とり)のモリ　いまして、

大主(おおぬし)が　国廻(くにまわ)り　しまして、　　　　　　　　　　　　

５１２

昔(むかし)始(はじ)まりは、　　　　　　　　　

太陽子(てだこ)大主(おおぬし)は　　　　　　　　　

清(きよ)らかに　照(て)られて

太(せ)初(のみ)始(はじ)まりに、　　　　　　　　

王様(おうさま)一(いち)の君(きみ)が、　　　　　　　

王様(おうさま)貴(たか)き人(ひと)が、　　　　　　　　

高(たか)さなして　見(み)ますれば、

静(しず)かさなして　見(み)ますれば、　

天(あま)御人(みきよ)は　寄(よ)せられ、　　　　　　　　　　

去(しね)行人(りきよ)は　寄(よ)せられ、　　　　　

島(しま)造(つく)れと　祈(いの)り、　　　　　　　　　　　

国(くに)造(つく)れと　祈(いの)り、　　　　　　　　　　　

多(おお)くの島々(しまじま)、　　　　　　　　　　

沢山(たくさん)の国々(くにぐに)、　　　　　　　　　

島(しま)造(つく)るまでも、

国(くに)造(つく)るまでも、

太陽子(てだこ)　心(うら)切(ぎ)れて、　　　　　　

日(せ)神子(のみ)　心(うら)切(ぎ)れて、　　　　　　

天(あま)御国(みや)の民(たみ)　生(う)むな、　　　　　

去(し)行(ねり)国(や)の民(たみ)　生(う)むな、　　　　　

願(ねが)わくば　御民(みたみ)　生(う)みなさい、

５１３

地天鳴(ちてんと)響(よ)む大主(おおぬし)、

星(ほし)の形(かた)　きらめいて　います

天(てん)地鳴(ちと)響(よ)む若(わか)主(ぬし)、

清(きよ)き御衣(ころも)　召(め)されて、　　　　　　　　　　

星(ほし)の形(かた)の　清(きよ)き帯(おび)、

精(せじ)の剣(つるぎ)　差(さ)されて、

美(うつく)しい鼓(つづみ)　鳴(な)るごとに、

足下(あしもと)　揺(ゆ)らせられて、　　　　　　　　　

沖(おき)辺(べ)　御船(みふね)　敷(し)かれて、　　　　　　　　　　

奥(おく)辺(べ)　大船(おおふね)　敷(し)かれて、

波(なみ)の船(ふね)　踏(ふ)まれて、

鷲(わし)の羽根(はね)　差(さ)されて、

肝(きも)通(とお)す槍(やり)を　先立(さきだ)て、

清(きよ)き扇(おうぎ)　先立(さきだ)て、

仏(ほとけ)崇(たか)扇(べ)　先立(さきだ)て、　　　　　　　　　　　

天降(ており)大君(おおきみ)　先立(さきだ)て、　　　　　　　　　　

国降(くにおり)大君(おおきみ)　先立(さきだ)て、　　　　　　　　　　

天(てん)の王(おう)　従(したが)えて、　　　　　　　　　　　

天(てん)の清(きよ)き王(おう)　従(したが)えて、　　　　　　　　　　　

５１４

斎場(せーふぁ)嶽(だけ)　御嶽(みたけ)、　　　　　　　　　　　

「エヨ　エ　ヤレ」　押(お)せ　　　　　　

底(そこ)仁屋(にや)嶽(だけ)　御嶽(みたけ)、　　　　　　　　　　　

三庫裡(さんこおり)　在(あ)る、　　　　　　　　　　　

三庭(さんみや)脚上(あしあげ)　在(あ)る、　　　　　　　　　

雪(ゆき)の色(いろ)の蹄(つま)黒(ぐろ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

真(ま)白雪(しらゆき)の蹄(つま)黒(ぐろ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

金(こがね)京(きょう)鞍(ぐら)　依(よ)り掛(か)け、　　　　　　　　　　

銀(しろがね)京(きょう)鞍(ぐら)　依(よ)り掛(か)け、　　　　　　　　　　

玉鞦(たましりがい)　依(よ)り掛(か)け、　　　　　　　　　　　

玉鞅(たまむながい)　依(よ)り掛(か)け、　　　　　　　　　　　

上(じょう)の糸(いと)　真(ま)腹帯(はらおび)、　　　　　　　　　　　

雲子(くもこ)手綱(たづな)　依(よ)り掛(か)け、　　　　　　　　　

大君(おおきみ)の　召(め)されて、

国(くに)守(もり)が　召(め)されて、　　　　　　　　　

与那覇(よなは)浜(はま)　降(お)りられて、　　　　　　　　　

馬天(ばてん)浜(はま)　降(お)りられて、　　　　　　　　　　

浦廻(うらまわ)り　召(め)されて、　　　　　　　　　　

崎廻(さきまわ)り　召(め)されて、　　　　　　　　　　

東(ひがし)に　歩(あゆ)めば、

太陽(てだ)が穴(あな)に　歩(あゆ)めば、　　　　　　　　　

５１５

大君(おおきみ)が、

珍(めずら)しき船(ふね)　召(め)されて　　　　　　　　　　　　

喜(よろこ)び　競(きそ)い漕(こ)ぎ　しまして　　　　　　　

国(くに)守(もり)が、　　　　　　　　　　　　　　　　

玉(たま)珍(めず)丸(ら)　　　　　　　　　　　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５１６

大君(おおきみ)が、　

時(とき)を　取(と)り　降(お)りられて

喜(よろこ)び　島踊(しまおど)り　勝(まさ)りまして　　　　　　　　

国(くに)守(もり)が、　　　　　　　　　　　　　　　　　

吉(よ)き日(ひ)　取(と)り　　　　　　　　　　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

大君(おおきみ)が、

島討(しまう)丸(ち)　召(め)されて　　　　　　　　　　　　

国(くに)守(もり)が、

京(きょう)の羽撃(はねう)丸(ち)　召(め)されて　　　　　　　　　　　　

５１７

聞(きこ)え精(せじ)新(あら)君(ぎみ)、　　　　　　　　　　　　　　　

大島(おおしま)　鳴(と)響(よ)む　太陽(てだ)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

上(あ)がり　まして

若(わか)き人(ひと)　行(い)き合(あ)い　見(み)たる

鳴(と)響(よ)む精(せじ)新(あら)君(ぎみ)、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５１９

煽(あお)り雲(ぐも)の按司(あんじ)、　　　　　　　　

大国(おおくに)　知(し)られる

討(う)ってこそ　もどれ

天降(ており)り雲(ぐも)の按司(あんじ)、　　　　　　　

首(しゅ)里親軍(りおやいくさ)、　　　　　　　　　　　　

グスク親軍(おやいくさ)、

板門(いたもん)　攻(せ)めつけて、　　　　　　

金門(かなもん)　攻(せ)めつけて、　　　　　　　　　　

板門(いたもん)　攻(せ)め出(い)でさせ、

金門(かなもん)　攻(せ)め出(い)でさせ、

聖地(まきき)　追(お)い詰(つ)めて、　　　　　　

聖域(てらほ)　追(お)い詰(つ)めて、　　　　　　

百人(ももそ)　斬(き)り伏(ふ)せて、　　　　　　

七十人(ななそ)　斬(き)り伏(ふ)せて、　　　　　　

５２０

石天(いしてん)の　おもろ、　　　　　　　

真(ま)民(たみ)の　競(きそ)いこそ　見物(みもの)　　　　　　　　　　　　　　　　　

金天(かねてん)の　おもろ、　　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おおぬし)、

今日(きょう)の内綾(うちあや)庭(みや)に、　　　　　　　　　　　

今日(きょう)の内奇庭(うちくしみや)に、　　　　　　　　　　　

神参(かみまい)り　しまして、

宮参(みやまい)り　しまして、

５２１

聞(きこ)え蒲(こ)葵(ば)治人(せりきよ)、　　　　　　　　　　　　　　

見遣(みや)りたくて　首里(しゅり)の

珍(めずら)しさ　数(かず)　有(あ)る

鳴(と)響(よ)む蒲(こ)葵(ば)治人(せりきよ)、　　　　　　　　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

東(ひがし)を　崇(あが)めて、

太陽(てだ)の穴(あな)を　崇(あが)めて、　　　　　　　　　

来(きた)る年(とし)　成(な)れば、

向(む)かう年(とし)　成(な)れば、

良(よ)き果報(かほう)　祝詞(せるむ)、　　　　　　　　　　　　　　　　

命(いのち)果報(かほう)　祝詞(せるむ)、　　　　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　知(し)られて、

真玉(またま)モリ　知(し)られて、

按司(あんじ)大主(おそい)に　知(し)られて、　　　　　　　　

貴(たか)き人(ひと)に　知(し)られて、　　　　　　　　　

末永(すえなが)きまで　います、

常(とこ)永遠(とわ)まで　います、　　　　　　　　

５２２

聞(きこ)え差(さす)笠(かさ)が、　　　　　　　　　　　　　　　

「ヨ　ヨウ」　世(よ)　直(なお)し

世(よ)　直(なお)せ

鳴(と)響(よ)む差(さす)笠(かさ)を、

今日(きょう)のあかつきに、

今日(きょう)のあけぼのに、

東(ひがし)に　見遣(みや)れば、

太陽(てだ)が穴(あな)に　見遣(みや)れば、　　　　　　　　　　　

紫(むらさき)の　綾(あや)雲(ぐも)、　　　　　　　　　　　　　　　　

紫(むらさき)の　抜(ぬき)雲(ぐも)、　　　　　　　　　　　　　　　　

島(しま)中根(なかね)　通(とお)り、

国(くに)中根(じゅうね)　通(とお)り、

５２３

十島(としま)　島(しま)大主(おそい)は、　　　　　　　　　　　

群(む)れ舞(ま)い　漕(こ)げ　綱(つな)は　強(つよ)く

「エヤレ」　大主(おおぬし)は　強(つよ)く　　　　　　　　　　

聞(きこ)え国治人(くにせりきよ)、　　　　　　　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５２４

聞(きこ)え蒲(こ)葵(ば)治人(せりきよ)、　　　　　　　　　

「エ　ヤレ　ケ」

鳴(と)響(よ)む蒲(こ)葵(ば)治人(せりきよ)、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

船(ふな)材木(ざいもく)は　潟(かた)原(ばる)に、　　　　　　　

船(ふね)木材(もくざい)は　潟(かた)原(ばる)に、　　　　　　　

細波(さざなみ)　立(た)てば、　　　　　　　　　

夫婦波(めおとなみ)　立(た)てば、　　　　　　　　

鈴(すず)鳴(な)りの　すれば、　　　　　　

金(かね)鳴(な)りの　すれば、　　　　　　

百人(ももそ)　矛(ほこ)　持(も)たせて、　　　　　　

七十人(ななそ)　弓(ゆみ)　持(も)たせて、　　　　　

百人(ももそ)　先立(さきだ)たせて、

七十人(ななそ)　先立(さきだ)たせて、

東(ひがし)に　歩(あゆ)み、

太陽(てだ)が穴(あな)に　歩(あゆ)み、　　　　　　　

５２５

首里(しゅり)の真(ま)民(たみ)　清(きよ)き真(ま)民(たみ)、

まことに　世(よ)守(まも)る

グスク真(ま)民(たみ)　清(きよ)き真(ま)民(たみ)、

玉(たま)纏(まき)　選(えら)び　差(さ)させて、　　　　　　

鎧(よろい)　選(えら)び　着(き)せて、

嶺間(みねま)小坂(こさか)　七十人(ななそ)　倒(たお)して、　　　　

儀(ぎ)保(ぼ)小坂(こさか)　百人(ももそ)　倒(たお)して、　　　　　

これぞ　首里(しゅり)、

これぞ　グスク、

首里(しゅり)　います　按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　

グスク　います　按司(あんじ)大主(おそい)、

５２６

大主(おおぬし)が　精(せじ)　新精(あらせじ)、　　　　　　　　　

知(し)られる　まこと　又(また)樽(たる)を　　　　　　　　　　　　　　　　　　

大主(おおぬし)が　魚(うお)取(と)り遊(あそ)び、

大主(おおぬし)が　海辺(うみべ)遊(あそ)び、

風(かぜ)　直(なお)す　精(せじ)　新精(あらせじ)、　　　　　　　　　　　　　　

海(うみ)　直(なお)す　精(せじ)　新精(あらせじ)、　　　　　　　　　　　　　　

数(かず)知(し)らぬ　御船(みふね)こそ　押(お)し浮(う)かべ、

数(かず)知(し)らぬ　大船(おおふね)こそ　押(お)し浮(う)かべ、

５２７

首里(しゅり)国(くに)なる按司(あんじ)、

グスク国(くに)なる按司(あんじ)、

首里(しゅり)　います　按司(あんじ)大主(おそい)、　　　　　　　　　　　　　　

グスク　います　按司(あんじ)大主(おそい)、

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

大君(おおきみ)を　崇(あが)めて、

国(くに)守(もり)を　崇(あが)めて、

上下(かみしも)は　集(つど)いて、

離(はな)れ島(じま)は　揃(そろ)いて、

石割(いしわり)は　好(この)み、　　　　　　　　　　　　

金(かな)割(わり)は　好(この)み、　　　　　　　　　　　　

石材(いしざい)を　織(お)り上(あ)げて、　　　　　　　　　　

真(ま)石材(いしざい)を　積(つ)み上(あ)げて、　　　　　　　　

波(なみの)上(うえ)を　造(つく)り、

端(はな)グスク　造(つく)り、　　　　　　　　　　

神参(かみまい)り　しまして、

宮参(みやまい)り　しまして、

神(かみ)も　誇(ほこ)りまして、

権現(ごんげん)も　誇(ほこ)りまして、　　　　　　　　　

５２８

里(さと)志(し)鯉(こい)様(じゃる)よ、　　　　　　　　

「エ　ケ　ヤレ」

吾(われ)の鯉(こい)様(じゃる)よ、　　　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)　押(お)し浮(う)かべ、　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)　押(お)し浮(う)かべ、　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５３０

愛(いと)しい神女(かみ)　清(きよ)き神女(かみ)、　　　　　

煽(あお)り　漕(こ)がせよ　斑(まだら)丸(まる)　　　　

雲(くも)は　来(き)遣(や)り

金島(こがねしま)　走(はし)られて　　　　　　

神(の)女(ろ)愛(いと)しい　神女(のろ)清(きよ)し、　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５３１

「エ　ケ」　東(ひがし)の　朝(あさ)の日(ひ)、

「エ　ケ」　咲(さ)き渡(わた)る桜(さくら)

しけしけと　降(お)り差(さ)して

今日(きょう)より　相(あい)照(て)ります

「エ　ケ」　太陽(てだ)の穴(あな)の　朝(あさ)の日(ひ)、　　　　　　　　　

「エ　ケ」　朝凪(あさなぎ)が　すれば、

「エ　ケ」　夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

「エ　ケ」　板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　

「エ　ケ」　棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　

「エ　ケ」　船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

「エ　ケ」　船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５３２

「エ　ケ　ヨウ」　聞(きこ)え植(おわ)守(もり)は、　　　　　　　　　　　　

「エ　ケ　ヨウ」　島(しま)世(よ)　討(う)ち取(と)られて

「エ　ケ　ヨウ」　鳴(と)響(よ)む植(おわ)守(もり)は、

「エ　ケ　ヨウ」　今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

「エ　ケ　ヨウ」　今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

「エ　ケ　ヨウ」　聞(きこ)え按(あんじ)司(じ)大主(おそい)は、

「エ　ケ　ヨウ」　鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おおぬし)は、

「エ　ケ　ヨウ」　大君(おおきみ)を　崇(あが)めて、

「エ　ケ　ヨウ」　精(せ)高子(だかこ)を　崇(あが)めて、

５３３

聞(きこ)え蒲(こ)葵(ば)治人(せりきよ)、　　　　　　　　　　

首里(しゅり)の珍(めずら)しさ

鳴(と)響(よ)む蒲(こ)葵(ば)治人(せりきよ)、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　　　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５３４

「エ　ケ」　上(あ)がる三日月(みかづき)は、　　　　　　　

「エ　ケ」　神(かみ)の金(かな)真弓(まゆみ)　　　　　　　　　　

「エ　ケ」　上(あ)がる明星(あかぼし)は、　　　　　　　　

「エ　ケ」　神(かみ)の挿(さ)し櫛(ぐし)、

「エ　ケ」　上(あ)がる横雲(よこぐも)は、

「エ　ケ」　神(かみ)が愛(め)でる帯(おび)、　　　　　　　　　　

５３５

「アレヤ」　この　櫂(かい)取(と)り、　　　　　　　　　　　　　　　　　

「押(お)せよ」　この　櫂取(かいと)り、　　　　　　　　　　　　　　　　　

渡名喜(となき)女按司(おんなあんじ)の、　　　　　　　　　　　　

肝(きも)清(きよ)き女按(おんなあん)司(じ)の、　　　　　　　　　　　　　　　

おんな按司(あんじ)なれども、

おなご按司(あんじ)なれども、

女(め)童(わらべ)の　御衣(ころも)　選(えら)び、　　　　　　　　　　

若(わか)き女(おんな)の　御衣(ころも)　選(えら)び、　　　　　　　　　

織(お)り結(ゆ)いは　為(す)る　為(す)る、

稚児(ちご)結(ゆ)いは　為(す)る　為(す)る、　　　　　　　　　

赤木(あかぎ)櫂(がい)　突(つ)く　突(つ)く、　　　　　　　　　　　　

柞(よす)木(ぎ)櫂(かい)　突(つ)く　突(つ)く、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

十(と)櫂(かい)船(ぶね)　成(な)り、　　　　　　　　　　　　　　

八(や)櫂(かい)船(ぶね)　成(な)り、　　　　　　　　　　　　　　

５３６

皆(みな)に　真顔子(まちらす)が、　　　　　　　　　　　　　

果報(かほう)　百選(ももえらび)丸(まる)　　　　　　　　　　　　　　　

共(とも)に　真顔子(まちらす)が、　　　　　　　　　　　　　

渡嘉敷(とかしき)の吾(わ)が父(ちち)、　　　　　　　　　

鳴(な)り村(むら)の吾(わ)が父(ちち)、

鳴(な)り村(むら)の御船(みふね)、

百選(ももえらび)丸(まる)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　

八十選(やそえらび)丸(まる)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　

船頭(せど)好(この)む御船(みふね)、

主(ぬし)好(この)む御船(みふね)、

風(かぜ)　向(む)かい　湧(わ)き上(あ)がり、

北(きた)　向(む)かい　湧(わ)き上(あ)がり、

雨(あめ)　降(ふ)り遣(や)り　澄(す)み上(あ)がり、

天水(あまみず)　降(ふ)り　澄(す)み上(あ)がり、　　　　　

御参(おさん)嶽(だけ)　抜(ぬ)き当(あ)てよ、　　　　　　　

真(ま)東(こ)風(ち)穴(あな)　抜(ぬ)き当(あ)てよ、　　　　　　

５３７

海辺(うみべ)　綾(あや)の天(てん)、

君(きみ)が　畏(おそ)れたる

金(こがね)弓(ゆみ)　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　　　

雲(くも)辺(べ)　綾(あや)の天(てん)、

主(ぬし)が　畏(おそ)れたる

青雲(あおぐも)の鎧(よろい)は、

積(つ)み上(あ)げて　差(さ)し上(あ)げよ

魂(たま)の　精(せい)丸(まる)に、　　　　　　　　　　

積(つ)み直(なお)して　差(さ)し上(あ)げよ

５３８

伊敷(いしき)下(した)　世(よ)の果報(かほう)、　　　　　　　

寄(よ)せ着(つ)ける　泊(とまり)

愛(いと)し　金殿(かねどの)よ、　　　　　　　　　

石(いし)槌(つち)は　好(この)み、　　　　　　　　　

金槌(かなつち)は　好(この)み、　　　　　　　　　

伊敷(いしき)　寄(よ)り直(なお)して、

船(ふな)小屋(ごや)　寄(よ)り直(なお)して、

楠(くすのき)は　好(この)み、　　　　　　　　　　　

大和(やまと)旅(たび)　上(のぼ)り、

山城(やしろ)旅(たび)　上(のぼ)り、

勾玉(まがたま)買(か)いに　上(のぼ)り、　　　　　　　　

宝物(たからもの)買(か)いに　上(のぼ)り、　　　　　　　　

思(おも)う子(こ)の　為(ため)に、

割(わり)金(がね)が　為(ため)に、　　　　　　　　　　

５３９

伊敷索(いしきなわ)の鳴(と)響(よ)み浦(うら)、　　　　　　　　

喜(よろこ)び誇(ほこ)れる　清(きよ)らさ　　　　　　　　

新崎(あらさき)の鳴(と)響(よ)み浦(うら)、　　　　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

稲(いな)米(ごめ)を　降(お)ろして、　　　　　　　　

新米(にいまい)を　降(お)ろして、　　　　　　　　

５４０

平良(たいら)拵(こしらい)が、　　　　　　　　　　　　

降(お)り直(なお)せ　神(か)女(み)神女(がみ)　　　　　　　　　　　　　　

モリの拵(こしらい)が、　　　　　　　　　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

我謝(がじゃ)モリに　降(お)りられて、　　　　　　　

根立(ねだ)てモリに　降(お)りられて、

百人(ももそ)　引(ひ)きて　降(お)りられて、　　　　　

七十人(ななそ)　引(ひ)きて　降(お)りられて、　　　　

天(あま)御国(みや)の村(むら)　降(お)りられて、　　　　　　

去(し)行(ねり)国(や)の村(むら)　降(お)りられて、　　　　　　

首里(しゅり)モリ　降(お)りられて、

真玉(まだま)モリ　降(お)りられて、

５４１

大(おお)古里(ふるさと)の水寄思(みじよもい)、　　　　　　　

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて　走(はし)らせ

古里(ふるさと)の水寄思(みじよもい)、　　　　　　　　　

水寄思(みじよもい)が　初旅(はつたび)、　　　　　　　　

水寄思(みじよもい)が　新旅(にいたび)、　　　　　　　　

御酒盛(おさけも)り所(どころ)、　　　　　　　　　

御神酒盛(おみきも)り所(どころ)、

兄弟(きょうだい)は　謡(うた)いて、

乳兄弟(ちきょうだい)は　謡(うた)いて、

５４２

阿(あ)嘉(か)の御(お)祝付(えつき)が、　　　　　　　　

櫂(かい)取り、　　　　　　　　　　　　

饒波(ねは)の御(お)祝付(えつき)が、　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５４３

聞(きこ)え鬼(おに)の君(きみ)、

「エ　ヤレ」　楫(かじ)　取(と)れ

掛(か)けて　漕(こ)がせ

鳴(と)響(よ)む鬼(おに)の君(きみ)、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５４４

君(きみ)直(なおり)　若君(わかぎみ)、　　　　　　　　　　

うらうらと　押(お)せ

君(きみ)　若(わか)く　大君(おおきみ)、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５４５

首里(しゅり)行(ゆ)きたるが、

漕(こ)いで　来(き)たる　清(きよ)らさ

グスク行きたるが、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５４６

勝人(まさりきよ)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　　　　　　

「エ」　沖縄按司(おきなわあんじ)大主(おそい)こそ　います

浮揚(うきあがり)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　　　　　　

気(き)無(な)き手(て)と　思(おも)うな、

弱(よわ)き手(て)と　思(おも)うな、

下(しも)の世(よ)の主(ぬし)の　揃(そろ)い、

按司(あんじ)の中(なか)の按司(あんじ)の　揃(そろ)い、

真(ま)誇(ほこ)りの女按(おんなあん)司(じ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　

精(せじ)継(つ)ぎの女按(おんなあん)司(じ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

親(おや)の本貢(もとみつぎ)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　

先祖(せんぞ)の本貢(もとみつぎ)、　　　　　　　　　　　　　　　

乞(こ)いては　得(え)られず、

乞(こ)いては　佩(は)き召(め)されず、

隠(かく)して　得(え)たる、

盗(ぬす)み　佩(は)きたる、

酒(さけ)甕(がめ)に　入(い)れたる、　　　　　　　　

神酒(みき)甕(がめ)に　入(い)れたる、　　　　　　

５４７

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　

船遣(ふねや)り拍子(ひょうし)

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

月(つき)の清(きよ)らさよ、

太陽(てだ)の清(きよ)らさよ、　　　　　　　　　

５４８

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　

道(みち)を　歩(あゆ)む様(よう)に　漕(こ)がせ

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

飽(あ)かず遣(や)り添(そ)い、

東(ひがし)に　向(む)かい、

太陽(てだ)が穴(あな)に　向(む)かい、　　　　　　　

５４９

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

国(くに)高(たか)を　美(うつく)しき人(ひと)が　　　　　　　

玉寄(たまよ)せ御船(みふね)

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５５０

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

鳥(とり)が　飛(と)ぶ　島(しま)

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

５５１

外間(ほかま)大役人(おおやこ)が、　　　　　　　　　

静(しず)かに　押(お)せ　妻女(やちよく)等(ら)　　　　　　　

意地(いじ)気(き)大役人(おおやこ)が、　　　　　　　　

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

東(ひがし)に　歩(あゆ)みなさい、

太陽(てだ)が穴(あな)に　歩(あゆ)みなさい、　　　　　

５５２

明忍(あけしの)の神女(かみ)様(さま)が、　　　　　　　　　　　

「ヤレ　ケ」　美(うつく)しい小帆(さほ)　煽(あお)らせて　　　　　　

明忍(あけしの)の神女(かみ)様(さま)、　　　　　　　　　　　　

弱(なよ)笠(かさ)の　船頭(せど)　上手(じょうず)、　　　　　　　　　

袖(そで)清(きよら)が　水取(みずと)り　上手(じょうず)、　　　　　　　　

弱(なよ)笠(かさ)の　手取(てと)り　上手(じょうず)、

波(なみ)の手(て)は　船腹(ふなばら)に　撓(しな)い、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

風(かぜ)の手(て)は　帆(ほ)袋(ぶくろ)に　撓(しな)い、

上(じょう)の糸(いと)は、　　　　　　　　　　　　　　

縒(よ)り合(あ)わせ遣(や)り　水縄(みずなわ)する　　　　　　　　　

上(じょう)の糸(いと)は、　　　　　　　　　　　　　　

押(お)し合(あ)わせ遣(や)り　手縄(てなわ)する　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

５５３

世直(よなおし)が　御船(みふね)、　　　　　　　　　　　　

「エ　ケ　ヤレ　ケ」

神女(かみ)様(さま)が御船(みふね)、　　　　　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

浦(うら)廻(まわ)り　しまして、

崎廻(さきまわ)り　しまして、

東(ひがし)に　歩(あゆ)みなさい、

太陽(てだ)が穴(あな)に　歩(あゆ)みなさい、　　　　　　　　

５５４

聞(きこ)え押(おし)笠(かさ)、　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む押(おし)笠(かさ)

「ヤウラ」　押(お)して　使(つか)い

喜界(きかい)の浮島(うきしま)、　　　　　　　　

喜界(きかい)の盛島(もりしま)　　　　　　　

浮島(うきしま)からは、

辺留(へる)笠利(かさり)へと　　　　　

辺留(へる)笠利(かさり)から、

中瀬戸内(なかせとうち)へと　　　　　　

中瀬戸内(なかせとうち)から、

徳之島(とくのしま)へと　　　　　　　

徳之島(とくのしま)から、　　　　　　　

沖永(せり)良部(よさ)へと　　　　　

沖永(せり)良部(よさ)からは、

与論(かいふ)島(た)へと　　　　　　

与論(かいふ)島(た)からは、

安須(あす)モリへと　　　　　　

安須(あす)モリからは、

辺土名(へんとな)へと　　　　　　

辺土名(へんとな)からは、

崎(さき)がモリへと　　　　　　　

崎(さき)がモリから、

金比屋(かなひや)武(ぶ)へと　　　　　

金比屋(かなひや)武(ぶ)から、

崎(さき)枝(えだ)へと　　　　　　　

崎(さき)枝(えだ)から、

親(おや)泊(どまり)へと　　　　　　　

親(おや)泊(とまり)から、

首里(しゅり)モリへと

５５５

与論(かいふ)島(た)のおとこ等(ら)、　　　　　　　　

「ヤウラ」　押(お)せ　妻女(やちよく)等(ら)　　　　　　　　　　　

金(かな)モリのおとこ等(ら)、　　　　　　　　　　　　

おとこ等(ら)が　真(ま)庭(みや)に、