巻

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巻１３　舟歌(ふなうた)のおもろ御(おん)さうし

７４６

飽(あ)かず珍人(めずらしや)、

出(で)るごとに

見守(みまも)ってこそ　走(はし)らせよ

君(きみ)の珍人(めずらしや)、

　

７４７

押(お)し出(い)でたる　「エ」、

司子(つかさご)こそ　「エ」　　　　　　　　　　　　

吾(われ)は　祈(いの)り　走(はし)ります　「エ」

走(はし)り出(で)たる　「エ」、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば

７４８

遅(おく)れたるが　船遣(ふねや)り、

清(きよ)き勝(まさり)丸(まる)　　　　　　　　　　　　　　　　　　

押(お)し浮(う)かべれば

島(しま)よ　栄(は)えあれ

按司(あんじ)大主(おそい)が親御(おやみ)船(ふね)、

７４９

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　

親御(おやみ)船(ふね)は　走(はし)り来(き)ます

御馬(みうま)　走(はし)らせて　聞(き)こえさせよ

世(よ)の貢(みつぎ)

世(よ)の捧(ささ)げ　差(さ)し上(あ)げよ

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７５０

兄(あに)の大里(おおざと)が、　　　　　　　　　　　　　　　　

楫(かじ)　取(と)りたる　上手(うま)さよ　　　　　　　　　

大君(おおきみ)に　

真(ま)南風(はえ)は　乞(こ)いて　走(はし)らせ　　　　　　　　

良(よ)き大里(おおざと)が、

楫(かじ)　取(と)りたる

待(ま)ちかねたる　河(かわ)内(ち)丸(まる)、　　　　　　　　　　　　　　

袖(そで)　垂(た)れて　渡(わた)れる

７５１

首里(しゅり)　います　太(れ)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　　　　　

御船(みふね)の君(きみ)　押(お)し浮(う)かべ

百(もも)浦(うら)　添(そ)うて　玉(たま)の君(きみ)　使(つか)い

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７５２

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　

鈴(すず)丸(まる)の親御(おやみ)船(ふね)　　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)が　神事(かみごと)　取(と)り　走(はし)らせ　　　　　　　　　　　　　　

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、　

７５３

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　　　　　　

浮島(うきしま)　造(つく)り　　　　　　　　　　　　　　　

唐(とう)　南蛮(なんばん)　寄(よ)り合(あ)う　那覇(なは)泊(どまり)

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７５４

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、

みずから　立(た)ちまして

群れ鷹(むれだか)の　舞(ま)う様(よう)に　清(きよ)らさ

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７５５

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、

百(もも)浦(うら)大主(おそい)　造(つく)り　　　　　　　　　　　　　

走(はし)り戸(ど)　玉遣(たまや)り戸(ど)　見物(みもの)

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７５６

首里(しゅり)モリグスク、

中空(なかぞら)清(きよ)き御(お)城(しろ)

まさに　又(また)　上下(かみしも)　鳴(と)響(よ)め

真玉(まだま)モリグスク、

７５７

首里(しゅり)モリグスク、

雲風(くもかぜ)こそ　寄(よ)り添(そ)え

後(のち)が末(すえ)

精軍(せいくさ)　寄(よ)せるまい

真玉(まだま)モリグスク、

７５８

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、

造(つく)りたる　御船(みふね)

玉(たま)珍(めずら)丸(まる)　徳(とく)勝(まさり)丸(まる)　　　　　　　　　　

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７５９

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　

親御(おやみ)船(ふね)は　押(お)し浮(う)かべ

玉(たま)御酌(みしゃく)　渡(わた)します　　　　　　　　　　

尚(おぎ)真(やか)王(もい)が局(つぼね)　玉(たま)柄杓(ひしゃく)　　　　　　　　　

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７６０

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、

船(ふな)接(は)ぎ大工(だいく)　集(あつ)めて　　　　　　　　　

羽(はね)撃(う)ちする子(こ)隼(はやぶさ)　育(そだ)てて　　　　　　　

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

７６１

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、

唐(とう)の道　開(あ)けられて

王様(おうさま)は　何代(なんだい)も　こう　ある

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

正徳(しょうとく)１２年(ねん)（１５１７年(ねん)）１１月(がつ)２５日(にち)、丁（ひのと）の酉（とり）の日(ひ)に、精(せじ)新丸(あらまる)、東南(とうなん)アジアに御使(みつか)い召(め)された時(とき)に、尚(しょう)真(しん)王(おう)、御(おん)みずからお召(め)しになられた時(とき)の歌(うた)。

７６２

大君(おおきみ)を　崇(あが)めて、　　　　　　　　　　　　

精(せじ)新(あら)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　

大君(おおきみ)に

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて　走(はし)らせ

精(せ)高子(だかこ)を　崇(あが)めて、

按司(あんじ)大主(おそい)が仰(おお)せ、

向(む)かう方(かた)　撓(しな)い　　　　　　　　　　　　　　　　　

尚(おぎ)真(やか)王(もい)が仰(おお)せ、　　　　　　　　　　

向(む)かう方(かた)　撓(しな)い

按司(あんじ)大主(おそい)が親御(おやみ)船(ふね)、

押(お)し浮(う)くたび　守(まも)りあれ

清(きよ)き精(せじ)新丸(あらまる)、

刳(く)り浮(う)くたび　守(まも)りあれ　　　　　　

群(む)れ島(しま)の神々(かみがみ)、

肝(きも)　揃(そろ)い　守(まも)りあれ

君(きみ)南風(はえ)は　崇(あが)めて、　　　　　　　　

精(せじ)新丸(あらまる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　

神(の)女(ろ)神女(のろ)を　崇(あが)めて、　　　　　　　

嘉(か)靖(せい)３２年(ねん)、５月(がつ)４日(よっか)、己（つちのと）の酉（とり）。屋(や)良座(らざ)モリの野(の)祓(はら)いの時(とき)に君(きみ)真物(まもの)の御前(みまえ)より拝(おが)み申(もう)す。尚(しょう)清(せい)王(おう)、天(てん)の世(よ)のために、船(ふね)を造(つく)り下(くだ)さる。屋(や)富(ふ)祖(そ)の大親(おや)雲上(くもい)、越来(ごえく)の大親(おや)雲上(くもい)、国場(こくば)の大親(おや)雲上(くもい)、国吉(くによし)の大親(おや)雲上(くもい)。

７６３

尚(あま)清(つ)王(ぎ)の御仰(みおお)せ、　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)を　崇(あが)めて　

屋(や)良座(らざ)モリ　石垣(いしがき)は　織(お)り上(あ)げて　　　　　　

十百(ともも)末(すえ)　精軍(せじいくさ)　寄(よ)せるまい　　　　　　　　

王様(おうさま)の御心(みこころ)、

精(せ)高子(だかこ)は　祈(いの)り立(た)て

八重座(やえざ)モリ　真(ま)石垣(いしがき)は　積(つ)み上(あ)げて　　　　　

十百(ともも)末(すえ)　　　　　　　　　　　　　　　　　

聞(きこ)え尚(あま)清(つ)王(ぎ)の、

世(よ)の思(おも)い　召(め)されて

沖(おき)の澪(みお)　石垣(いしがき)は　織(お)り上(あ)げて　　　　　　　　　

十百(ともも)末(すえ)

鳴(と)響(よ)む王様(おうさま)の、

世(よ)の思(おも)い　召(め)されて

沖(おき)の海(うみ)の　真(ま)石垣(いしがき)は　積(つ)み上(あ)げて

十百(ともも)末(すえ)

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

屋(や)良座(らざ)モリ　いまして

聖(せい)なる杭(くい)　打(う)たれて

十百(ともも)末(すえ)

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

八重座(やえざ)モリ　いまして

霊(れい)なる草(くさ)　留(とど)めれば

十百(ともも)末(すえ)

７６４

赤(あか)金(がね)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　　

清(きよ)き金丸(かなまる)　　　　　　　　　　　　　　　　　

大君(おおきみ)に

真(ま)南風(はえ)　乞(こ)いて　走(はし)らせ

清(きよ)き金丸(かなまる)、

赤(あか)金(がね)は　船頭(せど)　なされ

唐(とう)の道(みち)　出(で)て　走(はし)りますれば、

唐(とう)の菩薩(ぼさつ)　崇(あが)めて

７６５

押(おし)角(かど)が　きらめき、　　　　　　　

宝船(たからぶね)　鳴(と)響(よ)み

浮(う)くごとに

大国(おおくに)丸(まる)　御船(みふね)

神女(かみ)様(さま)が　きらめき、

７６６

揚(あ)がる世寄(よよせ)君(ぎみ)　憑(つ)き女(め)、　　　　　　　　　

兄弟(きょうだい)なる太陽(てるか)神(わ)に　　　　　　　　　　　　　　　　　

大国(おおくに)　選(えら)び　使(つか)い

君(きみ)の世寄(よよせ)君(ぎみ)、

７６７

御宣人(みぜりきよ)が　きらめき、　　　　　　　　

金(かね)冑(かぶと)　造(つく)り　　　　　　　　　　　　

金(かな)福(ふく)に　きらめかす　清(きよ)らさ　　　　　

神女(かみ)様(さま)が　きらめき、　　　　　　　　

７６８

御宣人(みぜりきよ)が　きらめき、　　　　　　　　　

清(きよ)き勝(まさり)丸(まる)　　　　　　　　　　　　　　　　　

船遣(ふねや)り　造(つく)り　差(さ)し上(あ)げよ

神女(かみ)様(さま)が　きらめき、　　　　　　　　　

７６９

御宣人(みぜりきよ)が　きらめき、　　　　　　　　　　　

神女(かみ)様(さま)が　きらめき　　　　　　　　　　　　

「デ」　吾(われ)　これを　言(い)って　走(はし)らせ

選(えら)び　選(えら)び　選(えら)ぶ、

百(もも)選(えら)びの　御船(みふね)　　　　　　　　　　　　　　

選(えら)び　選(えら)び　選(えら)ぶ、

八十(やそ)選(えら)びの　親御(おやみ)船(ふね)　　　　　　　　　　　　

百人(ももそ)　乗(の)る　船子(ふなこ)、　　　　　　　　　　　　

七十人(ななそ)　乗(の)る　船子(ふなこ)　　　　　　　　　　　　

優(すぐ)れたおとこ等(ら)が、　　　　　　　　　　　　

一(いち)の楫(かじ)　真(ま)強(づよ)く　　　　　　　　　　　　　　　　　

蒲(こ)葵(ば)島(しま)の神(か)女(み)神女(がみ)、　　　　　　　　　　　　

いまして　守(まも)りなさい

津(つ)堅(けん)島(じま)の神(かみ)女神女(がみ)、　　　　　　　　　　　　

那覇(なは)泊(どまり)　抜(ぬ)き当(あ)てて、

親(おや)泊(どまり)　抜(ぬ)き当(あ)てて　　　　　　　　　　　　　

７７０

御宣人(みぜりきよ)が、　　　　　　　　　　　　　　　　

まさに　走(はし)ります

我(わ)が浦(うら)の　珍(めずら)しさ

速(はや)く　走(はし)り競(きそ)え

神女(かみ)様(さま)が、　　　　　　　　　　　　　　　

まさに　走(はし)り寄(よ)る

７７１

沖縄(おきなわ)が　きらめき、

神女(かみ)様(さま)が　きらめき　　　　　　

京(きょう)を　見(み)て

百度(ももと)　見(み)たくあれ　　　　　

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は

渡名喜(となき)　橋(はし)　しまして、　　　　

慶良間(けらま)　淀(よど)　しまして　　　　　

渡嘉敷(とかしき)に　いまして、　　　　　

岬(みさき)まで　いまして

７７２

精(せじ)の沖縄(おきなわ)は、　　　　　　　　　

撓(しな)い神女(かみ)なれば　　　　　　　　

掛(か)けて　勝(まさ)ります

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は

島(しま)大主(おそい)に　ありまして、　　　　

金(かな)福(ふく)は　造(つく)り　　　　　　　　

垂(た)世(り)国(よ)から　聞(き)けば、　　　　　　

京(きょう)踊(おど)りは　勝(まさ)り

７７３

沖縄(おきなわ)が　きらめき、

神女(かみ)様が　きらめき　　　　　　

この世(よ)　添(そ)うて　直(なお)しなさい

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)は、

７７４

久米(くめ)の山城(やまぐすく)、　　　　　　　　　

清(きよ)き山城(やまぐすく)

清(きよ)く栄(は)えますモリ

昔(むかし)　神(かみ)の嶽(たけ)、

今(いま)は　神女(のろ)の嶽(たけ)　　　　　　　　　　

７７５

御役人(おきて)笑人(わらいきよ)、　　　　　　　　　

父(ちち)なる主(ぬし)様(さま)　来(こ)よ　　　　　　　　　　　

尊(とうと)き叔父(おじ)様(さま)　「エ」　踊(おど)れ　　　　　　　　

声(こい)忍(しの)を　崇(あが)めて、　　　　　　　

神女(かみ)様(さま)は　崇(あが)めて　　　　　　　

真(ま)北風(にし)　乞(こ)いなさい、　　　　　　

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いなさい

７７６

由良(ゆら)金(がね)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　

遣(やらい)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　

迎(むか)え　誇(ほこ)れ　　　　

伊是名(いぜな)の由良(ゆら)金(がね)、　　　　　　　

吾(わ)が人(ひと)が　使(つか)いする、

良(よ)き人(ひと)が　使(つか)いする、

７７７

弱倉(なよくら)の神女(のろ)の、　　　　　　　　

歓(あまえ)丸(まる)　貢(みつぎ)　積(つ)み　差(さ)し上(あ)げよ　　　

若(わか)神女(のろ)は　勝(まさ)り、　　　　　　　

綾(あや)の筵(むしろ)　打(う)たれて、　　　　　　

藺(い)草(ぐさ)　乞(こ)いて　打(う)たれて、　　　

７７８

ますます　珍(めずら)しさ、　　　　　　　　

神(かみ)の事(こと)　降(お)りられて　　　　　　　

清(きよ)らさ　モリグスク

姉妹(おなり)神(がみ)なれば、　　　　　　　　

大祖父(おおおや)が、　　　　　　　　　　

境(さかい)　飛(と)び越(こ)えて

７７９

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、　　　　　　　　

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が

御気満鳴(うけみつなり)鼓(つづみ)　付(つ)けよ　　　　　　

綾(あや)嶺(みね)に　在(あ)る、　　　　　　　

大祖父(おおおじ)が　植木(うえき)　　　　　　　　

山(やま)の鵯(ひよどり)は、　　　　　　　　　　　　

御気(みけ)　取(と)り遣(や)り　吹(ふ)く様(よう)に　　　

７８０

真(ま)南風(はえ)鈴鳴(すずなり)丸(まる)、　　　　　　　　

真南風(まはえ)　さらめけば

唐(とう)　南蛮(なんばん)

貢(みつぎ)　積(つ)み　差(さ)し上(あ)げよ

追手(おいて)鈴鳴(すずなり)丸(まる)、　　　　　　　　　

追(お)い風(かぜ)　さらめけば

７８１

弱倉(なよくら)が　きらめき、　　　　　　　　

精(せ)高子(だかこ)が　言(い)いて　差(さ)し上(あ)げよ

名(な)　揚(あ)げられよ　精(せ)高子(だかこ)

上下(かみしも)の事(こと)も、　　　　　　　　　　　

精(せ)高子(だかこ)に　言(い)いて　差(さ)し上(あ)げよ

７８２

久米(くめ)の当山(とうやま)に、　　　　　　　　　　

植(う)えて　在(あ)る

麗(うるわ)しい御気満鳴(おけみつなり)大主(おそい)鼓(つづみ)　　　　　　　　　　

離(はな)れ当山(とうやま)に、

宇根(うね)に　居(い)て　打(う)てば　　　　　　　

大里(おおざと)に　鳴(と)響(よ)む　　　　　　　　　　

７８３

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が

これこそ　まこと　京(きょう)の真金人(まかねひと)　　　　　　　　　　　　　　　　　

具志川(ぐしかわ)の泊(とまり)　果報(かほう)寄(よ)る、　　　　　　

大和(やまと)おとこ船頭(せど)、　　　　　　　　　　　　　　　　

知(し)られては　走(はし)らせたい

７８４

久米(くめ)の若(わか)清(きよら)が、　　　　　　　　　

何(なに)を　好(この)み　いますか

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて

照(てる)妃(きさき)　つかい　　　　　　　　　　

離(はな)れ若(わか)清(きよら)が、

７８５

聞(きこ)え精(せの)君(きみ)が、　　　　　　　　　　　　　　　

声(こい)忍(しの)　東(ひがし)の　　　　　　　　　　　　　　

三島(みしま)　四島(よしま)からこそ　美(うつく)しくある

鳴(と)響(よ)む精(せの)君(きみ)が、

声(こい)忍(しの)

伊敷索(いしきなわ)真庭(まみや)に、　　　　　　　　　　　　

美(うつく)しい造(つく)り　有(あ)ります

７８６

聞(きこ)え精(せの)君(きみ)が、　　　　　　　　　

浦走(うらはり)丸(まる)　見物(みもの)　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せの)君(きみ)が、

７８７　

聞(きこ)え精(せの)君(きみ)と、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

干(ひ)瀬(せ)　取(と)り交(か)わして　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せの)君(きみ)と、

精(せの)君(きみ)の御船(みふね)は、

鷲(わし)舞(まやい)丸(まる)　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)の御船(みふね)は、

清(きよ)き島討(しまうち)丸(まる)　　　　　　　　　　　

鷲(わし)舞(まやい)丸(まる)と、

清(きよ)き島討(しまうち)丸(まる)と

７８８

聞(きこ)え精(せの)君(きみ)が、

綾(あや)の競(きそ)い　見物(みもの)　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せの)君(きみ)が、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

７８９

鈴鳴(すずなり)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　　　　

静(しず)かに　押(お)して　若(わか)き人(ひと)　使(つか)い

神女(かみ)様(さま)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　　　

強(つよ)き木(き)は　上(じょう)御船(みふね)　　　　　　　　　　　　　　　　　

正(まさ)の木(き)は　上(じょう)御船(みふね)、

７９０

鈴(すず)金(かね)が　神女(かみ)様(さま)　きらめき、　　　　　　

歩(あゆ)ませて　見物(みもの)　清(きよ)らさ

頭(かしら)黒親御(くろおやみ)船(ふね)は、　　　　　　　　　　　　

押(お)し浮(う)かべ

按司(あんじ)御船(みふね)は、

金柱(こがねばしら)　押(お)し立(た)て　　　　　　　　　　　　

役人(やくにん)御船(みふね)は、　　　　　　　　　　　　　

黄金柱(こがねばしら)　押(お)し立(た)て　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)御船(みふね)は、

真(ま)布(ぬの)帆(ほ)を　引(ひ)き立(た)て　　　　　　　　　　

役人(やくにん)御船(みふね)、　　　　　　　　　　　　　　

棕櫚(しゅろ)木(き)帆(ほ)　　　　　　　　　　　　　　　

７９１

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、

夫人(おとちよ)モリ　使(つか)わし　　　　　　　　　　　　

聞(きこ)え黒仮屋(くろかりや)を　　　　　　　　　　　　　　　

取(と)り遣(や)られて　栄(は)えて

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、

７９２

五子(ごく)のおとこ等(ら)よ、　　　　　　　　　　

浮(うき)清(きよら)丸(まる)　走(はし)らせて　　　　　　　　　　　

太郎子(たらこ)　愛(あい)する人(ひと)、　　　　　　　　　

声(こい)忍(しの)を　崇(あが)めて、

姉妹(おなり)神(がみ)　崇(あが)めて、　　　　　　　　　　　

東嶽(ひがだけ)　上(のぼ)り、　　　　　　　　　　

奥(おく)口(ぐち)　上(のぼ)り、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

良(よ)き木(き)は　選(えら)び、

輝(かがや)く木(き)は　選(えら)び、

本付(もとつ)け縄(なわ)　付(つ)けて、

山付(やまつ)け縄(なわ)　付(つ)けて、

梢(こずえ)からの　速(はや)御船(みふね)、　　　　　　　

末(すえ)からの　速(はや)御船(みふね)、

那覇(なは)泊(どまり)　走(はし)り合(あ)えば、

親(おや)泊(どまり)　走(はし)り合(あ)えば、　　　　　　　

百(もも)御船(みふね)　船先(ふなさき)、　　　　　　　　　

八十(やそ)御船(みふね)　船先(ふなさき)、　　　　　　　　

７９３

聞(きこ)え植(おわ)守(もり)は、　　　　　　　　　　　　

浮(うき)清(きよら)丸(まる)　走(はし)らせて　「エ」　　　　

送(おく)れ　妻女(やちよこ)　　　　　　　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む植(おわ)守(もり)は、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

７９４

吾(われ)らがおとこ等(ら)、

吾(われ)らが愛(あい)する人(ひと)

親(おや)の神(かみ)なれば、

姉妹(おなり)神(がみ)なれば　　　　　　　　　　

降(お)りるごと　寄(よ)せて、

遊(あそ)ぶごと　寄(よ)せて

東(ひがし)の御島(みしま)、

何(なん)の　貢(みつぎ)　有(あ)るのだろう

太陽(てだ)が穴(あな)の御(み)島(しま)、　　　　　　　　

何(なん)の　捧(ささ)げ　有(あ)るのだろう　

７９５

泊(とまり)御宣人(みぜりきよ)　　　　　　　　　　

そよらそよら　走(はし)らせて

静(しず)かな御宣(みぜり)人(きよ)　　　　　　　　　　　

泊(とまり)綾庭(あやみや)に　　　　　　　　　　　　

静(しず)かな綾(あや)庭(みや)に

百(もも)甕(かめ)は　据(す)えて　　　　　　　　　

八十(やそ)甕(かめ)は　据(す)えて　　　　　　　　

神(かみ)　誇(ほこ)る　素焼子(そやけこ)　　　　　　　　　　　　　　

誰(だれ)が　誇(ほこ)る　素焼子(そやけこ)

神(かみ)　誇(ほこ)ってから

誰(だれ)が　誇(ほこ)ってから

三日月(みかづき)の　満(み)つる様(よう)に

四(よっ)日月(かづき)の　満(み)つる様(よう)に

７９６

植(おわ)守(もり)が　　　　　　　　　　　　

京(きょうの)君(きみ)丸(まる)　喜(よろこ)んで　　　　　　　　　

群(む)れ舞(ま)い　走(はし)られれば

天降(ており)丸(まる)は　　　　　　　　　　　

聖域降(しけおり)丸(まる)は　　　　　　　　　　

押(お)し浮(う)かべられ

刳(く)り浮(う)かべられ

７９７

聖域(しけ)掛(が)けの神女(かみ)様(さま)が　船遣(ふねや)り　　　　

大旗(おおはた)の

踊(おど)ります　清(きよ)らさ

吾(わ)が人(ひと)は　

愛(いと)しい子(こ)は　船頭(せど)　して　　　　　　　

夜明(よあ)け　出(で)て

明(あ)か月(つき)に　走(はし)らせれば

拝(おが)み　出(で)て

岬(みさき)　出(で)て　走(はし)らせれば

７９８

泊御宣人(とまりみぜりきよ)を　　　　　　　　　　　　　　

静(しず)かな御宣(みぜり)人(きよ)を　　　　　　　　　　　　　

赤色(あか)冠(べ)を　良(よ)く　走(はし)り　喜(よろこ)ばせ　　　　　　

首里(しゅり)神女(のろ)　崇(あが)めて　　　　　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

出(で)ていると　知(し)らせて

走(はし)っていると　知(し)らせて

泊(とまり)　知(し)らなくても

口(くち)は　知(し)らなくても

差(さ)し廻(まわ)し　入(い)れて

抜(ぬ)き廻(まわ)し　入(い)れて　

７９９

艫添(ともぞい)が愛(いと)しい人(ひと)　　　　　　　　　　

宣(のり)人(ひと)丸(まる)　　　　　　　　　　　　　

雲風(くもかぜ)の　立(た)ち直(なお)る　清(きよ)らさ

神女(かみ)様(さま)が愛(いと)しい人(ひと)　　　　　　　　　　

８００

艫添(ともぞい)が愛(いと)しい人(ひと)　　　　　　　　　　

立(た)ち愛(め)でて　守(まも)りなさい　　　　　　　　

世(よ)守(まも)る　精(せじ)　　　　　　　　　　　　　　

精(せじ)勝(まさ)る若(わか)き人(ひと)　　　　　　　　　　　

神女(かみ)様(さま)が愛(いと)しい人(ひと)　　　　　　　　　　

８０１

世直(よなおさ)が御船(みふね)　　　　　　　　　　　

「エ　ケ　ヤレ　エ　ケ」

神女(かみ)様(さま)が　御船(みふね)　　　　　　　　　　

真南風(まはえ)　美(うつく)しき南風(はえ)の　　　　　　　　　　

やわやわと　押(お)して　来(こ)よ

８０２

見果(みる)国(や)　照(て)る　照(て)り揚(あ)がり　　　　　　　

照(て)り揚(あ)がる太陽(てだ)を　崇(あが)めて

按司(あんじ)大主(おそい)が　御使(みつか)いこそ　走(はし)ります

叶(か)願(な)国(や)　照(て)る　照(て)り揚(あ)がり　　　　　　　

８０３

上(あ)がる太陽(てだ)拝(おが)みは　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ　拝(おが)みます

開(あ)ける日(ひ)は　御顔(みかお)こそ　拝(おが)みます　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

上(あ)がる月(つき)拝(おが)みは

８０４

輝(かがや)く仲地(なかち)様(さま)が　　　　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)　選(えら)ぶ　御船(みふね)

神(かみ)太陽(てだ)の　守(まも)ります御船(みふね)　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)が親御(おやみ)船(ふね)

８０５

御宣人(みぜりきよ)が　輝(かがや)き　　　　　　　　　　　　

船先(ふなさき)　露(つゆ)　付(つ)けず　走(はし)らせよ

神女(かみ)様(さま)が　輝(かがや)き　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)が御船(みふね)は

８０６

押引(おしやへこ)が　船遣(ふねや)り　「エ」　　　　　

煽(あおり)八重(やえ)が　張(は)り綱(づな)は　強(つよ)く　　　　　　

神女(かみ)様(さま)が　船遣(ふねや)り　　　　　　　　　　　

８０７

河内(かわち)鈴(すず)丸(まる)が

神々(かみがみ)　喜(よろこ)び　　　　　　　　　　　　　　　　

誇(ほこ)り　走(はし)らせなさい

見物(みもの)鈴(すず)丸(まる)が

神々(かみがみ)

８０８

捌人(さわちきよ)が　船遣(ふねや)り　　　　　　　　　　　　

御船(みふね)　暗波(くらなみ)

夜露(よつゆ)は　掛(か)けないで　走(はし)らせよ　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)が親御(おやみ)船(ふね)

８０９

親捌(おやさわち)　音(ね)　取(と)らせて、　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)に　撓(しな)い

思(おも)う様(よう)に

浮(う)き揚(あ)がり遣(や)り　ください

この渡(と)　立(た)つ　青波(あおなみ)は、　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)に　撓(しな)い

８１０

久米(くめ)の声(こい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　　　

国(くに)高若人(たかわかきよ)が　　　　　　　　　　　

玉(たま)を寄(よ)せる御船(みふね)　　　　　　　　　　　　

百(もも)浦声(うらこい)忍(しの)が、

国(くに)高(たか)

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

８１１

大(おお)北風(にし)の浦走(うらはり)丸(まる)、　　　　　　　　　　

弱倉(なよくら)の　手(て)　摩(す)り　走(はし)ります　　　　　

崎(さき)枝(えだ)の浦走(うらはり)丸(まる)、　　　　　　　　　　　

８１２

大北風(おおにし)に　鳴(と)響(よ)む、　　　　　　　　　

聞(きこ)え弱倉(なよくら)

弱倉(なよくら)　手(て)　摩(す)り　走(はし)ります

崎(さき)枝(えだ)に　鳴(と)響(よ)む、

８１３

聞(きこ)え読谷山(よみたんざん)、　　　　　　　　　　　　　　

押上(おしあげ)丸(まる)　見(み)たくて　　　　　　　　　　　　　　　　

まこと　走(はし)り　来(き)たれ

鳴(と)響(よ)む読(よみ)谷山(たんざん)、

上(かみ)の船(ふね)　百(もも)御船(みふね)、　　　　　　　　　　

下(しも)の船(ふね)　八十(やそ)御船(みふね)、　　　　　　　　　

８１４

清(きよ)き大役人(おおやこ)が、　　　　　　　　　　　　　

瀬名波(せなは)御役人(おきて)　生(う)みまして　　　　　　

瀬名波(せなは)御役人(おきて)

夏(なつ)　満(み)ちて　こう　あり

瀬名波(せなば)大役人(おおやこ)が、　　　　　　　　　　

瀬名波(せなば)御役人(おきて)　生(う)みまして　　　　　　　　

８１５

伊江(いえ)の按(あん)司(じ)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　

押(おし)笠(かさ)に　知(し)られて　　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)選(えら)びが　船遣(ふねや)り、

８１６

伊江(いえ)の側人(はたころ)、　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)様(さま)　鳴思(なりおもい)　　　　　　　　　　　　　　　　

真(ま)羽地(はねじ)は　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

離(はな)れ　側人(はたころ)、　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)様(さま)　鳴思(なりおもい)

８１７

霜月(しもつき)が　立(た)てば、　　　　　　　　

吾(われ)は　待(ま)ちます

真羽地(まはねじ)　真羽地(まはねじ)は　　　　　　　　　

肝(きも)からも　去(さ)らぬ

若(わか)夏(なつ)が　立(た)てば、　　　　　　　　

８１８

安須(あす)モリの、　　　　　　　　　　

切(き)り口(くち)の

君(きみ)の喜(よろこ)び

清(きよ)き天降(ており)丸(まる)　　　　　　　　　　

いずこの里(さと)、

いずこの村(むら)　降(お)りますか

意地(いじ)気(き)村(むら)、

意気地里(いきじさと)　降(お)ります

８１９

東(ひがし)の司子(つかさご)、　　　　　　　　　　　

吾(わ)が拝(おが)む司子(つかさご)　　　　　　　　　　　

海(うみ)　凪(な)ぎらせ

風(かぜ)　直(なお)して　使(つか)い

太陽(てだ)が穴(あな)の司子(つかさご)、　　　　　　　　　

８２０

東(ひがし)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　　　

庭(にわ)の鳥(とり)の　佳声(かごえ)の　　　　　　　　　　　　　　　

うらうらと　聞(き)く　清(きよ)らさ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)の、　　　　　　　　

８２１

東(ひがし)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　　　

聞(き)き　見(み)たい　精(せじ)　　　　　　　　　　　

妻女(やちよこ)　おとこ　　　　　　　　　　　

揃(そろ)います　按司(あんじ)大主(おそい)

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

８２２

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

大主(おおぬし)の前(まえ)に

赤木(あかぎ)　柞(ゆす)木(ぎ)の花(はな)の　　　　　　　　　　

真白(ましら)　真赤(まあか)　咲(さ)きますれば

それを　取(と)り　折(お)り挿(さ)して

明(あ)けの　露(つゆ)に　濡(ぬ)れて

波(なみ)の踊(おど)りが　走(はし)りますれば

それ　見(み)にこそ　おとこ等(ら)

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

８２３

東(ひがし)の大主(おおぬし)が、

前(まえ)から　肝(きも)　揃(そろ)い

畏(おそ)れ多(おお)いと　知(し)られ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

８２４

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

天(てん)が下(した)の

按司(あんじ)　役人(やくにん)　侍(さむらい)は　　　　　　　　　　　　

御肝(おぎも)　なされ　直(なお)されて

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

８２５

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

明(あ)け斑(もどろ)　見(み)れば　　　　　　　　　　

鳳凰(ほうおう)の舞(ま)いこそ　見物(みもの)　　　　　　　　

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

８２６

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

命(いのち)大主(おそい)が　見物(みもの)

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

８２７

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

鳴(なり)清(きよら)鼓(つづみ)愛(がな)し　　　　　　　　　　　　

打(う)って　島(しま)　添(そ)えよ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

８２８

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

聞(きこ)え国(くに)治人(せりきよ)と　　　　　　　　　　　　　　

清(きよ)き帆(ほ)を　火照(ほて)らせて　　　　　　　　　　　　　　

照(てり)大主(おそい)が　見物(みもの)　　　　　　　　　　

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

虹(にじ)の海(うみ)縁(べり)へと、　　　　　　　　　　　　　

虹(にじ)の空(そら)縁(べり)へと、　　　　　　　　　　　　　

行(ゆ)き寄(よ)せる所(ところ)、

思(おも)い寄(よ)せる所(ところ)、

８２９

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

今帰仁(なきじん)　金比屋(かなひや)武(ぶ)　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)こそ

掛(か)けて　栄(は)えなさい

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

８３０

東(ひがし)の、

明(あ)け斑(もどろ)　立(た)てば　　　　　　　　　　　

走(はし)り戸(ど)　遣(や)り戸(ど)

押(お)し開(あ)けて

見物(みもの)　清(きよ)らさ

太陽(てだ)が穴(あな)の、

明(あ)け斑(もどろ)　立(た)てば

８３１

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

大主(おおぬし)が　好(この)みこそ

大船(おおふね)御船(みふね)　造(つく)り

御肝(おぎも)　撓(しな)う様(よう)に　走(はし)りなさい

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

８３２

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

清(きよ)き真帆(まほ)

押(お)し上(あ)げて　走(はし)らせよ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

８３３

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

鳴(なる)金(かね)の思(おも)う子(こ)　　　　　　　　　　

設(しつら)金(がね)　真(ま)雲(くも)に　　　　　　　　　　

思(おも)い人(びと)に　遣(や)り　　　　　　　　　

八声(やこえ)　すれば　　　　　　　　　　　

十声(とこえ)　すれば　急(いそ)ぎの使(つか)い　　　　　　　

太陽(てだ)が穴(あな)に　鳴(と)響(よ)みなさい、　　　　　

朝露(あさつゆ)は　蹴(け)り上(あ)げて、

夜露(よつゆ)は　蹴(け)り上(あ)げて

思(おも)い人(びと)に　通(かよ)い、　　　　　　　　　

恋(こ)い人(びと)に　通(かよ)い、　　　　　　　　　

８３４

地天鳴(ちてんと)響(よ)む大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　

清(きよ)らの花(はな)の

咲(さ)き渡(わた)る　見物(みもの)

天(てん)地鳴(ちと)響(よ)む大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　

８３５

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

天(てん)が下(した)

精(せじ)勝(まさ)る按(あん)司(じ)大主(おそい)

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

天(てん)が下(した)

聞(きこ)え国(くに)治人(せりきよ)が、　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　います、

真玉(まだま)モリ　います、

８３６

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

玉(たま)金(こがね)御内(みうち)に　　　　　　　　　　　

頼(たよ)り為(な)して　差(さ)し上(あ)げよ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

８３７

国(くに)笠(かさ)の親(おや)神女(のろ)は、　　　　　　　

船頭(せど)　して

清(きよ)き小帆(さほ)　　　　　　　　　　　　　

裏(うら)巻(ま)いて　走(はし)らせなさい

国(くに)笠(かさ)の若(わか)神女(のろ)は、

赤木(あかぎ)　取(と)り、

柞(ゆす)木(ぎ)　取(と)り　速(はや)く　　　　　

綾(あや)木(ぎ)　取(と)り、

稀(まれ)木(ぎ)　取(と)り　帆(ほ)走(ばし)りは　　　　　

上(じょう)の糸(いと)は、　　　　　　　　　　

真(ま)麻(あさ)の糸(いと)は　水縄(みずなわ)する

８３９

明忍(あけしの)の神女(かみ)様(さま)が、　　　　　　　

銀(しろがね)金(こがね)　寄(よ)らせて　　　　　　　　

走(はし)り寄(よ)る　清(きよ)らさ

弱(なよ)笠(かさ)の神女(のろ)様(さま)が、　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

８４０

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

御神酒(おみき)　差(さ)し上(あ)げれば　走(はし)らせよ

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４１

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

大国(おおくに)　愛(いと)しくて

上下(かみしも)の貢(みつぎ)

積(つ)み　差(さ)し上(あ)げよ

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４２

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

上下(かみしも)　鳴(と)響(よ)む　御殿(おどの)　造(つく)り

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４３

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、　　　　　　　　　　

御羽根(みはね)着物(きもの)　乞(こ)いまして　　　　

雲風(くもかぜ)　撓(しな)いて　走(はし)らせ　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４４

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

蒲(こ)葵(ば)モリ　金(かな)モリ　　　　　　　　　　　　　　

見(み)たい　神(かみ)グスク　　　　　　

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４５

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

東(ひがし)の蒲(こ)葵(ば)モリ　　　　　　　　　　　　

蒲(こ)葵(ば)の花(はな)の　咲(さ)いていれば　　　

うらうらと

若君(わかぎみ)　使(つか)い

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４６

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、　　　　　　　　　　　

肝(きも)　揃(そろ)え

貴(たか)き人(ひと)　前(まえ)へと

天(てん)が下(した)　頼(たよ)り為(な)して　ください

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４７

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

斎場(せーふぁ)嶽(だけ)　降(お)りられて　　　　　　　　　

蜻蛉(あけず)御衣(ころも)　召(め)しまして　　　　　　　

鷲(わし)の羽根(はね)　挿(さ)しまして

波(なみ)轟(とどろ)　海(うみ)轟(とどろ)　　　　　　　　　　　　

押(お)し浮(う)かべ

百名(ひゃくな)の　浦走(うらばし)り　見物(みもの)

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４８

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

青(あお)き御衣(ころも)　召(め)しまして　　　　　　　

波(なみ)の花(はな)　添(そ)いまして

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

８４９

煽拵(あおりこしり)八重(やえ)は、　　　　　　　　

船頭(せど)　しまして

植(おわ)守(もり)が前(まえ)へと　　　　　　　　

君(きみ)の拵(こしり)八重(やえ)は、　　　　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　

８５０

月代(つきしろ)の　大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

菊(きく)柳(やなぎ)嶽(だけ)から　　　　　　　　　　　

山(やま)の端(は)　照(て)り輝(かがや)き　　　　　　　　

上(あ)がり　照(て)る月(つき)こそ

吾(わ)が父(ちち)が

形見(かたみ)　　　　　　　　　　　　　　

名残(なごり)　「エ」　上(あ)がる様(よう)に　　　　

永(え)良部(らぶ)　照(て)る月(つき)こそ、　　　　　　

８５２

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、　　　　　　　　　　　　

精遣(せいやり)丸(まる)　召(め)しまして　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

斎場(せーふぁ)嶽(だけ)　君(きみ)君(ぎみ)こそ　迎(むか)え　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

天降(ており)丸(まる)　召(め)しまして　　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

斎場(せーふぁ)嶽(だけ)　君(きみ)君(ぎみ)こそ　迎(むか)え

聞(きこ)え按(あん)司(じ)大主(おそい)、

栄(ふさい)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

斉場(せーふぁ)嶽(だけ)　君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)が、

精遣(せいやり)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

斎場(せーふぁ)嶽(だけ)　君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

８５３

精(せじ)新神(あらがみ)泊(とまり)、　　　　　　　　　　　　

雲子寄(くもこよせ)泊(とまり)　　　　　　　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

斉場(せーふぁ)嶽(だけ)　君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

精遣(せいやり)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

安須(あす)モリの君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ　　　　　　

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

栄(ふさい)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

東(ひがし)の君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

海直(うみなお)し柱(ばしら)　立(た)てて、　　　　　　　　

波(なみ)丸(まる)は　押掛(おしか)け　　　　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

浦(うら)ごとに　君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

鷲(わし)の羽根(はね)　煽(あお)らせて、

赤(あか)の御衣(ころも)　煽(あお)らせて　　　　　　　　　　

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

浦(うら)ごとに　君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)れ

蒲(こ)葵(ば)モリの君(きみ)君(ぎみ)、　　　　　　　　　　

舞(ま)い合(あ)い　送(おく)ろう

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

首里(しゅり)モリ　君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)ろう

金(かな)モリの君(きみ)君(ぎみ)、　　　　　　　　　　　

舞(ま)い合(あ)い　送(おく)ろう

波風(なみかぜ)　和(なご)ませて

真玉(まだま)モリ　君(きみ)君(ぎみ)こそ　守(まも)ろう

８５４

首里(しゅり)モリ　います、

聞(きこ)え按司(あんじ)大主(おそい)

精遣(せいやり)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　

蒲(こ)葵(ば)モリ　いまして　　　　　　　

百歳(ひゃくさい)精(せじ)　按司(あんじ)に　差(さ)し上(あ)げよ　　　　

真玉(まだま)モリ　います

英祖王(えいそおう)末(すえ)按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　

天降(ており)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　

蒲(こ)葵(ば)モリ　いまして　　　　　　　

聞(きこ)得(え)大君(おおきみ)が、

蒲(こ)葵(ば)モリ司(づかさ)と　　　　　　　　　　　

御言(みこと)　合(あ)わせまして　　　　　　　

太陽(てるか)神(わ)に　知(し)られて　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む精(せ)高子(だかこ)が、

蒲(こ)葵(ば)モリ司(づかさ)と

御言(みこと)　合(あ)わせまして

国(くに)笠(かさ)の親(おや)神女(のろ)　こう　感(かん)じて、　　

尚(おぎ)真(やか)王(もい)に　知(し)られて　　　　　　　

奇(くし)清(きよら)の神女(のろ)　こう　感(かん)じて、　　　

首里(しゅり)モリ　います、

尚真王(おぎやかもい)按司(あんじ)大主(おそい)　　　　　　　　　

今(いま)からこそ

末(すえ)　勝(まさ)り　ください

８５５

鳴(とよ)響(み)丸(まる)、　　　　　　　　　　　

真(ま)船木(ふなぎ)なれば　　　　　　　　　

群(む)れ舞(ま)い

真(ま)民(たみ)　里(さと)　寄(よ)らせ

浮島(うきしま)丸(まる)、　　　　　　　　　　　

羽撃(はねうち)丸(まる)なれば　　　　　　　　　

押(お)し浮(う)かべまして、

刳(く)り浮(う)かべまして　　　　　　　

揚(あ)がる司(つかさ)、

直(なお)る司(つかさ)なれば

玉(たま)金(こがね)、　　　　　　　　　　　　

縒(よ)り合(あ)わせ遣(や)り　帆(ほ)走(ばし)りは　　　

麻(あさ)の糸(いと)は、

縒(よ)り合(あ)わせ遣(や)り　水縄(みずなわ)する　　　　　　　　　　　　　

真(ま)麻(あさ)の糸(いと)は、　　　　　　　　　

縒(よ)り合(あ)わせ遣(や)り　手縄(てなわ)する

海(うみ)　直(なお)す、

清(きよ)き真帆(まほ)　押(お)し揚(あ)げて

８５６

御世(みよ)千代(ちよ)野(の)を　崇(あが)めて、　　　　　　　　　

この渡(と)　出(で)まして　走(はし)りますれば　　　　　　　　

もどかしく　袖(そで)　垂(た)れて　走(はし)らせよ

神女(かみ)様(さま)を　崇(あが)めて、　　　　　　　　　　　

８５７

赤(あか)金(がね)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　

国王(てだ)の前(まえ)　知(し)られて　　　　　　

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて

雲(くも)に　送(おく)られて

上間(うえま)氏(し)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　

国王(てだ)の前(まえ)　　　　　　　　　　　

８５８

赤(あか)金(がね)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　

永(え)良部(らぶ)　結(むすび)思(おもい)　　　　　　　

今(いま)よりは

美(うつく)しい声(こえ)　遣(や)り　　　　　　　　

上間(うえま)氏(し)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　

旅(たび)に　立(た)つ　吾(われ)は、

さみしくは　あれども

今(いま)よりは　

美(うつく)しい

８５９

永(え)良部(らぶ)　立(た)つ　長老(あす)等(ら)、　　　　　　

大(おお)グスク　造(つく)り　造(つく)り遣(や)り

思(おも)う子(こ)の　ために

離(はな)れ　立(た)つ　長老(あす)達(たち)、

大(おお)グスク

８６０

永(え)良部(らぶ)孫(まこ)八(はつ)が、　　　　　　　

玉(たま)の客(きゃく)神(がみ)　崇(あが)めて　　　　　　　

海豚(いるか)丸(まる)を　　　　　　　　　　

朝(あさ)早(はや)く　走(はし)らせ

離(はな)れ孫八(まこはつ)、

玉(たま)の

８６１

永(え)良部(らぶ)世(よ)の主(ぬし)の、　　　　　　　　

選(えら)び置(お)きたる　芸事(のさ)　赤(あく)冠(か)　　　　　　　　　　

百(もも)織(お)りの真(ま)絹(きぬ)　　　　　　　　　　

取(と)り　差(さ)し上(あ)げよ

離(はな)れ世(よ)の主(ぬし)、

選(えら)び置(お)きたる

８６２

聞(きこ)え馬(ば)天(てん)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　

見(み)揚(あ)げたき若(わか)き人(ひと)

偲(しの)び待(ま)てる人(ひと)に　　　　　　　　　

守(まも)る神(かみ)　添(そ)うて

守(まも)られて　

通(かよ)い　栄(は)えまして

鳴(と)響(よ)む馬(ば)天神女(てんのろ)、

８６４

大君(おおきみ)が、

神(かみ)の事(こと)　取(と)り　降(お)りられて　　　　　　

喜(よろこ)び　島討(しまう)ち　勝(まさ)りまして　　　　　

国(くに)守(もり)が、　　　　　　　　　　　　

時(とき)　取(と)り遣(や)り　降(お)りられて

８６７

勝連人(かつれんびと)　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　

船(ふね)遣(や)りこそ　貢(みつぎ)

徳之島(とくのしま)　奄(あま)美(み)

平地(ひらち)　成(な)して　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　

夫思(おともい)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　　

８６９

今帰仁(なきじん)の親御(おやみ)船(ふね)、　　　　　　　　　

銀金掻(しろがねこがねかき)丸(まる)　　　　　　　　　　　　　

艫(とも)　巻(ま)き上(あ)げ　　　　　　　　　　　

那覇(なは)泊(どまり)　走(はし)らせて

思(おも)う子(こ)の親御(おやみ)船(ふね)、

８７０

聞(きこ)え今帰仁(なきじん)、　　　　　　　　　　　　　

百(もも)曲(まが)り　積(つ)み上(あ)げて　　　　　　　　

勾玉寄(かわらよせ)御(お)グスク　造(つく)り　　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む今帰仁(なきじん)、

８７１

浦添(うらそえ)に　います、　　　　　　　　

清(きよ)き天久(あめく)按司(あんじ)様(さま)愛(かな)し　　　　　　　　　　

首里(しゅり)へと　使(つか)い　　　　　　　　　　

渡嘉敷(とかしき)に　います、　　　　　　　　

８７２

開(あけ)澪(みお)の泊(とまり)、　　　　　　　　　　　　

聞(きこ)え親(おや)泊(とまり)

肝(きも)晴(ば)れは　妻女(やちよこ)　　　　　　　　　　

繁多間(はんたま)御役人(おきて)、　　　　　　　　　　

浦(うら)張(はる)の泊(とまり)は、　　　　　　　　　　　

帆差(ふさす)の泊(とまり)　　　　　　　　　　　　　

８７３

阿波(あは)根(ごん)の大役人(おおやこ)、　　　　　　　

按司付(あんじつ)きの大役人(おおやこ)

海(うみ)　凪(な)ぎらせ

我(わ)が浦(うら)　寄(よ)せよ

新旅(にいたび)　遣(や)り、　　　　　　　　

初旅(ういたび)　遣(や)り　　　　　　　　　

慶良間(けらま)旅(たび)　遣(や)ったので、　　　　　

座間味(ざまみ)旅(たび)　遣(や)ったので　　　　　　

十(と)尋(ひろ)家(や)が　欲(ほ)しくて、　　　　　

八尋(やひろ)家(や)が　欲(ほ)しくて　　　　　　

８７４

東(ひがし)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　

真玉(まだま)色(いろ)の真剣(まつるぎ)　　　　　　　　　　　　　　　　　

爪付(つめつ)けぬ　首里(しゅり)モリ　差(さ)し上(あ)げよ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　

真玉(まだま)色(いろ)の真剣(まつるぎ)

爪付(つめつ)けぬ　真玉(まだま)モリ　差(さ)し上(あ)げよ

８７５

久志(くし)の前兼(まえがね)久(く)、　　　　　　　　　　

世(よ)持(もち)丸(まる)　巣出(すだ)して　　　　　　　　　

十百(ともも)末(すえ)　　　　　　　　　　　　　　

乗(の)り栄(は)え　いまして

嶽(たけ)の若(わか)き神人(かみびと)、　　　　　　　　　　

穂(ほ)花(ばな)　拝(おが)み　守(まも)れ　　　　　　　　　

嶽(たけ)嶽(だけ)の神(かみ)は、

稲穂(いなほ)　積(つ)み　守(まも)れ　　　　　　　　　

８７８

山(やま)の国(くに)金(かね)神(がみ)が、　　　　　　　　　　　　

愛(め)でおきたる小松(こまつ)

按司(あんじ)大主(おそい)に

世(よ)果報(がほう)精(せじ)　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　

誇(ほこ)るおとこ等(ら)が、

艫(とも)勝(まさり)丸(まる)　造(つく)り　　　　　　　　　　

誇(ほこ)るおとこ等(ら)が、

島付(しまつけ)丸(まる)　造(つく)り　　　　　　　　　　

出(で)るごとに

袖(そで)　垂(た)れて　走(はし)らせよ

８７９

天(てん)の御宣人(みぜりきよ)が、　　　　　　　　　

撓(しない)丸(まる)　混(ま)じらずに　見(み)まして　　　　

天(て)久(く)の御宣(みぜり)人(きよ)が、　　　　　　　　

８８０

聞(きこ)え精(せの)君(きみ)が、　　　　　　　　　　　　

目付(めつ)け　しまして　走(はし)らせて

鳴(と)響(よ)む精(せの)君(きみ)が、　　　　　　　　　　　

８８２

この嶽(たけ)、

この御嶽(みたけ)の　司子(つかさご)　　　　　　　　　　　　　　　

敬(うやま)い

知(し)られてこそ　走(はし)り寄(よ)れ

二山(ふたやま)の中空(なかぞら)　綾(あや)の天(てん)　　　　　　　　　

奥(おく)の海(うみ)　出(で)て、

奥(おく)の海(うみ)　出(で)て　走(はし)らせば

誰(だれ)がと

いずれがと　問(と)うな

屋(や)古(こ)泊(どまり)、　　　　　　　　　　　　　　

屋(や)古(こ)泊(どまり)　走(はし)り

いずれがと　問(と)うな

８８３

河内(かわち)鈴(すず)丸(まる)が、　　　　　　　　　　　　

美(うつく)しき声(こえ)　　　　　　　　　　　　　　　

成(な)せる人(ひと)の前(まえ)　知(し)られて

見物(みもの)鈴(すず)丸(まる)が、

８８４

真南風(まはえ)　真南風(まはえ)、　　　　　　　　　　

静(しず)かに　押(お)せ

金口(こがねぐち)　走(はし)らせ　　　　　　　　　　　　

追(お)い風(かぜ)　追(お)い風(かぜ)、

静(しず)かに　押(お)せ

８８５

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　　

親御(おやみ)船(ふね)を　押(お)し浮(う)かべ

飛(と)ぶ鳥(とり)と　競(きそ)いして　走(はし)らせ

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

８８６

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、

親御(おやみ)船(ふね)　使(つか)わし

親御(おやみ)船(ふね)　来(き)まして　知(し)られて

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

８８７

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、　

御前(みまえ)　います　長老(あす)等(ら)が　　　　　　　　　　　　　　　　

北(にし)の海(うみ)の　波(なみ)の子(こ)　　　　　　　　　　　

神(かみ)太陽(てだ)の　守(まも)ります御船(みふね)　　　　　　　　

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　　　　　　　

８８８

首里(しゅり)へと　行(い)った人(ひと)、

吾(われ)に　語(かた)れ　答(こた)えせよ

大君(おおきみ)が　君(きみ)志(し)王(おう)　心(うら)切(ぎ)れて　　　　　　　　　　　

御前(みまえ)へと　行(い)った人(ひと)、

８８９

山(やま)の成人(なしの)が、　　　　　　　　　　　　　　　

守(まも)る神(かみ)　成(な)りまして

果報(かほう)丸(まる)　乗(の)り栄(は)え成(な)しまして　　　　　　　

君(きみ)の若(わか)殿(どの)、　　　　　　　　　　　　　　　

腰当(こしあ)て神(がみ)　成(な)りまして　　　　　　　　　　

８９０

首里(しゅり)　います　太(て)陽子(だこ)が、　　　　　　　　　　　　　　

船(ふね)遣(や)りこそ　御貢(みみつぎ)　　　　　　　　　　　　　　　　　　

上下(かみしも)の　貢(みつぎ)

積(つ)み　差(さ)し上(あ)げよ

グスク　います　太(て)陽子(だこ)が、

８９１

楠(くすのき)の御船(みふね)、　　　　　　　　　　　　　

押(お)し浮(う)かべたる御船(みふね)

跡(あと)　直(なお)して　　　　　　　　　　　　　

先(さき)良(よ)き御船(みふね)

按司(あんじ)大主(おそい)が御船(みふね)、

先(さき)の国王(こくおう)・尚(しょう)寧(ねい)王が御治(おおさ)めになる国(くに)の時(とき)、御妃(おきさき)の御前(みまえ)で作(つく)り召(め)されたおもろ

８９３

東(ひがし)の飛(と)び魚(うお)、

向(む)かい　飛(と)ぶ　飛(と)び魚(うお)

守(まも)る神(かみ)こそ

真(ま)強(づよ)くあれ　見守(みまも)ろう

太陽(てだ)が穴(あな)の飛(と)び魚(うお)、

８９４

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

吾(われ)　守(まも)り　ください

按司(あんじ)大主(おそい)が

大国(おおくに)　早(はや)き使(つか)い

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、　

８９５

綾(あや)毛馬(けうま)に、　　　　　　　　　　　　　　　　

綾(あや)木(き)鞍(くら)　掛(か)けて　　　　　　　　　　　　　　

綾(あや)木(き)鞭(むち)　取(と)らせて　　　　　　　　　　　　　

追(お)い立(た)てて　走(はし)らせ　「エ　ヤレ」

稀(まれ)の毛馬(けうま)に、　　　　　　　　　　　　　　　

稀(まれ)の木(き)鞍(くら)　掛(か)けて　　　　　　　　　　　　

稀(まれ)の木(き)鞭(むち)　取(と)らせて　　　　　　　　　　　

８９６

東(ひがし)の瑞(みず)嶽(だけ)　　　　　　　　　　　　　　

瑞(みず)嶽(だけ)を　見(み)ます　　　　　　　　　

真(ま)強(づよ)くあれ　おとこ等(ら)

太陽(てだ)が穴(あな)の瑞(みず)嶽(だけ)　　　　　　　　　

８９７

東(ひがし)の瑞(みず)嶽(たけ)　　　　　　　　　　　　　　

瑞(みず)嶽(だけ)を　見(み)ます　　　　　　　　　　　　

あれを　見(み)るは　神(の)女(ろ)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　

肝(きも)　強(つよ)く　持(も)ちなさい

太陽(てだ)が穴(あな)の瑞(みず)嶽(だけ)

太陽(てだ)が穴(あな)の瑞(みず)嶽(だけ)

瑞(みず)嶽(だけ)を　見ます

８９８

一(ひと)つ　二(た)　六(む)　　　　　　　　

七(なな)の弟(おとうと)　　　　　　　　　　　

生(な)しまして

親(おや)　なればと

吾(われ)　走(はし)らせ

一(ひと)つ　二(た)　六(む)

十(とお)の弟(おとうと)　　　　　　

生(な)しまして

８９９

これこそ　これ　初(はつ)北風(にし)　　　　　　　　　　　　

もどかしくて　精(せの)君(きみ)　使(つか)い　　　　　　　　　　

これこそ　これ　北風(にし)　　　　　　　　　　　

初北風(はつにし)こそ　待(ま)ちなさい　　　　　　　　

北風(にし)こそ　待(ま)ちなさい　　　　　　　　　

９００

按司(あんじ)大主(おそい)が親御(おやみ)船(ふね)

島(しま)　見(み)れば　久米(くめ)岳(だけ)　　　　　　　　　　　　　　

明日(あした)は　那覇(なは)泊(どまり)

親御(おやみ)船(ふね)は

精(せの)君(きみ)こそ　守(まも)りなさい

尚(おぎ)真(やか)王(もい)の親御(おやみ)船(ふね)　　　　　　　　　　　　

９０１

君(きみ)南風(はえ)を　崇(あが)めて　　　　　　　　　　　

助山(たくこやま)　上(のぼ)り　　　　　　　　　　　　　　

愛(め)で松(まつ)は　植(う)えて　　　　　　　　　　　　　　

羽撃(はねうち)丸(まる)　巣立(すだ)てて　　　　　　　　　　　

飛(と)ぶ鳥(とり)と　競(きそ)いして　走(はし)らせ

馬子(うまのこ)の細工(さいく)　　　　　　　　　　　　　　

真(ま)糸(いと)の縄(なわ)　掛(か)けて

９０２

謝名(じゃな)の父(ちち)が　船遣(ふねや)り　　　　　　　　

真南風(まはえ)　押(お)して　来(き)ます　　　　　　

吾(われ)は　守(まも)られ

敬(うやま)いて　走(はし)らせよ

意地(いじ)気(き)父(ちち)が　船遣(ふねや)り　　　　　　　　

追(お)い手風(てかぜ)　押(お)して　来(き)ます

遣(やり)大主(おそい)を　崇(あが)めて　　　　　　　　　

真南風(まはえ)　乞(こ)いなさい

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

真南風(まはえ)　乞(こ)いなさい

読谷(おおにし)に　走(はし)らせば　　　　　　　　　

弱倉(なよくら)こそ　知(し)ります　　　　　　　　　

崎(さき)枝(えだ)に　走(はし)らせば　　　　　　　　　

神(の)女(ろ)神女(のろ)こそ　知(し)ります　　　　　　　

見(み)拝(おが)みを　畏(おそ)れて

崎崎(さきざき)も　畏(おそ)れて　

９０３

北谷(ちゃたん)に　います　　　　　　　　

真太郎(またら)様(さま)の親御(おやみ)船(ふね)　　　　　　　

精(せじ)　勝(まさ)り

島討(しまう)ち　勝(まさ)りなさい

国(くに)の根(ね)に　います

思(おも)う子(こ)の親御(おやみ)船(ふね)

押(お)し出(い)だし遣(や)り　走(はし)らせば

もどかしくて　走(はし)らせば

抜(ぬ)き出(い)だし遣(や)り　走(はし)らせば

袖(そで)　垂(た)れて　走(はし)らせよ

戦先(いくささき)　立(た)ちますれば　　　　　　　　

綾(あや)鷲(わし)羽根(はね)　挿(さ)しまして　　　　　　　

大国先(おおくにさき)　立(た)ちますれば

稀(まれ)の鷲(わし)羽根(はね)　挿(さ)しまして　　　　　　

９０４

読谷(おおにし)に鳴(と)響(よ)む　　　　　　　　　　

聞(きこ)え弱倉(なよくら)　　　　　　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい　　　　　　　　　　

崎(さき)枝(えだ)に　鳴(と)響(よ)む　　　　　　　　　

９０５

辺留(へる)の方(かた)　　　　　　　　　　　　

八(や)瀬(せ)の方(かた)　　　　　　　　　　　　

船斑(ふなもどろ)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　　

出(で)るごとに

精(せじ)　添(そ)えて　走(はし)らせよ

細工(さいく)　選(えら)び

接(は)ぎ手(て)　選(えら)び　　　　　　　　　　

速斑(はやもどろ)丸(まる)　押(お)し浮(う)かべ　　　　　　　

出(で)るごとに　　　　　　　　　

９０６

辺留(へる)の方(かた)　船遣(ふねや)り

親御(おやみ)船(ふね)は　押(お)し浮(う)かべ

浮(う)かぶごと

精(せじ)　添(そ)えて　走(はし)らせよ

意地(いじ)気(き)父(ちち)が　船遣(ふねや)り

９０７

恩納(おんな)氏(し)が　船遣(ふねや)り、　　　　　

鈴(すず)丸(まる)を　押(お)し浮(う)かべ　　　　　

親(おや)の神(かみ)　崇(あが)めて

舞(ま)い合(あ)い

もどかしくて　走(はし)らせ　

八(や)千島(ちしま)が　船遣(ふねや)り、　　　　　

９０８

上立(おえたち)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

浦(うら)　鳴(と)響(よ)む　羽撃(はねう)丸(まる)　巣立(すだ)てて

押分(おしわけ)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　

戦(いくさ)強(つよ)きおとこ、

美(うつく)しい細(さい)工(く)　戻(もど)して

９０９

恩納(おんな)氏(し)が　船遣(ふねや)り、

押分(おしわけ)を　崇(あが)めて　　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

八(はち)千島(ちしま)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

９１０

澄(せ)井出(むらい)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

撓(しない)丸(まる)　接(は)ぎ浮(う)かべたる　清(きよ)らさ　　　　　

内(うち)の浦(うら)の　親(おや)神女(のろ)、

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

９１１

澄(せむ)井出(らい)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

内(うち)の浦(うら)の　親(おや)神女(のろ)、

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

９１２

今帰仁(なきじん)に　立(た)つ雲(くも)、　　　　　　

金(こがね)雲(ぐも)　立(た)ちます　　　　　　　　　

大君(おおきみ)に

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて　走(はし)らせよ

金比屋(かなひや)武(ぶ)に　立(た)つ雲(くも)、　　　　　　

銀(しろがね)雲(ぐも)　立(た)ちます　　　　　　　　　

９１３

島勢(しませ)理客(んこ)親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

按司(あんじ)大主(おそい)に

貢(みつぎ)　積(つ)み　差(さ)し上(あ)げよ

明忍(あけしの)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　

９１４

沖(おき)水(みず)納(な)の笑(わらい)人(きよ)、　　　　　　　　　

笑人(わらいきよ)を　崇(あが)めて　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい　　　　　　　　　　

離(はな)れ島(じま)の笑(わらい)人(きよ)、

９１５

島勢(しませ)理客(んこ)親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

浮(うき)清(きよら)丸(まる)を　造(つく)り　　　　　　　　

金(こがね)　積(つ)み　　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)へと　走(はし)らせ

今帰仁(なきじん)の親(おや)神女(のろ)、

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

９１６

真(ま)北(にし)上風(じょうかぜ)の　「ヨイ」、　　　　　　

今帰仁(なきじん)　音(ね)　しまして

慈(いつく)しみ　慈(いつく)しみ　送(おく)れば

追手(おいて)上風(じょうかぜ)の　「ヨイ」、　　　　　　

今帰仁(なきじん)　音(ね)　しまして

９１７

崎(さき)モリグスク、　　　　　　　　　　　

左方(ひだりかた)　浮(う)かべまして　　　　　　　　　

吾(わ)が父(ちち)が

良(よ)く　走(はし)り　喜(よろこ)ばせ　　　　　　　　　　　　

崎(さき)モリグスク、　　　　　　　　　　　

右方(みぎかた)　浮(う)かべまして

９１８

伊平屋(いへや)の親(おや)神女(のろ)よ、　　　　　　　　

聞(きこ)え真(ま)根(ね)櫛(くし)よ　　　　　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい　　　　　　　　　　　

田名(たな)の親(おや)神女(のろ)様(さま)よ、　　　　　　　　

９１９

伊是名(いぜな)の親(おや)神女(のろ)よ、

若(わか)く愛(いと)しき人(ひと)が御船(みふね)

飛(と)ぶ鳥(とり)こそ　隼(はやぶさ)こそ　こう　ある

離(はな)れ親(おや)神女(のろ)よ、

若(わか)く愛(いと)しき人(ひと)が御船(みふね)

９２０

伊平屋(いへや)氏(し)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　

崇(あが)めてこそ　乞(こ)いたる

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて

思(おも)う様(よう)に　走(はし)らせ

押分(おしわけ)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　　

９２１

屋(や)嘉比(かび)モリ　います、　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

赤(あか)丸(まる)に　います、　　　　　　

徒歩(てく)君(ぎみ)　崇(あが)めて　　　　　　　

９２２

辺(へ)戸(ど)に　います　真白手(ましらて)、　　　

真白手(ましらて)を　崇(あが)めて　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

奥(おく)に　います　真白手(ましらて)、

真白手(ましらて)を　崇(あが)めて

９２３

国(くに)笠(かさ)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

正(ただ)しく　して

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

国(くに)笠(かさ)の　若(わか)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　　

若(わか)神女(のろ)を　崇(あが)めて

９２４

辺(へ)戸(ど)の弱宣人(なよぜりきよ)、　　　　　　　　

羽(はね)撃(う)ちして

走(はし)ります　清(きよ)らさ

久高(くだか)鳴(とよ)響(み)御船(みふね)、　　　　　　　　

首里鳴(しゅりと)響(よ)御船(みふね)、　　　　　　　　

９２５

降(うり)旬(ずん)が　立(た)ちますれば、

吾(わ)が脚上(あしあげ)　神(かみ)脚上(あしあげ)　　　　　　　　　

姉妹(おなり)神(がみ)　手(て)　摩(す)ります　　　　

大君(おおきみ)に

真南風(まはえ)　乞(こ)いて　走(はし)らせよ　　　　

若(わか)夏(なつ)が　立(た)ちますれば、

９２６

鬼(おに)殿(どの)が　船斑(ふなもどろ)　押(お)し浮(う)かべ、　　

この渡内(とうち)の　待(ま)ち焦(こ)がれ　　　　　　

鬼(おに)殿(どの)が　速斑(はやもどろ)、　　　　　　　　　　　　　

青波(あおなみ)が手取(てどり)木戸(きど)　敬(うやま)い、　　　　　　　

白波(しらなみ)が　屋形(やかた)口(くち)　敬(うやま)い、　　　　　　　

鬼(おに)殿(どの)が　垂(た)れ利(き)き帯(おび)　敬(うやま)い、　　　　　

鬼(おに)殿(どの)が　垂(た)れ袴(はかま)　敬(うやま)い、　　　　　　　　　　

９２７

国(くに)笠(かさ)に　います、　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて

島(しま)討(う)ちして

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

屋(や)嘉比(かび)モリに　います、　　　　　

金丸(かなまる)を　崇(あが)めて　　　　　　　　

赤(あか)丸(まる)に　います、　　　　　　　

徒歩(てく)の君(きみ)　崇(あが)めて　　　　　　　　

安須(あす)モリに　います、　　　　　　

真白手(ましらて)を　崇(あが)めて　　　　　　　

奥(おく)モリに　います、　　　　　　　

玉(たま)の客(きゃ)神(く)　崇(あが)めて　　　　　　　　

９２８

与論(かえふ)島(た)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　

遊(あそび)神(がみ)　崇(あが)めて　　　　　　　　　

待(ま)ち焦(こ)がれて

袖(そで)　垂(た)れて　走(はし)らせよ

根(ね)の島(しま)の親(おや)神女(のろ)、

神(の)女神女(ろのろ)を　崇(あが)めて、　　　　　

神(かみ)神(がみ)を　崇(あが)めて、

北風(にし)　乞(こ)えば　北風(にし)になれ、　　

南風(はえ)　乞(こ)えば　南風(はえ)になれ、　　

９２９

与論(かえふ)島(た)の親(おや)神女(のろ)、

親御(おやみ)船(ふね)を　守(まも)りなさい

舞(ま)い合(あ)い　見守(みまも)り　走(はし)らせ

根(ね)の島(しま)の　神(の)女(ろ)神女(のろ)、　　　　　　　　　　

神(の)女神女(ろのろ)こそ　知(し)ります、　　　　　　

神(かみ)神(がみ)こそ　知(し)ります、

９３０

与論(かえふ)島(た)の親(おや)神女(のろ)、

真(ま)徳(とく)浦(うら)に　通(かよ)い　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)に　

金(こがね)　積(つ)み　差(さ)し上(あ)げよ　　　　　　　　

根(ね)の島(しま)の親(おや)神女(のろのろ)、

９３１

与論(よろん)声(こい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　　

真(ま)徳(とく)浦(うら)に　通(かよ)い　　　　　　　　　　

島(しま)　治(おさ)め

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

離(はな)れ声(こい)忍(しの)が、

９３２

与論声(よろんこい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　　

真(ま)徳(とく)浦(うら)に　通(かよ)い

玉(たま)金(こがね)　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

根(ね)国声(くにこい)忍(しの)が、　　　　　　　　　　　

９３３

与論(かえふ)島(た)の親(おや)神女(のろ)、　　　　　　　　　

遊(あそび)神(がみ)　崇(あが)めて　　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

根(ね)の島(しま)の親(おや)神女(のろ)、

９３４

国(くに)の撫(なで)忍(しの)が、　　　　　　　　　　　

撫(なで)忍(しの)が　船遣(ふねや)り　　　　　　　　

なごなごと

和(なご)やかに　走(はし)らせて

国(くに)の御宣人(みぜりきよ)が、　　　　　　　　　　　

御宣人(みぜりきよ)が　船遣(ふねや)り

神(かみ)は　姉妹(おなり)神(かみ)、　　　　　　　　　　　　

人(ひと)は　美(うつく)しい兄弟(きょうだい)

嘉津宇(かつう)岳(だけ)　取(と)って、　　　　　　

蒲(こ)葵(ば)嶽(だけ)　取(と)って　　　　　　　　

９３５

永(え)良部(らぶ)世(よ)の主(ぬし)の、　　　　　　　

御船(みふね)　橋(はし)　しまして

永(え)良部(らぶ)島(じま)　成(な)しまして

離(はな)れ世(よ)の主(ぬし)の、

９３６

永(え)良部(らぶ)世(よ)の主(ぬし)の、　　　　　　　

選(えら)び置(お)きたる　馬(うま)の群(む)れ

馬(うま)の群(む)れは

世(よ)の主(ぬし)こそ　待(ま)ちます

離(はな)れ世(よ)の主(ぬし)の、

金(かね)鞍(ぐら)　掛(か)けて、　　　　　　　　

与(よ)和(わ)泊(どまり)　降(お)りて　　　　　　　　

９３７

永(え)良部(らぶ)知(せり)良(よさ)に、　　　　　　　　

端漕(はこぎ)丸(まる)　走(はし)り競(きそ)い　　　　　　　

歓子(あまえご)神(かみ)が　守(まも)ります御船(みふね)　　　　　

離(はな)れ知(せり)良(よさ)に、

９３８

勝連(かつれん)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　

請(うけ)　与(よ)路(ろ)は　橋(はし)　しまして　　　　

徳(とく)　永(え)良部(らぶ)　　　　　　　　　　

頼(たよ)り為(な)して　差(さ)し上(あ)げよ

真地降(まじふり)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　

９３９

勝連(かつれん)が　船遣(ふねや)り、　　　　　　　

船(ふね)遣(や)りこそ　御貢(みみつぎ)　　　　　　　　　　　　

喜界(きかい)　奄(あま)美(み)　　　　　　　　　　

平地(ひらち)　成(な)して　差(さ)し上(あ)げよ　　　　

真地降(まじぶり)　船遣(ふねや)り、　　　　　　　

９４０

里中(さとなか)のおとこが、　　　　　　　

一(いち)の櫂(かい)　真(ま)強(づよ)く　　　　　　　　　　

歓子(あまえご)神(がみ)が　守(まも)ります御船(みふね)　　　　　

戸(と)白(しら)モリおとこ等(ら)、　　　　　　　

田(た)皆(みな)嶽(だけ)　見(み)ます、　　　　　　　

西銘(にしめ)嶽(だけ)　見(み)ます、　　　　　　　

知(せり)良(よさ)の端付(はつき)丸(まる)、　　　　　　　　

走(はし)り来(き)ます

明(あ)けよ

９４１

永(え)良部(らぶ)山間(やむま)嶽(だけ)、　　　　　　　　

いらっしゃる　神(かみ)神(がみ)

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

離(はな)れ山間(やんま)嶽(だけ)、

９４２

永(え)良部(らぶ)　います　三十(みそ)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　

三十(みそ)神女(のろ)を　崇(あが)めて　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

離(はな)れ　います　三十(みそ)神女(のろ)、

９４３

徳山(とくやま)の愛(め)で松(まつ)、　　　　　　　　　

親御(おやみ)船(ふね)は　巣立(すだ)てて

飛(と)ぶ鳥(とり)と　競(きそ)いして　走(はし)らせよ

北(にし)嶽(だけ)の愛(め)で松(まつ)、　　　　　　　　　　

９４４

徳(とく)に　います　三十(みそ)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　

三十(みそ)神女(のろ)を　崇(あが)めて　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

徳(とく)に　います　四十(よそ)神女(のろ)、　　　　　　　　　　　

四十(よそ)神女(のろ)を　崇(あが)めて　　　　　　　

９４５

与(よ)路(ろ)渡(と)　出(で)て　走(はし)りますれば、　　

高丸(たかまる)を　崇(あが)めて

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

この渡(と)　出(で)て　走(はし)りますれば、

花(け)良地(なち)嶽(だけ)　崇(あが)めて　　　　　　　　

９４６

赤木名(あかぎな)の神女(のろ)の、　　　　　　　　

下(しも)の国(くに)金(かね)と　　　　　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

根(ね)の島(しま)の神女(のろ)の、

９４７

赤木名(あかぎな)の百(もも)神(がみ)、　　　　　　　　　

親勢(おやせ)頭部(どべ)　送(おく)りなさい　　　　　　　

親(おや)勢(ぜ)頭部(どべ)　御前(みまえ)　　　　　　　　　

心(うら)切(ぎ)れて　　　　　　　　　　　　

根(ね)の島(しま)の八十(やそ)神女(のろ)、

　　　　　　　　　　　　

９４８

聞(きこ)え北(にし)モリに、　　　　　　　　　　　

世誇(よほこり)を　造(つく)り　　　　　　　　

御宣人(みぜりきよ)こそ　　　　　　　　　　　

煽(あお)り揺(ゆ)らせ　走(はし)らせ

鳴(と)響(よ)む　中(なか)モリに、　　　　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ　　　　　

勝(すぐ)れたおとこ等(ら)が、

親御(おやみ)船(ふね)は　押(お)し浮(う)かべ

今日(きょう)の良(よ)き日(ひ)に、

親御(おやみ)船(ふね)は　押(お)し浮(う)かべ

今日(きょう)の輝(かがや)く日(ひ)に、

親御(おやみ)船(ふね)は　押(お)し浮(う)かべ

按司(あんじ)大主(おそい)が　為(ため)にこそ、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ　　　　　

貴(たか)き人(ひと)が　為(ため)にこそ、

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ

９４９

名瀬(なぜ)の祭神(まつりがみ)、　　　　　　　　　

有屋奇宣人(あるやくせせりきよ)　　　　　　　　　　

瀬名波(せなは)御役人(おきて)　　　　　　　　　　

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて　走(はし)らせよ

伊都部(いつぶ)祭神(まつりがみ)、　　　　　　　　　

名瀬(なぜ)の浦(うら)の八里(はちさと)、　　　　　　　　　　　　　

有屋奇宣人(あるやくせせりきよ)　　　　　　　　　　

名瀬(なぜ)の浦(うら)の十里(じゅうさと)、　　　　　　　　　　　　　

有屋奇宣人(あるやくせせりきよ)

９５０

嫋(そよめき)が　きらめき、　　　　　　　　　　

神女(かみ)様(さま)が　きらめき　　　　　　　　　

「デ」　吾(われ)　漕(こ)ぎ出(だ)す

真南風(まはえ)　吹(ふ)きますれば、

追手風(おいてかぜ)　吹(ふ)きますれば

御椀(おわん)嶽(だけ)　抜(ぬ)き当(あ)てて、　　　　　　　　

照地(てらち)嶽(だけ)　抜(ぬ)き当(あ)てて　　　　　　　　　

９５１

伊平屋(いへや)大役人(おおやこ)が、　　　　　　　　　　

見(み)つけたる　小島(こじま)へと

雨(あめ)に　走(はし)りますれば

精(せん)君(ぎみ)こそ　　　　　　　　　　　　　　

帆(ほ)笠(かさ)　添(そ)えて　守(まも)れ　　　　　　　　　

離(はな)れ大役人(おおやこ)が、　　　　　　　　　　　　　

９５２

追(え)掛人(ましきよ)が、　　　　　　　　　　　　　

地下(けした)様(さま)が　船遣(ふねや)り　　　　　　　　　　

羨(うらや)みて　　　　　　　　　　　　　　　

肝(きも)強(づよ)さ　待(ま)ち焦(こ)がれ

中城(なかぐすく)　島(しま)大主(おおぬし)は　見(み)ます、　　　　　　

北(にし)嶽(だけ)も、　　　　　　　　　　　　　　

東(ひが)嶽(だけ)も　見(み)ます　　　　　　　　　　　

９５３

鈴鳴(すずなり)丸(まる)が、　　　　　　　　　　　　　　

船(ふな)心(ごころ)　知(し)らぬか　　　　　　　　　　　

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて　走(はし)らせたい

神女(かみ)様(さま)が、　　　　　　　　　　　　　

船(ふね)心(ごころ)　知(し)らぬか

追(お)い風(かぜ)　乞(こ)いて

９５４

翳(かざ)す頬垂(ほほた)れ人(びと)よ、　　　　　　　　　　

四島(よしま)　寄(よ)せよ　　　　　　　　　　　　

翳(かざ)す濡(ぬ)れ髪人(がみびと)よ、　　　　　　　　　　

頬垂(ほほだ)れ人(びと)が　弟(おとうと)、　　　　　　　　　

濡(ぬ)れ髪人(がみびと)が　弟(おとうと)、　　　　　　　　

船好(ふねごの)み　しまして、

旅好(たびgoの)み　しまして、

９５５

北(にし)嶽(だけ)に　います、　　　　　　　

嶽(たけ)の雪(ゆき)愛(がなし)こそ　　　　　　　　　　　

久米(くめ)の島(しま)神(がみ)です　　　　　　　　　　

久米(くめ)の珍(めずら)しさよ

東(ひが)嶽(だけ)に　います、　　　　　　　

聞(きこ)え雪(ゆき)愛(がなし)　　　　　　　　　　　　　

見果(にる)国(や)地(ち)に　着(つ)ければ、　　　　

大千代(おおちよ)神(がみ)が　尊(とうと)さ　　　　　　　

北(にし)嶽(だけ)に　着(つ)ければ、

見果(にる)国地(やち)の　尊(とうと)さ　　　　　　　　　　　　　

知(し)らぬ世(よ)に　着(つ)ければ、

夜(よ)　夜中(よなか)に　着(つ)けよ

誰人(たり)国(る)から　聞(き)けば、　　　　　

来去(けに)国(ろ)から　聞(き)けば　　　　　　

久米(くめ)の島(しま)　通(とお)れば、

金(かね)の島(しま)　通(とお)れば　　　　　　　　

金(かな)福(ふく)に　います、　　　　　　　

具志川(ぐしかわ)に　います

聞(きこ)え按司(あんじ)大主(おそい)が、

鳴(と)響(よ)む按(あん)司(じ)大主(おそい)が

浦(うら)貢(みつぎ)　寄(よ)せて、　　　　　　　　

初貢(はつみつぎ)　寄(よ)せて　　　　　　　　　

御船(みふね)　接(つ)ぐという、　　　　　　　　　

大御船(おおみふね)　接(つ)ぐという　　　　　　　　　　

今鳴(いまとよ)響(み)　着(つ)けて、　　　　　　

今(いま)勝(まさり)　着(つ)けて　　　　　　　　　

９５６

石岩(いくら)渡(と)のおとこ等(ら)　　　　　　　　　　

一(いち)の櫂(かい)　真(ま)強(づよ)く

吾(わ)がおとこ　艫(とも)　舳(へさき)が　続(つづ)き　　　　　　　　　

驟雨(さふら)渡(と)のおとこ等(ら)　　　　　　　　　　　

一(いち)の櫂(かい)　真(ま)強(づよ)く

吾(わ)がおとこ　艫(とも)　舳(へさき)が　続(つづ)き

此(こ)の渡(と)　真子(まこ)嶽(だけ)に　　　　　　　　　　　　　　

安和(あわ)の君(きみ)鳴子(なるし)　　　　　　　　　　　　

首里(しゅり)の珍(めずら)しさ

大渡(おおと)　真子(まこ)嶽(だけ)に　　　　　　　　　　　

平安座(へんざ)　平安座(へんざ)崎(ざき)　廻(まわ)る　　　　　　　　　　　　　　　　

９５８

永(え)良部(らぶ)結思(むすびおもい)　　　　　　

別(わか)れがたさ　なすな

今(いま)よりは

清(きよ)き声(こえ)　遣(や)ろう

旅(たび)　立(た)つ　吾(われ)は

芭蕉(ばしょう)の晴(は)れ着(ぎ)なれば　　　　　

肌(はだ)からも　触(さわ)ろう

粒(つぶ)の玉(たま)なれば

頸(くび)からも　触(さわ)ろう

９５９

聞(きこ)え君(きみ)愛(がなし)よ　　　　　　　　　　　　

国勝(くにまさ)り親(おや)神女(のろ)　　　　　　　　　　　　

「エケ」　四島(よしま)からこそ

美(うつく)しさ　ある

鳴(と)響(よ)む君(きみ)愛(がなし)よ

朝凪(あさなぎ)が　すれば

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ

９６０

聞(きこ)え君(きみ)愛(がなし)よ　　　　　　　　　　　　　　

妻女(やちよこ)ら　真(ま)民(たみ)　下民(ふさ)の　　　　　　

寄(よ)り合(あ)う島(しま)　走(はし)りまして

鳴(と)響(よ)む君(きみ)愛(がなし)よ

朝凪(あさなぎ)が　すれば

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ

９６１

宜(ぎ)寿(す)次(し)大役人(おおやこ)　　　　　　　　　　　　　　

意地(いじ)気(き)大役人(おおやこ)

赤(あ)冠部(かべ)を　良(よ)く　走(はし)り　喜(よろこ)ばせ　　　　　

文月(ふづき)　凍(し)み嵐(あらし)に　　　　　　　　　　　　　

葉月(はづき)　凍(し)み嵐(あらし)に　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)の親御(おやみ)船(ふね)

思(おも)う子(こ)の親御(おやみ)船(ふね)

天(あめ)久(く)神女(のろ)　崇(あが)めて　　　　　　　　　　　　

親(おや)神女(のろ)を　崇(あが)めて　　　　　　　　　　　　

出(で)ていると　知(し)らせよ

走(はし)っていると　知(し)らせよ

泊(とまり)　知(し)らないけれど

港(みなと)は　知らないけれど

９６２

名高(なだか)い按司(あんじ)様(さま)は

島(しま)寄(よ)せの群(む)れ舞(ま)いこそ　見物(みもの)

勇(いさ)ましい戦子(いくさご)が　　　　　　　　　　　　　

御酒(おさけ)欲(ほ)しく　有(あ)り

御船(みふね)　寄(よ)り添(そ)えよ

神酒(みき)欲(ほ)しく　有(あ)り

御船(みふね)　寄(よ)り添(そ)えよ

９６３

運(うん)玉(たま)モリに　います　　　　　　　　

聞(きこ)え植(おわ)守(もり)が　　　　　　　　　　　　　

久米(くめ)　見(み)に　きまして

底(そこ)仁屋(にや)嶽(だけ)　います　　　　　　　　

此(こ)れこそ　此(こ)れ　久米(くめ)と

此(こ)れは　此(こ)れ　宇(う)江(え)泊(どまり)　　　　　　　　　　　

９６４

掛(か)け澪(みお)の潮(しお)の　　　　　　　　　　

押(お)し合(あ)い波(なみ)　立(た)てば

何(なに)を　見(み)て　踊(おど)る

君(きみ)　見(み)てこそ　踊(おど)る

押(お)し合(あ)い波(なみ)　立(た)てば

寄(よ)り合(あ)い波(なみ)　立(た)てば

９６５

吾(わ)が姉妹(おなり)御神(みかみ)の　　　　　　　　　　　　

守(まも)るといって　来(き)ました

「ヤレ　エケ」

弟(おと)姉妹(おなり)御神(みかみ)の　　　　　　　　　

綾(あや)の蝶(ちょう)　成(な)りまして

珍(めずら)しき蝶(ちょう)　成(な)りまして

９６６

煽(あおり)八重(やえ)は、　　　　　　　　　　　　

戦(いくさ)出(で)てこそ　います

差(さす)笠(かさ)は　　　　　　　　　　　　　

脇(わき)楫(かじ)　取(と)り　走(はし)らせよ　　　　　　　

煽(あおり)八重(やえ)は、

四阿(あずまや)こそ　います　　　　　　　　

差(さす)笠(かさ)

９６７

奥(おく)渡(と)　舞(ま)う　鬼(おに)鷲(わし)、　　　　　　　

帆柱(ほばしら)の　使(つか)い　　　　　　　　　　

吾(われ)　守(まも)り

この渡(と)　渡(わた)しなさい

渡中(となか)　舞(ま)う　鬼(おに)鷲(わし)、　　　　　　　

帆(ほ)袋(ぶくろ)の　使(つか)い　　　　　　　　　　

９６８

由良(ゆら)長(ふさ)が、　　　　　　　　　　　

今日(きょう)降(お)りる　うれしさ　　　　　　　　　

父(ちち)なる御方(おかた)

御面影(みおもかげ)　立(た)ち　　　　　　　　　

喜如(きじょ)嘉(か)に、　　　　　　　　　　　

美(うつく)しい御家(おいえ)　有(あ)ります

国(くに)笠(かさ)の、

珍(めずら)しき御家(おいえ)　有(あ)ります　　　　　　　

若(わか)神女(のろ)が、　　　　　　　　　　　

今日(きょう)降(お)りる　うれしさ

喜如(きじょ)嘉(か)に、　　　　　　　　　　　　

里人(さとびと)　持(も)て成(な)し

父(ちち)なる御方(おかた)

９６９

久米(くめ)の島(しま)に　在(あ)る、

磁石(じしゃく)金(がね)　渡(わた)して　　　　　　　　　　

首里(しゅり)モリ　上(のぼ)せて

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

金(かね)の島(しま)　在(あ)る、　　　　　　　　　　

９７０

清(きよ)き吾(わ)が成(な)せる人(ひと)、

浦(うら)の鳴(な)り鳴(とよ)響(み)鼓(つづみ)　　　　　　　　　　　　

依(より)笠(かさ)が　誇(ほこ)り

大(おお)いなる成(な)せる人(ひと)、

９７１

辺(へ)戸(ど)の御宣(みぜり)人(きよ)が　　　　　　　　　　　　

出(で)て　まさに　走(はし)ります

吾(わ)が浦(うら)の珍(めずら)しさ

速(はや)く　走(はし)りなさい　　　　　　　　　　　　

辺(へ)戸(ど)の　弱宣人(なよぜりきよ)、　　　　　　　　　　　

局(つぼね)　美(うつく)しい殿(どの)よ、　　　　　　　　　　　　

９７２

愛(いと)しい神(か)女(み)　清(きよ)き神女(かみ)、　　　　　　　　　　　

描(えが)き鳥(どり)　舞(ま)い合(あ)う島(しま)　　　　　　　　　　

走(はし)り来(き)まして

神(の)女(ろ)愛(がな)し　神女(かみ)様(さま)が、　　　　　　

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　　

９７３

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、　　　　　　　　　　　　　　　

浜(はま)千鳥(ちどり)　追(お)い立(た)て

追(お)え追(お)えと　追(お)い立(た)て

我(わ)が浦(うら)の　浦(うら)走(ばし)りが　見物(みもの)

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

９７４

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、

上下(かみしも)　鳴(と)響(よ)む

庭(みや)　脚上(あしあげ)　造(つく)り　　　　　　　　

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

９７５

聞(きこ)え明忍(あけしの)が、　　　　　　　　　　　　　　

斑(もどろ)丸(まる)　八斑(やもどろ)丸(まる)　　　　　　　　　　　　

艫(とも)　湧(わ)き上(あ)げ　　　　　　　　　　　　

沖縄(おきなわ)に　使(つか)い

鳴(と)響(よ)む明忍(あけしの)が、

朝凪(あさなぎ)が　すれば、

夕凪(ゆうなぎ)が　すれば、

板(いた)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　

棚(たな)清(きよ)丸(ら)は　押(お)し浮(う)かべ、　　　　　　　

船子(ふなこ)　選(えら)び　乗(の)せて、

船手(ふなて)　選(えら)び　乗(の)せて、

９７７

東(ひがし)の大主(おおぬし)、　　　　　　　　　　　　　

清(きよ)らかな花(はな)が　咲(さ)いていれば

あれ　見(み)よ　清(きよ)らかな君(きみ)

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

９７８

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

金(こがね)精(せじ)　降(お)ろして　　　　　　　　　　　

島(しま)　揃(そろ)えて

按司(あんじ)大主(おそい)に　差(さ)し上(あ)げよ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

９７９

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

聞(きこ)え国治人(くにせりきよ)　　　　　　　　　　　

色(いろ)　勝(まさ)り

弓(ゆみ)持(も)つ貴(たか)さ

太陽(てだ)が穴(あな)の大主(おおぬし)、

９８０

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

綾(あや)の天(てん)　凪(な)ぎらせて

美(うつく)しき帆(ほ)　火照(ほて)らせて　　　　　　　　　　　　　　　

按司(あんじ)大主(おそい)が御前(みまえ)へと　　　　　　　　　　　　　　　

聞(きこ)え国治人(くにせりきよ)、　　　　　　　　　　　　　　　

９８１

東(ひがし)の大主(おおぬし)、

大主(おおぬし)が御前(みまえ)に

九年(くねん)母(ぼ)木(ぎ)を　植(う)え置(お)きて　　　　　　　　　　　

うりずん　待(ま)とう

はや　美(うつく)しき花(はな)　咲(さ)きたる